76 / 132
Mission2 げきまじゅおくちゅりを克服せよ!
76.ライースの眼差し★
しおりを挟む
ライース兄様は膝を折り、あたしの目をじっとのぞきこむ。
だめですよ!
無駄ですよ!
そんな、『必殺! ライースの眼差し』でコロッと騙されるようなチョロいあたしではありませんよ!
断固、抵抗してみせます!
あたしは、馬らしい馬に乗りたいのです!
馬っぽい生き物はいやです!
前世で遊園地にあった、硬貨を入れてういーんと動く『子供用乗馬式ジャイアントパンダ型電気自動車』に乗りたいわけではないんです!
「レーシア……子どもが練習で乗るには、ポニーで慣れてからの方がいいんだよ? ずっと、ミリガンに乗り続けるわけではないんだよ?」
聞き分けの悪いワガママな子どもに向かって言い聞かせるような、ライース兄様の口調にちょっとイラッとくる。
「ライース兄様は……」
「ん?」
「ライース兄様は、ポニーに乗って、じょーばを習ったのですか? カルティは?」
「…………」
「…………」
ふたりは押し黙ってしまった。
あたしは手を腰にやり、ふんぬっと目に力を込めて、ふたりをにらみつける。
「いや、おれたちは先に武術の鍛錬を行っていて、筋力や体幹を鍛えていたから……」
「ポニーじゃありませんよね?」
あたしの反論に、ライース兄様の視線が頼りなく彷徨う。
カルティは、あらぬ方向を眺めていたが、逃げ出さなかったことは褒めてやろう。
「あたしは馬に乗りたいのです!」
「ポニーも馬だよ?」
「みんなが乗る馬に乗りたいのです!」
「ダメだ」
ライース兄様の気持ちにゆらぎはない。
妹のウルウルお願いは通じないようだ。
いや……もしかしたら……。
「あ、あたしは、ライース兄様が乗られるおうまさんに乗ってみたいのです! ライース兄様といっしょがいいです!」
「――――!」
ライース兄様は目を大きく見開き、雷の直撃を受けたかのように硬直する。
「お、おれと一緒……がいいのか?」
「はい。あたしは、だいすきなライース兄様と同じようなことがしたいのです!」
「――――っ!」
ライース兄様の顔が朱に染まり、口元が満足そうにほころぶ。
蕩けるような笑顔を間近にとらえ、あたしは焦る。
(え? なに? この反応……)
「レーシア!」
体をふるふる震わせながら、ライース兄様はあたしを思いっきり抱きしめる。
(え? え? え? なにがおこっているの?)
息が止まるかと思うほど、ライース兄様にギュッと抱きしめられ、本当に息が止まりそうになる。
日向の香り……太陽のような温もりに、あたしはすっぽりと包まれる。
ら、ライース兄様の鼓動が……ドキドキが伝わってくる!
「あ、あ、お、おにい……ライース兄様」
そ、そんなに力を入れられたら、あたしのちっこくてひ弱な身体はぺちゃんこになってしまいますぅ!
「うま ! うまですっ!」
「やだ! やっぱりやめよう。レーシアがミリガンから落ちて怪我でもしたら、おれは……生きていけない」
ちょ、ちょっとまってください!
ライース兄様の口走っていることがヘンです!
あのちっこいミリガンから落ちてもせいぜい、打ち身か、かすり傷です。
それに、ライース兄様は、あたしが溺れ死んでも立派に生きてました!
ゲーム内ではよく死にましたが、ライース兄様は『巻き戻しの砂時計』でしっかり蘇ります!
カルティ!
カルティ!
今すぐあたしを助けなさい!
ライース兄様の胸の中でじたばたともがきながら、あたしはすみっこの方に退避しているカルティを睨みつける。
無表情だったカルティの顔に、怯えの色が浮かんだ。
「わ、わ、若様……。お力を緩めてください。それ以上強くされると、お嬢様が潰れてしまいます」
カルティの声に、あたしを拘束する力が不意に緩む。
ぼんやりとしているライース兄様に、カルティが慌てて言葉を続ける。
「若様、今日は……まずは、馬に乗るというのはどういうことなのかを、お嬢様に知って頂く日にしませんか?」
「どういう……こどだ?」
「若様とお嬢様が一緒にローマンに乗ってみてはいかがでしょうか?」
「ローマンに……レーシアと一緒?」
「はい。遠乗りでも、早駆けでも……。今日は初めてですから、乗馬の楽しさをお嬢様に知って頂くだけにとどめて、訓練は明日からされるというのは、どうでしょうか?」
カルティが見事な折衷案を提示してきた。
問題の先送りともいう。
ビジネスシーンではよくやる手段だ。
さすが、逃げのカルティだ!
