転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす

のりのりの

文字の大きさ
23 / 132
Mission1 前世を思い出せ!

23.あたしのお父様

しおりを挟む
 残念なことに、デイラル先生は、あたしをかばうつもりはないようだ。

 優しそうな顔をしていたので、あたしの味方として家族とのとりなしを期待したのだが、現実はそんなに甘くない……ということだろう。
 家族から怒られるのなら、とことん怒られろ……という、老医師の心の声が聞こえたような気がした。

 先生にいわせたら、溺れ死んでしまっていたら、説教も受けることはできなかったのだから、この幸せを噛み締め、ありがたく受け入れるように……ということだろう。

 デイラル先生はそれから、あたしの両目をみたり、口を開けて喉の様子をみたり、手足を触ったり、聴診器をあてたり、その他にも、指が何本見えるかだの、自分の名前や親の名前などを聞いてきた。

 自分の名前、両親の名前で……思わず考え込んでしまったら、部屋がざわついて、お祖母様が再び「静かになさい」と凛とした声で一喝する。
 その声でぴたり、と室内が静かになるのだから、お祖母様の影響力はあなどれない。
 その見事な統率力を目の当たりにした、デイラル先生の顔には苦笑が浮かんでいた。

「デイラル、フレーシアの具合はどうなのだ? 熱はまだつづくのか? 出血して、気を失ったと聞いたが、大丈夫なのか? 頭の傷は? 自分の名前や父親の名前を言えぬとは……どうなっているのだ?」

 老医師の診察がひととおり終わったと同時に、畳みかけるようにして壮年の男性が、デイラル先生に詰め寄って、質問を連発する。

(出血……って、鼻血のことだよね……)

 具合が悪くてでたのではなく、興奮してでた……鼻血なので、なんだか申し訳ない。

 壮年の男性は必死の形相で、今にもデイラル先生の胸ぐらをつかんで尋問しそうな勢いだ。

 短く刈揃えられた黒髪に、やや鋭い印象を受ける茶色の瞳。背は高く、体格もしっかりとしている。日頃から鍛錬を行っているのか、この歳に多い、お腹がぽっこりでているおじさんではなかった。
 油断ならない気配をまとい、堂々としている。容姿はどことなく、ライースに似ていた。

 ライースが壮年になったら、このような感じの男性になるのだろう。

「父親の名前がわからぬとは……フレーシアは、どうなってしまうのだ!」

(……もしかして、あたしのお父様になるのかな?)

 カルティが「旦那様」と呼び、ライースが「父上」と呼び、そう呼ばれた壮年の男は、お祖母様のことを「母上」と呼んでいた。

 お父様は、あたしが『父親の名前』を言えなかったことに対して、地味にショックを受けているようだ。

 先程から何度も「父親の名前」というフレーズがお父様の口からでている。

「父上、落ち着いてください。そんなに迫られたら、デイラル先生も困惑されていらっしゃいます」

 ライースがデイラル先生とお父様の間にわって入る。

「いや、でも、娘が父親の名前を忘れたのだぞ? 一大事じゃないか?」
「だったら、なおさら、落ち着いて、デイラル先生のお話をうかがいましょう」
「ジェルバ、みっともない真似はおよしなさい。それでも父親ですか? そのようにうろたえることが、アドルミデーラ家の家長としてふさわしい行いですか?」

 お祖母様も加わり、ようやく、お父様は静かになった。

 静かになった……というか、しゅん、とうなだれてしまっている。

 さすが、お祖母様だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの? ※本編・番外編完結。小話待ち。

モブとか知らないし婚約破棄も知らない

monaca
恋愛
病弱だったわたしは生まれかわりました。 モブ? わかりませんが、この婚約はお受けいたします。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...