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教会
1 宿なし職なしになるようです
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どれくらい経ったのだろう。
ドンドンと激しく叩く扉の音が、呆然としていた私の耳に届いた。
もしかして、帰って来てくれたのかも。
そんな淡い期待を込めて扉を開けると、そこには大家が立っていた。
「一体どれだけ待たせるんだ。居留守なんて使うな」
「すみません」
私はどうやら、大家をかなり待たせてしまっていたようだ。
不機嫌に顔を歪めた大家は、私を睨み開いた扉から部屋を確認した。
「ちょいと失礼するよ」
こちらの了承もなく、ズケズケと部屋に入ってきた大家が椅子に座る。
長話になるのだろうか?数日前に家賃は支払ったばかりなのに。
「男が出ていったらしいね」
何故知っているのだろう、情報が早い。
そんな風に思った私は、表情に出ていたのだろう。
大家が面倒くさそうに答えてくれた。
「最後に挨拶していったよ。それでだ、あんたも出て行ってくれないか」
「えっ、家賃は払いましたよね」
機嫌良さげに大家が家賃を受け取ったのは、ほんの数日前だ。
私は思わず声を荒らげていた。
「あぁ、家賃は貰ったね。だが保証していた男が去った。この街の住民でもないあんたに部屋は貸せないな」
街の住人になるには資格が必要だった。
住人でなくても、身分証明書になる物を発行している色々なギルドはある。
だが私の場合、まず所属する事が難しかった。
言葉も不自由で魔法も使えない、特技なしの私ではギルド所属は無謀な事だった。
「一年借りていたのにですか?」
「この部屋は街の住民である男が借りて、あんたが使っていた形になっている。だから貸せない」
大家と少し問答したが、貸せないの一点張りだった。
せめて安い宿屋を紹介してもらおうと思ったが、酷く機嫌を損ねただけだった。
「今すぐ荷物をまとめて出ていってくれ」
怒鳴る大家が見ている前で、私は荷物をまとめ始める。
家具は備え付けの物だったが、使いやすいように台所に付けた小さな棚は手作りだ。
とても部屋と合っていて、私は気に入っていた。
当時彼が、大家に取り付け可能か確認してくれた。
棚はしっかり固定しているので、すぐに取り外す事は出来ない。
でも、出る時は元通りにするのよね?
私が元から置いてあった工具を持って外そうとすると、再び大家が怒鳴った。
「何盗もうとしてるんだい」
「え?これはこちらで取り付けた棚ですよ」
「ふ、ふん。取り外しで変に壁を傷つけられたらたまらんからな。それはそのままでいい。早くしてくれよ。こっちはお前の為に待ってやってるんだ」
一年住んでいたのだ、荷物はそれなりに増えていた。
選別する時間もないようだった。
私は大き目のカバンに、衣服や小物を兎に角ぎゅうぎゅうに詰め込んだ。
普段買い物用に使っているカバンには、すぐに使う日用品や増えていった台所にある物を入れた。
もっと持ち出したかったが、肝心のカバンがない。
時間があるなら、買取してもらえる所を探したのだが、そんな時間などなく大家に聞いたが断られた。
結局入り切らない物や彼が使っていた物は、処分してもらう様に大家に頼んだ。
そして私は追い出される様に、住む所を失った。
途方に暮れた私は、職場の店に向かった。
店主との関係は悪くない。
頼んで店にでも泊めて貰うか、安宿を紹介して貰えたらと思ったからだ。
「うちの店は頼まれたからあんたを雇ったんだ。関係が切れたんだろう?はい、今日までの分。もう来ないでくれ」
少しのお金を渡されて、私は職も失った。
ドンドンと激しく叩く扉の音が、呆然としていた私の耳に届いた。
もしかして、帰って来てくれたのかも。
そんな淡い期待を込めて扉を開けると、そこには大家が立っていた。
「一体どれだけ待たせるんだ。居留守なんて使うな」
「すみません」
私はどうやら、大家をかなり待たせてしまっていたようだ。
不機嫌に顔を歪めた大家は、私を睨み開いた扉から部屋を確認した。
「ちょいと失礼するよ」
こちらの了承もなく、ズケズケと部屋に入ってきた大家が椅子に座る。
長話になるのだろうか?数日前に家賃は支払ったばかりなのに。
「男が出ていったらしいね」
何故知っているのだろう、情報が早い。
そんな風に思った私は、表情に出ていたのだろう。
大家が面倒くさそうに答えてくれた。
「最後に挨拶していったよ。それでだ、あんたも出て行ってくれないか」
「えっ、家賃は払いましたよね」
機嫌良さげに大家が家賃を受け取ったのは、ほんの数日前だ。
私は思わず声を荒らげていた。
「あぁ、家賃は貰ったね。だが保証していた男が去った。この街の住民でもないあんたに部屋は貸せないな」
街の住人になるには資格が必要だった。
住人でなくても、身分証明書になる物を発行している色々なギルドはある。
だが私の場合、まず所属する事が難しかった。
言葉も不自由で魔法も使えない、特技なしの私ではギルド所属は無謀な事だった。
「一年借りていたのにですか?」
「この部屋は街の住民である男が借りて、あんたが使っていた形になっている。だから貸せない」
大家と少し問答したが、貸せないの一点張りだった。
せめて安い宿屋を紹介してもらおうと思ったが、酷く機嫌を損ねただけだった。
「今すぐ荷物をまとめて出ていってくれ」
怒鳴る大家が見ている前で、私は荷物をまとめ始める。
家具は備え付けの物だったが、使いやすいように台所に付けた小さな棚は手作りだ。
とても部屋と合っていて、私は気に入っていた。
当時彼が、大家に取り付け可能か確認してくれた。
棚はしっかり固定しているので、すぐに取り外す事は出来ない。
でも、出る時は元通りにするのよね?
私が元から置いてあった工具を持って外そうとすると、再び大家が怒鳴った。
「何盗もうとしてるんだい」
「え?これはこちらで取り付けた棚ですよ」
「ふ、ふん。取り外しで変に壁を傷つけられたらたまらんからな。それはそのままでいい。早くしてくれよ。こっちはお前の為に待ってやってるんだ」
一年住んでいたのだ、荷物はそれなりに増えていた。
選別する時間もないようだった。
私は大き目のカバンに、衣服や小物を兎に角ぎゅうぎゅうに詰め込んだ。
普段買い物用に使っているカバンには、すぐに使う日用品や増えていった台所にある物を入れた。
もっと持ち出したかったが、肝心のカバンがない。
時間があるなら、買取してもらえる所を探したのだが、そんな時間などなく大家に聞いたが断られた。
結局入り切らない物や彼が使っていた物は、処分してもらう様に大家に頼んだ。
そして私は追い出される様に、住む所を失った。
途方に暮れた私は、職場の店に向かった。
店主との関係は悪くない。
頼んで店にでも泊めて貰うか、安宿を紹介して貰えたらと思ったからだ。
「うちの店は頼まれたからあんたを雇ったんだ。関係が切れたんだろう?はい、今日までの分。もう来ないでくれ」
少しのお金を渡されて、私は職も失った。
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