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教会
4 こけしもどきが言うには
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私が咄嗟に言った「甘いもの」は予想外だったらしく、こけしもどきの光が点滅した。
「いやいやいや、甘いものは出せないです。物は出せないのよ。こういう時に女神に願うといったら愛とか恋とか……」
失恋したての私に、残酷な事を言うこけしもどきだ。
出現時の尊大な言葉とは裏腹な、とても親しみやすいが少し焦った声が返ってきた。
「私、失恋したばかりなんだけどね」
私は、ムッと膨れて言った。
「ああああ~済まない。私は愛と慈悲と豊穣を司っているから、ついね」
ん?司る?この世界の神様って、全て男神だったような?
教会では、そう教えているはずよね。
「この世界には、男神しかいないと教えてもらったんだけどね。そうじゃないんですか?豊穣の神様もこの教会の主神で、男の神様でしたけど……」
怪しげなこけしもどきを冷たく見ると、点滅が激しくなった。
こんな物を持って話している時点で、私も十分怪しいけれどね。
「私達は元々、夫婦神だったのですよ。ただ私の愛だの慈悲だのは、この国の人達には重いみたいで……いつしか忘れられて……ですね。私は女神なのよ、信じて……」
氷点下になるほど冷めた眼差しを向けると、慌てる自称女神なこけしもどき。
震え出しているんですがどうしよう、首取れちゃうよ?
壊れそうだな、と心配しているのを勘違いしたのか、女神と名乗るこけしもどきは喋る喋る。
「不安なのは分かります。突然女神が話しかけたのですから。それでも聞いて欲しいのです。私には確かにこの国の信仰を集められていません。しかし……………」
長くて退屈で、私は寝てしまいそうになった。
昨夜は、アルバンとの一周年の記念にどう過ごそうかと考えて、寝付けなかったのだから。
しかし、こけしもどきからの『異世界』という言葉を聞いて、一気に目が覚めた。
「女神様は、私を元の世界に返す事が出来るのですか?」
話を無視して突然発した私の言葉に、こけしもどきが不機嫌そうに言った。
「聞いていなかったのですか?元の世界に返す事は、出来ませんよ。今までも定期的にこの世界に紛れて来ていましたが、自分の世界に帰った者はいませんでした」
残酷な言葉が、私を打ち砕いた。
難しい事は分かっていたけど、いつかはきっとと希望もあったのだ。
「そんな……こんな生きにくい世界、私は嫌よ」
私、安藤あかりがこの世界に来てから一年とどれ位だろうか、正確にはわからない。
はっきり言って、最初はろくでもなかった。
まず、言葉がわからない。
その為、折角見つけた街にさえ最初は入れなかった。
何かを言っているのだが、意味がわからない。
この世界のジェスチャーすらわからないのだから、泣きそうになった。
一旦、街の門番から離れて観察してみると、どうやら入るのにお金がいる事がわかった。
わかったが、まずお金の入手が困難で方法もわからない。
で、どうしたかと言うと歌ったわよ。
所謂大道芸という奴をして、門の外で歌を歌い、拾って来た木を打ち鳴らしてリズムをとった。
幸い、この国には吟遊詩人や大道芸はいたようで、異国の駆け出しだと思われたのだろう。
最初は全く見向きもされなかったが、なんとか食事にはありつけた。
それをきっかけに、様々な雑用もこなしていった。
私の髪は、日本人にしては薄い色をしていて、染めなくても少し茶色かった。
この場所でも目立たない、平凡な色合い。
そして、日本でも童顔で年齢は下に見られた。
それが幸をそうしたのか、世間知らずな子供として対応されたんだろう。
月日が流れて、小銭と片言の言葉を覚えて街に入る事が出来たのだから。
「大丈夫、私はそんな異世界人の為に今ここにいる女神なのですよ」
どう見てもこけしもどきにしか見えないその物体は、私に信じられない事を言うのだった。
「いやいやいや、甘いものは出せないです。物は出せないのよ。こういう時に女神に願うといったら愛とか恋とか……」
失恋したての私に、残酷な事を言うこけしもどきだ。
出現時の尊大な言葉とは裏腹な、とても親しみやすいが少し焦った声が返ってきた。
「私、失恋したばかりなんだけどね」
私は、ムッと膨れて言った。
「ああああ~済まない。私は愛と慈悲と豊穣を司っているから、ついね」
ん?司る?この世界の神様って、全て男神だったような?
教会では、そう教えているはずよね。
「この世界には、男神しかいないと教えてもらったんだけどね。そうじゃないんですか?豊穣の神様もこの教会の主神で、男の神様でしたけど……」
怪しげなこけしもどきを冷たく見ると、点滅が激しくなった。
こんな物を持って話している時点で、私も十分怪しいけれどね。
「私達は元々、夫婦神だったのですよ。ただ私の愛だの慈悲だのは、この国の人達には重いみたいで……いつしか忘れられて……ですね。私は女神なのよ、信じて……」
氷点下になるほど冷めた眼差しを向けると、慌てる自称女神なこけしもどき。
震え出しているんですがどうしよう、首取れちゃうよ?
壊れそうだな、と心配しているのを勘違いしたのか、女神と名乗るこけしもどきは喋る喋る。
「不安なのは分かります。突然女神が話しかけたのですから。それでも聞いて欲しいのです。私には確かにこの国の信仰を集められていません。しかし……………」
長くて退屈で、私は寝てしまいそうになった。
昨夜は、アルバンとの一周年の記念にどう過ごそうかと考えて、寝付けなかったのだから。
しかし、こけしもどきからの『異世界』という言葉を聞いて、一気に目が覚めた。
「女神様は、私を元の世界に返す事が出来るのですか?」
話を無視して突然発した私の言葉に、こけしもどきが不機嫌そうに言った。
「聞いていなかったのですか?元の世界に返す事は、出来ませんよ。今までも定期的にこの世界に紛れて来ていましたが、自分の世界に帰った者はいませんでした」
残酷な言葉が、私を打ち砕いた。
難しい事は分かっていたけど、いつかはきっとと希望もあったのだ。
「そんな……こんな生きにくい世界、私は嫌よ」
私、安藤あかりがこの世界に来てから一年とどれ位だろうか、正確にはわからない。
はっきり言って、最初はろくでもなかった。
まず、言葉がわからない。
その為、折角見つけた街にさえ最初は入れなかった。
何かを言っているのだが、意味がわからない。
この世界のジェスチャーすらわからないのだから、泣きそうになった。
一旦、街の門番から離れて観察してみると、どうやら入るのにお金がいる事がわかった。
わかったが、まずお金の入手が困難で方法もわからない。
で、どうしたかと言うと歌ったわよ。
所謂大道芸という奴をして、門の外で歌を歌い、拾って来た木を打ち鳴らしてリズムをとった。
幸い、この国には吟遊詩人や大道芸はいたようで、異国の駆け出しだと思われたのだろう。
最初は全く見向きもされなかったが、なんとか食事にはありつけた。
それをきっかけに、様々な雑用もこなしていった。
私の髪は、日本人にしては薄い色をしていて、染めなくても少し茶色かった。
この場所でも目立たない、平凡な色合い。
そして、日本でも童顔で年齢は下に見られた。
それが幸をそうしたのか、世間知らずな子供として対応されたんだろう。
月日が流れて、小銭と片言の言葉を覚えて街に入る事が出来たのだから。
「大丈夫、私はそんな異世界人の為に今ここにいる女神なのですよ」
どう見てもこけしもどきにしか見えないその物体は、私に信じられない事を言うのだった。
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