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第5章 村編

第105話 村へ帰る

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「やだよぉー…」
「大丈夫よフィリア。私も協力するから、ね?」
「うぅー…」

 ただいま絶賛駄々こね中のフィリアでございます。
 なんでこんなに私が駄々をこねているのかというと……学園もないし、ダンジョンも問題なかったし、マルティエナさんの国に行くにはまだ時間がかかるし、ということで、私が生まれ育った村に帰ることになったからである。昨日それを言われたのだ。
 いやまぁむっちゃ久しぶりに帰るんだけどさぁ。帰るってことは必然的にアッシュと会うことになるってことで……

「まだ心の準備がぁ~…」
「心の準備もなにもないでしょう。実の弟に会うだけでしょう?」
「だけどぉ…」

 私は馬車で帰ると思ったんだ。だからちょっとは心の準備が出来ると思ったんだよ……よくよく考えたら、転移で帰れるじゃんね。一瞬で。
 はぁ………覚悟を決めよう。

「……分かった」
「よろしい。それじゃあ、ベルちゃんを呼んできて?」
「はーい」

 別の部屋で待ってもらっていたベルを呼ぶ。ベルもついでに帰ることになったのだ。でも私が駄々をこねたので、ちょっと待ってもらっていた。いやほんと情けないです……

「ベルー。帰るよー」
「うん。やっと決心したの?」
「うっ!…ごめんね、待たせちゃって」
「いいよ別に。でもなんで帰りたくないの?」
「それは……」

 言えない。
 ベルならいいかなとも思ったりしたけど、それでも、ね。

「…ちょっと色々と」
「ふーん。まぁいいや。早くいこ?」
「うん」

 ベルと一緒にマリアのもとへ。ロビンは後で合流する予定だ。折れてしまった聖剣を直すらしい。……直るのか?あれ。
 まぁ直らなかったら、私が作り直すけど。以外と簡単らしいのよね。

「来たわね。じゃあ帰りましょうか。フィリアは補助してね」
「分かった」

 大した距離ではないけど、できる限り負担を減らすためマリアの補助にまわる。
 ベル、マリアと手を繋ぎ、マリアが転移魔法を発動する。その制御を補助し、魔力消費も抑える。

「じゃあ行くわよ」

 その言葉と共に、グニャリと視界が歪む。相変わらずこの感覚は慣れない…






 そして閉じていた瞼を開くと、とても久しぶりの光景が眼前に広がっていた。

「うわぁー!ほんとに帰ってきちゃった!」

 ベルが驚きを露わにする。確かにベルはテスト勉強とかでなかなか帰れなかったからね。かなり久しぶりだろう。私もだけどね。

「ベルちゃんはここから帰れる?」

 私たちが今いる場所は、村の入口だ。そこまでベルの家は遠くない。

「はい。大丈夫です!」
「そう。じゃあまた」
「またね」
「うん。バイバイ!」

 手を振ってベルが去っていった。

「はぁぁ……」

 そしてベルの姿が見えなくなったところで、私は大きくため息を吐く。

「大丈夫だから」
「……そもそも私に帰ってくるなって言ったのママじゃなかったっけ?」

 そう、確か私の記憶が正しければ、帰ってこないほうがいいって言ったのはマリアだったはずだ。

「さぁ!帰りましょう!」

 あ!誤魔化した!
 マリアに強引に引きずられる形で、私は家へと帰った。









「ただいまー。アッシュ、レミナ」

 家に入るなり、すぐマリアが叫ぶ。そう言えばレミナと会うのも久しぶりだ。

 マリアが叫んでちょっとすると、パタパタと走る音が聞こえた。この気配は……

「お帰りなさいませ……フィリア様!?」

 あぁ。やっぱりレミナだった。

「ただいま、レミナ」
「は、はい。お帰りなさいませ!」

 レミナはとっても嬉しそうだ。やっぱりもうちょっと帰ってきたほうが良かったのかな…

「アッシュは?」
「今は確か……」

 レミナが言う前にドタドタと走る音が聞こえた。この家には今2人しか居ないはずだ。……つまり、

「母さん!お帰り!」

 満面の笑みで出迎えたのは、アッシュだった。久しぶりに見る姿だけど、少しだけ男の子っぽく体が出来上がってるように見える。

「ただいま、アッシュ。いい子にしてた?」
「うん!ちゃんと勉強してたよ」
「そう、いい子ね」

 マリアに頭を撫でられて、嬉しそうな顔をするアッシュ。私にもいつもこの顔を見せてくれたらいいのに……

「あれ?フィリア様は?」

 レミナが気づいたようだ。私は今光学迷彩で姿を隠している。気配隠蔽も完璧にしているので、たとえマリアでも私を見つけることはできない。

「まったく……」

 マリアが呆れた顔をする。ほんとごめん。でもまだ無理。
 アッシュはレミナの言葉を聞いて顔を顰めた。そ、そこまでか……

「…"あれ"がいるの?」

 あれ呼ばわりですかぁ……悲しいな。

「あれ、が何か分からないけど、フィリアならいるわよ。今はちょっと居ないけど、帰ってきてるわ」

 マリアがちょっと怒ってる。たとえ自分の子供だったとしても、言葉遣いが気に触ったのだろう。
 ……アッシュはそれに気づいていないけど。ちょっと鈍感じゃないかい?

「そう…」
「アッシュ、ちょっと話があるのだけれど、いい?」

 どうやら私がいない状態で、私のことを明かすらしい。
 前までの計画ならば、アッシュが10歳になったころ明かすつもりだったんだけど、7歳でもしっかりしてるし、大丈夫だと判断したらしい。

「なに?」
「ここじゃなくて、座ってゆっくりと話しましょうか。レミナ、お茶を用意してくれる?」
「は、はい…えぇっと、何人分でしょうか?」
2人分。レミナも飲みたいのなら、用意していいわよ」
「お気遣いありがとうございます。では」

 レミナがお辞儀をして去っていった。
 そしてマリアはアッシュと共にテーブルへ。私もそのまま隠れてついて行く。
 いよいよかぁ………アッシュは話を聞いて、私の事をどう思うだろうか?




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