88 / 132
Mission3 お祖母様を救え!
88.爺やの報告
しおりを挟む
馬場の方に目を向けると、執事服をきちっと隙なく着こなした爺やが、こちらに向かって全力で走ってくる姿が見えた。
なぜか、手にはティーポットを抱えている。
「ら、ライース坊ちゃま――っ!」
お祖母様とほぼ同い年の老人が、そんなに懸命に走ってどうしたというのだろうか。
見たらすぐにわかることだが、かなり慌てているようだ。
「……ライース坊ちゃま、こんなところにいらっしゃいましたか」
ライース兄様を見つけた爺やが、安堵の表情を浮かべる。
探しましたぞ。という言葉は腹の中に飲み込んだようだ。
乗馬の訓練をしているはずなのに、馬場にあたしたちがいなかったのだから驚いたのだろう。
「ゲインズ? そんなに慌てて……どうしたのだ?」
ゲインズ……というのは爺やの名前だ。
爺やはメイド長マイヤの夫で、アドルミデーラ家には幼少の頃から仕えているって言ってた。
アドルミデーラ家の執事長を長年勤め、今はお祖母様の執事として仕えている。
息子や娘、甥や姪なども執事やメイドとして、アドルミデーラ家に仕えているという、忠義の一族だそうだ。
爺やことゲインズさんは、そこそこのお年なのだが、あれだけのスピードで走っても息を乱すことなく、足取りもしっかりしている。
だが、いつもは穏やかで温和な『おじいちゃん顔』が、今は微妙に引きつり、心なしか顔色が悪い。
「大変です。ライース坊ちゃま! 大変です! 落ち着いてください!」
ちょっとやそっとのことでは動じない爺やの様子が変だ。
なにかを感じ取ったカルティが、木の陰からそろそろと姿を現し、あたしたちの側に並んでいた。
ミリガンは……ローマンとセンチュリーと一緒に仲良く草を食べている。
「ゲインズ、大変なのはよくわかった。だから、まずはゲインズが落ち着け」
ライース兄様の視線がちらりと爺やが手にしているティーポットに向いたが、そのことにはあえて触れない。
「あ……はい」
爺やは一度、深呼吸をすると、険しい表情でライース兄様へと向き直る。
今まで見たことがない厳しい表情と、真っ白なティーポットのとりあわせがなんとも奇妙だ。
緊迫した空気が両者の間に流れる。
「さきほど大奥様が……お倒れになりました。気を失ったまま……意識が戻りません!」
「お祖母様が!」
カルティの口から小さな悲鳴が漏れ、ライース兄様の目が大きく見開かれる。
あたしも爺やの報告に、驚き固まってしまう。
(お、お祖母様……)
「どういうことだ? 昼前にお会いしたときは、いつもよりも元気そうに見えたぞ」
「はい。大奥様は、今日は気分がよいからと、テーブルで薬草茶を飲むことをお望みになられて……。確かに、おっしゃるとおり、とても元気なご様子でした」
「…………」
「大奥様は暫くお茶をたのしんでいらしたのですが、突然、胸の辺りを抑えながらお倒れになって……」
(まさか、飲んだ薬草茶がまじゅくて、びっくりして倒れたわけじゃないよね?)
「まさか……毒か?」
「いえ。それはないかと……」
「気を失われて、意識がないといったな?」
「はい」
「苦しんでいらっしゃるのか?」
「いえ。それはございません。倒れられた直後は苦しそうにされていましたが、今は呼吸も落ち着いていらっしゃいます。ですが、わたくしどもの呼びかけには全く応えてくださらず、昏々とお眠りになっております」
爺やと短いやりとりを交わした後、ライース兄様は目を閉じ、軽く頷いた。
「わかった。お祖母様の部屋に行く」
なぜか、手にはティーポットを抱えている。
「ら、ライース坊ちゃま――っ!」
お祖母様とほぼ同い年の老人が、そんなに懸命に走ってどうしたというのだろうか。
見たらすぐにわかることだが、かなり慌てているようだ。
「……ライース坊ちゃま、こんなところにいらっしゃいましたか」
ライース兄様を見つけた爺やが、安堵の表情を浮かべる。
探しましたぞ。という言葉は腹の中に飲み込んだようだ。
乗馬の訓練をしているはずなのに、馬場にあたしたちがいなかったのだから驚いたのだろう。
「ゲインズ? そんなに慌てて……どうしたのだ?」
ゲインズ……というのは爺やの名前だ。
爺やはメイド長マイヤの夫で、アドルミデーラ家には幼少の頃から仕えているって言ってた。
アドルミデーラ家の執事長を長年勤め、今はお祖母様の執事として仕えている。
息子や娘、甥や姪なども執事やメイドとして、アドルミデーラ家に仕えているという、忠義の一族だそうだ。
爺やことゲインズさんは、そこそこのお年なのだが、あれだけのスピードで走っても息を乱すことなく、足取りもしっかりしている。
だが、いつもは穏やかで温和な『おじいちゃん顔』が、今は微妙に引きつり、心なしか顔色が悪い。
「大変です。ライース坊ちゃま! 大変です! 落ち着いてください!」
ちょっとやそっとのことでは動じない爺やの様子が変だ。
なにかを感じ取ったカルティが、木の陰からそろそろと姿を現し、あたしたちの側に並んでいた。
ミリガンは……ローマンとセンチュリーと一緒に仲良く草を食べている。
「ゲインズ、大変なのはよくわかった。だから、まずはゲインズが落ち着け」
ライース兄様の視線がちらりと爺やが手にしているティーポットに向いたが、そのことにはあえて触れない。
「あ……はい」
爺やは一度、深呼吸をすると、険しい表情でライース兄様へと向き直る。
今まで見たことがない厳しい表情と、真っ白なティーポットのとりあわせがなんとも奇妙だ。
緊迫した空気が両者の間に流れる。
「さきほど大奥様が……お倒れになりました。気を失ったまま……意識が戻りません!」
「お祖母様が!」
カルティの口から小さな悲鳴が漏れ、ライース兄様の目が大きく見開かれる。
あたしも爺やの報告に、驚き固まってしまう。
(お、お祖母様……)
「どういうことだ? 昼前にお会いしたときは、いつもよりも元気そうに見えたぞ」
「はい。大奥様は、今日は気分がよいからと、テーブルで薬草茶を飲むことをお望みになられて……。確かに、おっしゃるとおり、とても元気なご様子でした」
「…………」
「大奥様は暫くお茶をたのしんでいらしたのですが、突然、胸の辺りを抑えながらお倒れになって……」
(まさか、飲んだ薬草茶がまじゅくて、びっくりして倒れたわけじゃないよね?)
「まさか……毒か?」
「いえ。それはないかと……」
「気を失われて、意識がないといったな?」
「はい」
「苦しんでいらっしゃるのか?」
「いえ。それはございません。倒れられた直後は苦しそうにされていましたが、今は呼吸も落ち着いていらっしゃいます。ですが、わたくしどもの呼びかけには全く応えてくださらず、昏々とお眠りになっております」
爺やと短いやりとりを交わした後、ライース兄様は目を閉じ、軽く頷いた。
「わかった。お祖母様の部屋に行く」
3
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。
ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる