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Ⅰ
3.進路それぞれ
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金曜の夜に抱いてもらうルーティーンは、彰永が就職した頃に定着した。
元をたどれば高校の同級生だ。
性的指向もはっきりしないオタクくんにエロい顔で迫りまくったといえばイメージがつくだろうか。
彰永は当時から今まで、ボーッとしたバカのままだ。勉強はできるが間が抜けている。
進学先にしても、都会の名の知れた大学も狙えただろうに、しれっと県内の国立大学を受験してストレートで合格した。
それで公務員にでもなるのかと思ったら、CADオペレーターとかいう、何をするのかよくわからない職に就くし。
車の部品を作っていると言うから、溶接や旋盤をやるのかと驚いたが、聞けばパソコンで英語のソフトを使って3Dデータをいじっているらしい。
オタクくんらしいといえば、そうだが。
俺はといえば保育系の専門学校に進学してみたが、一年足らずで中退してしまった。
こう見えて子供が好きだ。
俺は洒落乙な雑貨屋で働いていて、可愛いものとか綺麗なものとかは、毎日のように目にするわけだが、それでも百や二百を超える商品の中には、どこがいいんだと首をひねるようなものもあったりする。
でも、その辺で見かける子供にはそういう感情を持ったことがない。みんな可愛くて、綺麗だからびっくりする。
いや、見た目とか中身とかそんな話じゃなくて。
なんというか、大人に比べて存在感が神様じみているというか。
いやあ……やっぱりうまく言えない。
結局は子育ての苦労を知らない未婚の男が憧れを投影しているだけかもしれん。
辞めたのは学校の雰囲気に馴染めなかったからだ。
学費は勿体なかったが、まあ、仕方なかろう。
教える側も俺をどう扱ったものか困っているようだったし。
俺に子供を預けたいと思う親はいない。とは、暗に言われた。
それなりにショックではあったが、こんな女みたいな顔で男を好きでも、別に女として働けるわけじゃないと早くから理解できたのは良かったんじゃないでしょうか。
最終的には、当時からバイトしていた今の職場に就職した。
その一方で大学生の彰永を家に連れ込んでセックス、ヤツが就職してからは週一の頻度で連れ込んではセックス……と、今の爛れた生活リズムを形成していった。
金曜というのも別に最初から約束したわけじゃない。向こうの休みが土日で、俺は全休を取れるとしたら土曜なので、流れで自然とそうなっただけだ。
金曜の午後休にメシを作り、色々と支度をする。彰永が来れば、休憩を挟みつつ朝までヤる。
翌日は、起きた時間次第だが買い物に行ったりとか、映画見たりとか。
まあ、そっすね。
ラブラブなんじゃないでしょうか。
そんなこんなで出会って以来お互いとしかセックスせず、じゅ、十年!?
ははは。怖っ。
俺は彰永のヤツがゲイなのかバイなのかも未だによくわからん。なんなら本人も知らんと思う。
なにしろ俺としかヤッたことがないので……。
周囲によほどブスしかいないのか、あるいは俺の尻の具合がそんなにいいのか、彰永は全くよそ見をしなかった。
いやっ断じて悪い気はしない。
でもまあ、どうなんだとは思う。
会ったこともないが、俺が彰永の親だったら泣くかもしれん。
ど淫乱な同級生に目を付けられたばかりに、本来はあったはずの未来が隔壁を閉ざすように失われていき、気がつくと二十代も半ばを過ぎているのだから。
気の毒な彰永。気の毒な機戸ファミリー。
実に申し訳ない。
せめて夕飯くらい良いものを食わせてやるということで、金曜は職場の高級スーパーで買い物して帰ることにしていた。
俺ん家は山奥の一軒家だ。
職場からは車で三十分ほど。
職場も田園地帯を埋め立てているのでたいがい田舎だがウチには負ける。
南北に走る国道沿いを山に向かって逸れた先。
二車線道路が一車線に、一車線道路が、すれ違い不可能の砂利道になる方向に行く。
右折する目印はドブみたいに浅い小川だが夜になるとまず見えない。
毎週来ている彰永でも、たまに一歩手前にあるボロい社の駐車場に車を停めて家まで歩いてくる。
家も社も、父方の死んだ祖父の持ち物だ。
社は景気が良かった頃、氏神を祀った名残と聞いたが詳しくは知らん。知りたくもない。
俺は社と駐車場の管理を条件に、その家をタダで借りている。
誰も来ないので、管理と言っても草むしりくらいなものだが。
母が離婚して、諸事情あり、父方とは縁を切っている。
だから、先方から連絡が来た時には今さらなんだよと驚いた。
権利関係がややこしい上に土地として価値があるわけでもないので、今潰すより、家の事情をわかっている身内に管理させた方が金がかからなくて良いらしい。
俺はその爺さんに会ったこともないんだが。
母は嫌がったが、俺にとっては渡りに船の提案だった。
就職のタイミングも重なって、家を出るのにちょうどよかったのだ。
母は再婚しており、実家には血が半分しか繋がらない妹もいた。
当時は十四歳。思春期まっさかりだった。
なんとなく俺がいない方がいいような気がしたわけだ。顔も俺だけ全然似てないし。
