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二騎 捜索
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「んあぁぁぁん、もう朝か」
「おはよう、今は7時過ぎだよ」
「おはよう、そうか、ありがとな」
グロウの朝は、こういった何気ない会話で始まる。
「そこにご飯とスープとお肉があるから」
「おう、いつもすまね」「…うん…」
そして起きてすぐに朝ごはん。
医学的には起床後30分の間はダメ、となっているが、グロウにとってその30分は『聖八極の武神器』を探す時間だ。
手間をかけて作られてそうなご飯を味わおうともせず、すぐに食べ始める。
「んグングン…ォン」
4、5回ほど噛んで飲み込み、また箸を口に運ぶ。
食べる側のグロウにとっては普通のことなのだが、作った側の女の子はその姿を見ていつも思う。
「(もうちょっと味わってほしいな)」
女の子の心とは、繊細なものだ。
五分ほどで全てを食べ終えたグロウは、早速準備をする。
準備と言っても、甲冑を整えたりする程度だが。
ガシャラ…ガシゥ、グガン……
「もう行くの……?」
さみしそうに聞くが、
「あぁ。いつベルサイルに武神器がくるかわからねぇからな」
返ってくる言葉は、いつもこれだ。
「そう…今日も、いつもの場所と時間でいい?」
「おう、ありがとな」
「うん」
玄関を出るときも。
青色の空には似合わないような、黒い剣を担いだ背中しか見せてくれない。
「じゃぁな」「うん…気をつけてね」
ミシィミシ…ガタ!……ミシィ…バトッ!
「やっぱり、私じゃダメかな……」
ひとりぼっちになった家で、悲しくうずくまる。
女の子の心とは、繊細なものだ。
だが、『人斬り』のレッテルを貼られたグロウだって、心はある。
きっと、恩返しを考えているはず!
「(いつも世話になってるし…今日は牡蠣でも買ってやるか……
今回こそうまく変装しねぇと)」
……男の心とは、大雑把なものだ。
プレゼントだけでなく、行動で示すことも大切だ。ということに気づかない、まだまだアマちゃんな男であった。
グロウは、あらかじめ準備されていた魔法陣に足を踏み入れる。
昨日と同じ魔法陣。早朝からいつでもいけるようにと、ほぼ毎日あの女の子が準備してくれているのだ。
「(うっし、いくか)」
スウィィィィィィ……
しかし、そんなことを考えることもなく、グロウはベルサイルへと飛んで行った。
スウィィィィィィ……
昨日と同じ路地裏に到着。
朝7時過ぎと言うのに。
「はーいラッシャイ!うちの野菜は美味しいよ!」「はいはい早朝ビールはいかがだぁい!スッキリできるよ!」「うちの肉はベルサイル一番だぁい!」「ヘイそこの兵士さん!魔法で鍛えた剣、いらない?」
近くの宮殿前広場から、はっきりと声が聞こえてくる。
宮殿前とあって、毎日賑やかでしかも物品も豊富。
さらに、ベルサイルは物流がとても良いため、毎日商品が入れ替えられるのだ。
……つまり、武器も毎日入れ替えられる。
グロウの、ベルサイルでの最初の行動は武器屋に行くこと。
武器屋は宮殿から少し離れていて、黒と白の幕で飾られている。
毎日この時間帯に行っているので、ボケ始めている店主のジィさんもグロウのことはすぐにわかる。
「おぉ、またお主か」
「あぁ。なんか手がかりのようなものは来たか」
「そうじゃなぁ、コレとかどうじゃ」
そう言って見せたのは、黒い鉱石だった。
「おはよう、今は7時過ぎだよ」
「おはよう、そうか、ありがとな」
グロウの朝は、こういった何気ない会話で始まる。
「そこにご飯とスープとお肉があるから」
「おう、いつもすまね」「…うん…」
そして起きてすぐに朝ごはん。
医学的には起床後30分の間はダメ、となっているが、グロウにとってその30分は『聖八極の武神器』を探す時間だ。
手間をかけて作られてそうなご飯を味わおうともせず、すぐに食べ始める。
「んグングン…ォン」
4、5回ほど噛んで飲み込み、また箸を口に運ぶ。
食べる側のグロウにとっては普通のことなのだが、作った側の女の子はその姿を見ていつも思う。
「(もうちょっと味わってほしいな)」
女の子の心とは、繊細なものだ。
五分ほどで全てを食べ終えたグロウは、早速準備をする。
準備と言っても、甲冑を整えたりする程度だが。
ガシャラ…ガシゥ、グガン……
「もう行くの……?」
さみしそうに聞くが、
「あぁ。いつベルサイルに武神器がくるかわからねぇからな」
返ってくる言葉は、いつもこれだ。
「そう…今日も、いつもの場所と時間でいい?」
「おう、ありがとな」
「うん」
玄関を出るときも。
青色の空には似合わないような、黒い剣を担いだ背中しか見せてくれない。
「じゃぁな」「うん…気をつけてね」
ミシィミシ…ガタ!……ミシィ…バトッ!
「やっぱり、私じゃダメかな……」
ひとりぼっちになった家で、悲しくうずくまる。
女の子の心とは、繊細なものだ。
だが、『人斬り』のレッテルを貼られたグロウだって、心はある。
きっと、恩返しを考えているはず!
「(いつも世話になってるし…今日は牡蠣でも買ってやるか……
今回こそうまく変装しねぇと)」
……男の心とは、大雑把なものだ。
プレゼントだけでなく、行動で示すことも大切だ。ということに気づかない、まだまだアマちゃんな男であった。
グロウは、あらかじめ準備されていた魔法陣に足を踏み入れる。
昨日と同じ魔法陣。早朝からいつでもいけるようにと、ほぼ毎日あの女の子が準備してくれているのだ。
「(うっし、いくか)」
スウィィィィィィ……
しかし、そんなことを考えることもなく、グロウはベルサイルへと飛んで行った。
スウィィィィィィ……
昨日と同じ路地裏に到着。
朝7時過ぎと言うのに。
「はーいラッシャイ!うちの野菜は美味しいよ!」「はいはい早朝ビールはいかがだぁい!スッキリできるよ!」「うちの肉はベルサイル一番だぁい!」「ヘイそこの兵士さん!魔法で鍛えた剣、いらない?」
近くの宮殿前広場から、はっきりと声が聞こえてくる。
宮殿前とあって、毎日賑やかでしかも物品も豊富。
さらに、ベルサイルは物流がとても良いため、毎日商品が入れ替えられるのだ。
……つまり、武器も毎日入れ替えられる。
グロウの、ベルサイルでの最初の行動は武器屋に行くこと。
武器屋は宮殿から少し離れていて、黒と白の幕で飾られている。
毎日この時間帯に行っているので、ボケ始めている店主のジィさんもグロウのことはすぐにわかる。
「おぉ、またお主か」
「あぁ。なんか手がかりのようなものは来たか」
「そうじゃなぁ、コレとかどうじゃ」
そう言って見せたのは、黒い鉱石だった。
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