恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

文字の大きさ
5 / 35
教会

4 こけしもどきが言うには

しおりを挟む
 私が咄嗟に言った「甘いもの」は予想外だったらしく、こけしもどきの光が点滅した。

「いやいやいや、甘いものは出せないです。物は出せないのよ。こういう時に女神に願うといったら愛とか恋とか……」

 失恋したての私に、残酷な事を言うこけしもどきだ。
 出現時の尊大な言葉とは裏腹な、とても親しみやすいが少し焦った声が返ってきた。

「私、失恋したばかりなんだけどね」

 私は、ムッと膨れて言った。

「ああああ~済まない。私は愛と慈悲と豊穣を司っているから、ついね」

 ん?司る?この世界の神様って、全て男神だったような?
 教会では、そう教えているはずよね。

「この世界には、男神しかいないと教えてもらったんだけどね。そうじゃないんですか?豊穣の神様もこの教会の主神で、男の神様でしたけど……」

 怪しげなこけしもどきを冷たく見ると、点滅が激しくなった。
 こんな物を持って話している時点で、私も十分怪しいけれどね。

「私達は元々、夫婦神だったのですよ。ただ私の愛だの慈悲だのは、この国の人達には重いみたいで……いつしか忘れられて……ですね。私は女神なのよ、信じて……」

 氷点下になるほどめた眼差しを向けると、慌てる自称女神なこけしもどき。
 震え出しているんですがどうしよう、首取れちゃうよ?

 壊れそうだな、と心配しているのを勘違いしたのか、女神と名乗るこけしもどきはしゃべる喋る。

「不安なのは分かります。突然女神が話しかけたのですから。それでも聞いて欲しいのです。私には確かにこの国の信仰を集められていません。しかし……………」

 長くて退屈で、私は寝てしまいそうになった。
 昨夜は、アルバンとの一周年の記念にどう過ごそうかと考えて、寝付けなかったのだから。

 しかし、こけしもどきからの『異世界』という言葉を聞いて、一気に目が覚めた。

「女神様は、私を元の世界に返す事が出来るのですか?」

 話を無視して突然発した私の言葉に、こけしもどきが不機嫌そうに言った。

「聞いていなかったのですか?元の世界に返す事は、出来ませんよ。今までも定期的にこの世界に紛れて来ていましたが、自分の世界に帰った者はいませんでした」

 残酷な言葉が、私を打ち砕いた。
 難しい事は分かっていたけど、いつかはきっとと希望もあったのだ。

「そんな……こんな生きにくい世界、私は嫌よ」




 私、安藤あかりがこの世界に来てから一年とどれ位だろうか、正確にはわからない。
 はっきり言って、最初はろくでもなかった。

 まず、言葉がわからない。
 その為、折角見つけた街にさえ最初は入れなかった。

 何かを言っているのだが、意味がわからない。
 この世界のジェスチャーすらわからないのだから、泣きそうになった。

 一旦、街の門番から離れて観察してみると、どうやら入るのにお金がいる事がわかった。

 わかったが、まずお金の入手が困難で方法もわからない。

 で、どうしたかと言うと歌ったわよ。
 所謂いわゆる大道芸という奴をして、門の外で歌を歌い、拾って来た木を打ち鳴らしてリズムをとった。

 幸い、この国には吟遊詩人や大道芸はいたようで、異国の駆け出しだと思われたのだろう。
 最初は全く見向きもされなかったが、なんとか食事にはありつけた。
 それをきっかけに、様々な雑用もこなしていった。

 私の髪は、日本人にしては薄い色をしていて、染めなくても少し茶色かった。
 この場所でも目立たない、平凡な色合い。
 そして、日本でも童顔で年齢は下に見られた。

 それが幸をそうしたのか、世間知らずな子供として対応されたんだろう。
 月日が流れて、小銭と片言の言葉を覚えて街に入る事が出来たのだから。
 

「大丈夫、私はそんな異世界人の為に今ここにいる女神なのですよ」

 どう見てもこけしもどきにしか見えないその物体は、私に信じられない事を言うのだった。




しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...