【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり

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57 クラーラのこれからの事

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 お茶会が終わり帰宅すると、元ロンバード男爵夫人が我が家へ訪問する所だった。
 執事に確認し、屋敷へいざなう。
 使用人が多数見守る中、少し話をした。

「この様な急なご訪問となり、申し訳ございません。ただ明日隣国へ向かいますので、せめてお詫びだけでもと思いまして……」

 ナディオ様の事やロンバード元男爵の事を深く丁寧に謝罪された。
 ナディオ様が嫌がるので、私は夫人と殆ど交流がなかった。

 もしナディオ様と結婚していたなら、この優しく毅然とした方をお義母様と呼んでいたのか、養子元だから呼ばなかったかな。
 そんな感慨が胸を締め付けた。

 重苦しく謝罪から始まった訪問は、自然と優しい会話に移行した。
 だから不思議だった噂の事を聞いてみたくなった。

「十数年前にヘインズ領に通われていたと聞いたのですが……」
「あら、そんな噂が流れていたのですね?嫌ですわ」

 当時を思い出されたのか、楽しそうに教えてくれた。
 随分前に別れた恋人がこの国を離れると聞き、どうしても好きだったヘインズ領の貴重なお茶を手に入れたかったのだそうだ。

「残っていた恋心を振り払う為に必要だと思ったのよ、若かったわね」

 本当か嘘かは分からないが、疚しさなどない顔で話された。

 それから、慈しむ様に仰った。

「クラーラ様、ナディオとの事を胸にしまうのが辛ければ、全て忘れてしまってもよろしいのですよ」

 どうして分かったのだろう?

「でも、もう少し違っていればあそこ迄の罪には……」

 私の胸の端に巣食うのは、完全に恋を失った喪失感か、罪に落ちてしまったナディオ様に対する後悔か。
 パーティで吹っ切れた気持ちが、何かの拍子に入れ替わる。

「私達家族でさえ、どうしようもなかったのです。ですからクラーラ様も仕方がなかったのです。そう割り切るには難しいとは思いますが、ただ思い詰めないでくださいませ」

 そう言い残して夫人は去って行った。

 ここ連日のお茶会は、私の味方作りだ。
 私の社交が少なかった為に、要らぬ誤解を招いてしまった。
 夫人はどこかで、私の話を聞いたのかもしれない。

 冴えなくても、貴族として生きるなら必要な事だった。


 父は帰国後久々の私達との再会を喜び、私に時間を取ってくれた。

「すぐにでも、次の婚約者を決めなければならない」
「お父様、私はまだ……」

 私は首を横に振った。

「……そうか、分かった。だがなクラーラ、我が家は侯爵家だ。今回の事でも注目を浴びた。それ程長く自由にしてやる事は出来ない。その事だけは肝に銘じておきなさい」

 呆れられるかと思ったが、優しい声が返ってきた。

 私は今、優しい人達に囲まれている。
 いつか翳りのない笑顔を向けられますように、とそっと願った。


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