事情はともかく家具付きの広い家にタダで住めるのは有難い話だ。
セックスしている時に大きな声を出しても苦情をもらわずに済むし。
庭があるから燻製をやりはじめても部屋に臭いがつく心配をしなくていい。
元をたどれば高校の同級生だ。
性的指向もはっきりしないオタクくんにエロい顔で迫りまくったといえばイメージがつくだろうか。
彰永は当時から今まで、ボーッとしたバカのままだ。勉強はできるが間が抜けている。
進学先にしても、都会の名の知れた大学も狙えただろうに、しれっと県内の国立大学を受験してストレートで合格した。
それで公務員にでもなるのかと思ったら、CADオペレーターとかいう、何をするのかよくわからない職に就くし。
車の部品を作っていると言うから、溶接や旋盤をやるのかと驚いたが、聞けばパソコンで英語のソフトを使って3Dデータをいじっているらしい。
オタクくんらしいといえば、そうだが。
俺はといえば保育系の専門学校に進学してみたが、一年足らずで中退してしまった。
こう見えて子供が好きだ。
俺は洒落乙な雑貨屋で働いていて、可愛いものとか綺麗なものとかは、毎日のように目にするわけだが、それでも百や二百を超える商品の中には、どこがいいんだと首をひねるようなものもあったりする。
でも、その辺で見かける子供にはそういう感情を持ったことがない。みんな可愛くて、綺麗だからびっくりする。
いや、見た目とか中身とかそんな話じゃなくて。
なんというか、大人に比べて存在感が神様じみているというか。
いやあ……やっぱりうまく言えない。
結局は子育ての苦労を知らない未婚の男が憧れを投影しているだけかもしれん。
辞めたのは学校の雰囲気に馴染めなかったからだ。
学費は勿体なかったが、まあ、仕方なかろう。
教える側も俺をどう扱ったものか困っているようだったし。
俺に子供を預けたいと思う親はいない。とは、暗に言われた。
それなりにショックではあったが、こんな女みたいな顔で男を好きでも、別に女として働けるわけじゃないと早くから理解できたのは良かったんじゃないでしょうか。
最終的には、当時からバイトしていた今の職場に就職した。
その一方で大学生の彰永を家に連れ込んでセックス、ヤツが就職してからは週一の頻度で連れ込んではセックス……と、今の爛れた生活リズムを形成していった。
金曜というのも別に最初から約束したわけじゃない。向こうの休みが土日で、俺は全休を取れるとしたら土曜なので、流れで自然とそうなっただけだ。
金曜の午後休にメシを作り、色々と支度をする。彰永が来れば、休憩を挟みつつ朝までヤる。
翌日は、起きた時間次第だが買い物に行ったりとか、映画見たりとか。
まあ、そっすね。
ラブラブなんじゃないでしょうか。
そんなこんなで出会って以来お互いとしかセックスせず、じゅ、十年!?
ははは。怖っ。
俺は彰永のヤツがゲイなのかバイなのかも未だによくわからん。なんなら本人も知らんと思う。
なにしろ俺としかヤッたことがないので……。
周囲によほどブスしかいないのか、あるいは俺の尻の具合がそんなにいいのか、彰永は全くよそ見をしなかった。
いやっ断じて悪い気はしない。
でもまあ、どうなんだとは思う。
会ったこともないが、俺が彰永の親だったら泣くかもしれん。
ど淫乱な同級生に目を付けられたばかりに、本来はあったはずの未来が隔壁を閉ざすように失われていき、気がつくと二十代も半ばを過ぎているのだから。
気の毒な彰永。気の毒な機戸ファミリー。
実に申し訳ない。
せめて夕飯くらい良いものを食わせてやるということで、金曜は職場の高級スーパーで買い物して帰ることにしていた。
俺ん家は山奥の一軒家だ。
職場からは車で三十分ほど。
職場も田園地帯を埋め立てているのでたいがい田舎だがウチには負ける。
南北に走る国道沿いを山に向かって逸れた先。
二車線道路が一車線に、一車線道路が、すれ違い不可能の砂利道になる方向に行く。
右折する目印はドブみたいに浅い小川だが夜になるとまず見えない。
毎週来ている彰永でも、たまに一歩手前にあるボロい社の駐車場に車を停めて家まで歩いてくる。
家も社も、父方の死んだ祖父の持ち物だ。
社は景気が良かった頃、氏神を祀った名残と聞いたが詳しくは知らん。知りたくもない。
俺は社と駐車場の管理を条件に、その家をタダで借りている。
誰も来ないので、管理と言っても草むしりくらいなものだが。
母が離婚して、諸事情あり、父方とは縁を切っている。
だから、先方から連絡が来た時には今さらなんだよと驚いた。
権利関係がややこしい上に土地として価値があるわけでもないので、今潰すより、家の事情をわかっている身内に管理させた方が金がかからなくて良いらしい。
俺はその爺さんに会ったこともないんだが。
母は嫌がったが、俺にとっては渡りに船の提案だった。
就職のタイミングも重なって、家を出るのにちょうどよかったのだ。
母は再婚しており、実家には血が半分しか繋がらない妹もいた。
当時は十四歳。思春期まっさかりだった。
なんとなく俺がいない方がいいような気がしたわけだ。顔も俺だけ全然似てないし。
事情はともかく家具付きの広い家にタダで住めるのは有難い話だ。
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