トラブル回避スキルが半端ない。
「よし。そうしよう!」
ライース兄様がすくっと立ち上がる。
切り替えはやっ!
だめですよ!
無駄ですよ!
そんな、『必殺! ライースの眼差し』でコロッと騙されるようなチョロいあたしではありませんよ!
断固、抵抗してみせます!
あたしは、馬らしい馬に乗りたいのです!
馬っぽい生き物はいやです!
前世で遊園地にあった、硬貨を入れてういーんと動く『子供用乗馬式ジャイアントパンダ型電気自動車』に乗りたいわけではないんです!
「レーシア……子どもが練習で乗るには、ポニーで慣れてからの方がいいんだよ? ずっと、ミリガンに乗り続けるわけではないんだよ?」
聞き分けの悪いワガママな子どもに向かって言い聞かせるような、ライース兄様の口調にちょっとイラッとくる。
「ライース兄様は……」
「ん?」
「ライース兄様は、ポニーに乗って、じょーばを習ったのですか? カルティは?」
「…………」
「…………」
ふたりは押し黙ってしまった。
あたしは手を腰にやり、ふんぬっと目に力を込めて、ふたりをにらみつける。
「いや、おれたちは先に武術の鍛錬を行っていて、筋力や体幹を鍛えていたから……」
「ポニーじゃありませんよね?」
あたしの反論に、ライース兄様の視線が頼りなく彷徨う。
カルティは、あらぬ方向を眺めていたが、逃げ出さなかったことは褒めてやろう。
「あたしは馬に乗りたいのです!」
「ポニーも馬だよ?」
「みんなが乗る馬に乗りたいのです!」
「ダメだ」
ライース兄様の気持ちにゆらぎはない。
妹のウルウルお願いは通じないようだ。
いや……もしかしたら……。
「あ、あたしは、ライース兄様が乗られるおうまさんに乗ってみたいのです! ライース兄様といっしょがいいです!」
「――――!」
ライース兄様は目を大きく見開き、雷の直撃を受けたかのように硬直する。
「お、おれと一緒……がいいのか?」
「はい。あたしは、だいすきなライース兄様と同じようなことがしたいのです!」
「――――っ!」
ライース兄様の顔が朱に染まり、口元が満足そうにほころぶ。
蕩けるような笑顔を間近にとらえ、あたしは焦る。
(え? なに? この反応……)
「レーシア!」
体をふるふる震わせながら、ライース兄様はあたしを思いっきり抱きしめる。
(え? え? え? なにがおこっているの?)
息が止まるかと思うほど、ライース兄様にギュッと抱きしめられ、本当に息が止まりそうになる。
日向の香り……太陽のような温もりに、あたしはすっぽりと包まれる。
ら、ライース兄様の鼓動が……ドキドキが伝わってくる!
「あ、あ、お、おにい……ライース兄様」
そ、そんなに力を入れられたら、あたしのちっこくてひ弱な身体はぺちゃんこになってしまいますぅ!
「うま ! うまですっ!」
「やだ! やっぱりやめよう。レーシアがミリガンから落ちて怪我でもしたら、おれは……生きていけない」
ちょ、ちょっとまってください!
ライース兄様の口走っていることがヘンです!
あのちっこいミリガンから落ちてもせいぜい、打ち身か、かすり傷です。
それに、ライース兄様は、あたしが溺れ死んでも立派に生きてました!
ゲーム内ではよく死にましたが、ライース兄様は『巻き戻しの砂時計』でしっかり蘇ります!
カルティ!
カルティ!
今すぐあたしを助けなさい!
ライース兄様の胸の中でじたばたともがきながら、あたしはすみっこの方に退避しているカルティを睨みつける。
無表情だったカルティの顔に、怯えの色が浮かんだ。
「わ、わ、若様……。お力を緩めてください。それ以上強くされると、お嬢様が潰れてしまいます」
カルティの声に、あたしを拘束する力が不意に緩む。
ぼんやりとしているライース兄様に、カルティが慌てて言葉を続ける。
「若様、今日は……まずは、馬に乗るというのはどういうことなのかを、お嬢様に知って頂く日にしませんか?」
「どういう……こどだ?」
「若様とお嬢様が一緒にローマンに乗ってみてはいかがでしょうか?」
「ローマンに……レーシアと一緒?」
「はい。遠乗りでも、早駆けでも……。今日は初めてですから、乗馬の楽しさをお嬢様に知って頂くだけにとどめて、訓練は明日からされるというのは、どうでしょうか?」
カルティが見事な折衷案を提示してきた。
問題の先送りともいう。
ビジネスシーンではよくやる手段だ。
さすが、逃げのカルティだ!
トラブル回避スキルが半端ない。
「よし。そうしよう!」
ライース兄様がすくっと立ち上がる。
切り替えはやっ!
3
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。
ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。
小説家になろう様でも投稿しています。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
