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30 俺は何故か止められる―ロンドリオ

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―――時は少し遡り、通行税交渉に来たマリナリアと玄関で話をした後。


 玄関でマリナリアに会い、俺は非常に不愉快な思いをしていた。

「くそっくそくそっ」

 俺は王子だぞ。マリナリアの奴は偽りばかりを述べる。

 何が王族法だ、貴族法だの訳がわからない事を言い出すんだ。
 そんなもの聞いたことがない。
 父上と母上に言いつけてやる。

 側でガチャンと大きな音がした。
 誰かが騒いでいる、うるさいぞ。

「大事な飾り壷が」
「先程は由緒ある花瓶も割れました」
「こちらも……あぁ、どうしましょう」

 俺は足早に玄関から部屋へと歩き出した。

「ロンド様、待ってぇ」

 可愛いい声が止めるので、サリーニアをエスコートして部屋へと戻り、王城へ手紙を書いた。

『マリナリアが偽りを教えました。よりにもよって俺が王子ではないと言ったのです。罰を与えて俺の目の前から追い出す様にして下さい。国外追放が最適です』

 怒りを込めて書きあげだ。
 少々字が乱れたが、勢いがあっていいだろう。
 執事を呼んで、手紙を王城へ届ける様に指示をした。

「どのように届けましょう」
「早馬に決まっている。飛ばせよ」

 何故か溜息をついた執事が、肩を落としながら下働きを呼んでいた。

「ロンド様、ご用は終わりましたか?」
「ああ、愛しのサリー。父上にマリナリアを罰して貰うよう頼んだよ」
「それは素敵ですわ」
「そうだ、明日は中断していた買い物に行こう」
「……でも門が出来てますよ」
「なに、石壁の門など気にしなくてもいいさ。領の外壁は出ないからな」

 そうさ、普通あんな中途半端な所に門などありえない。
 これはマリナリアの嫌がらせなのだ。
 通行税?その様なもの父上の手紙が来たら解決出来る。
 恐れる必要など何もないさ。

 夕食時義父に叱られ色々言われたが、明日のサリーニアとの買い物を考えて殆ど聞いていなかった。
 義父なら許してくれるだろう。


 翌日の昼食後、馬車に乗り込み門の所まで来た。
 丁度開門しており、門の中央には門番らしき男と誰かが話をしているみたいだった。

「ほら、サリー。俺らの為に門が開いている」

 馭者に命令して駆け抜けさせた。
 馭者は何故か青ざめていた。
 門番と知らない男が転んでいたようだが、気にする事など何一つないな。

 俺はまず鍛冶屋に寄った。
 王都に比べれば相変わらず寂れている。

「あの……殿下、前ご購入頂いた品のお支払いがまだでして……」

 前に店に寄った際、かっこいい短剣を見つけた。
 店の目立つ所に飾ってあったからな。
 周りにはナイフや手持ちのついた訳のわからない金属の品があり、場違いな短剣は俺が貰ってやったのさ。

「俺に使われるのだ。それだけでも名誉に思え」

 俺に口答えするなど、忌々しい。

「今度は剣を買ってやる。俺に相応しいのを作れ」
「……では、せめて前金だけでも」
「は?何故俺が用意しなければならない。必要なら誰か・・が払うだろう」

 ヘコヘコしているなら、従えばよい。
 鍛冶屋の本望は剣を作る事だろう。
 叶えてやる俺は慈悲深いのだ。

「ロンド様、ここは熱くてうるさくて嫌ですわ。早く出ましょう」

 女にはわからないか。
 切れの良い俺に似合う剣を作るように指示して店を出た。

 次はサリーニアのご機嫌取りに服飾屋へ行った。
 それにしても女の買い物は長いな。

「どちらがいいですか?ロンド様」
「サリーは何でも合う。両方作ればいい」
「んー、でもこちらはここ裾の刺繍が寂しくて、こちらは胸の部分がイマイチなのよね。やはり私には派手な物が一番似合うもの。他のも見せて貰おうかしら」

 結局、色々飾りを足したドレスにした様だ。

 服など商人が屋敷に来て決めるものだろう。
 そう思っていたが、たまに店に寄るのも新鮮だ。
 サリーニアの笑顔をずっと見ているのもいい。
 店員が物言いたげにしていたが、俺らの事を羨んでいたのだろうな。

 時間も遅くなり、腹が減ってきたので馭者に飯屋に案内させた。
 俺は城下に下りて民と親睦を図っていたからな。
 何故か父上や母上はいい顔をしなかったが、斬新な事をするのは周りとの軋轢を生むものだ。
 その点アークアラ公爵は分かってくれて褒めてくれたものだ。

 俺はあまり見た事がない食べ物を頼んだ。
 サリーニアもこういう店に入った事がないようで、珍しがって楽しんでいた。
 この領地の平民料理を堪能して、店を出て行こうとしたら止められた。

「何だ?」
「あ、あの……ですね。お代を……ですね」
「は?」
「ロンド様、あんな事言っているわ。そこのあなた、後で屋敷に取りに来ればいいわ。そうしたら払ってあげる」
「サリーは優しいな」
「ふふふっ、そうでしょう」

 呆然と立ったまま見送る店員は躾がなっていないな。




―――王都では、元殿下の知らない内に侍従が支払いをしていました。
侍従は度々忠言しましたが、聞く耳持たないのが元殿下です。
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