恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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教会

2 教会では泊めてもらえるようです

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 私は仕方なく、宿屋が集まる辺りをさまよった。
 どの受付も相手にして貰えず、治安の少し悪い安宿でも駄目だった。
 もっと安い宿はあるそうだがスラムの周辺だ。
 流石にスラムには近づけない。

「スラムにはね、人買いが横行しているんだ。変に紛れ込んだら強姦されるか奴隷にされるか。身分証もなく行くものではないよ」

 彼だったアルバンが言っていたし、教会でもそんな注意がされていた。

「……うん?あっ、教会!」

 教会の人達には良くしてもらった。
 私は言葉が不自由だったから、街の幼い子供達に混じりながら文字を覚え、言葉を覚えていった。

 他にもこの街での常識や色々な事を教えて貰いながら、教会の聖職者や見習いの子達と親交を深めていたじゃないか。

 それに、教会には簡易だが宿泊場所があったはず。

 夕方の人の往来が増えた通りを、急ぎ足で教会まで進んだ。
 親しくしていた見習いのウーラが見えたので声を掛けた。

「今日、教会に泊めてもらえないかな?」
「え?どうしたの?」
「何かあったの?」

 心配そうな顔をした見習いの子達が集まって来た。

「実はね……その…アルバンと別れちゃって、住む所も無くなって……」

 そう私が告げた途端に、皆の態度が変わった。

「ふーん、それで都合よく来たのね」
「都合よすぎ」

「えっ、みんなどうしたの?」

 あまりの豹変に驚いた。

「貸す訳ないじゃん」
「やっぱり、こいつ嫌ーい」

 小さな見習い達は、興味を失った様に離れていった。
 私が訳も分からず狼狽えていると、実際には下だが、見た目が私と同じ歳位のとても親しくしてくれていたリタが答えてくれた。

「あんたね、自分の立場分かっていなかったでしょう?彼が騎士様で最初に一緒に挨拶に来たから、私達は仲良くしてやっていたの。おこぼれ貰えたら嬉しいなと思いながらね」

「おこぼれ?」

「そう、騎士様って凄い高給取りでかっこよく将来安泰でしょう。それなのに、あんたは騎士様やその同僚を連れても来ない。自分だけいい思いをして、全くの期待外れもいいところよ」

 彼女の言葉は難しいものも多かった。
 所々わからなかったが、彼とその友達は金持ちでここに連れて来なければならなかったらしい。

「そんな……そんな事私知らなかったわ」

 そういえば、私は彼の友達を紹介してもらっていない。
 彼はいつも忙しそうにしていたから。
 私の方も、出来るだけ彼に頼らず一人で出来るようになろうと頑張っていた。

 彼がお金持ちなんだろうな、という事がわかって来たのも出会って随分後になってからだった。

 だって、ここの世界の住人ではないもの。
 常識から学ばなければならなかったのだから。


「……それがここでの常識なの?」
「さあね、でも私達は期待した」

 教会の入口近くで私達は話していた。
 祈りを捧げた後の住民が興味深そうに見ている。

 それに勉強を終えた帰り道だろう、知り合いの子供達が心配そうに私達の側を通り過ぎていった。

「ねぇ、周りが見ているわよ。小さい子達が変な噂を流したら大変よ」
「それもそうね、仕方がないから今日は泊めてあげる。特別にね」

 リタとウーラは二人でコソコソと話し合っていた。
 この後ニヤリといやらしく笑い、私に特別だと告げた。

 そして彼女達に連れていかれた所は宿泊場所ではなく、とても泊まれそうにない部屋だった。




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