【社会人BL】俺は雌イキしかできんのに彼氏が妊娠を恐れている…!?【トンデモR18】

春Q

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12.恋は発狂

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 彰永はなにか、救いを求めるかのように、俺を見つめている。

 だから俺は、ウンチしか出せないって言ってるのに。

 彰永は身じろぎしようとして、周囲の空気が尖ったガラスででもできているみたいに、眉間に皺を寄せて、目を伏せる。

 でも言った。同じことを、もう一度。

「……俺は、卯月を孕ませたいんだよ」

「おい、酔っ払い。急に変なこと言うな」

「何が変なことなんだ? 卯月は可愛くて、綺麗で、健気で、俺、大好きだ。本気だよ。俺、卯月がいい。卯月を妊娠させたい」

 彰永に子供みたいに言い募られるほど、俺は糸で引っ張られるみたいに、少しずつ体をすり寄せてしまった。

「は……っ」

 肘から体当たりするようにして、寄り添う。

「できるモンなら、やってみればぁ?」

「卯月……」

 寄りかかられた彰永はため息をついた。

「自分の体のことだろ。ちゃんと考えろよ」

「なんだと?」

 カチンと来た。まあ一歩譲って俺に常識がないとしてもだ、アホな妄想に話を合わせているのはこっちの方だ。

 そりゃ孕ませてとか最中に言ってるのは俺かもしれんが。

「だって」

 彰永が両手で俺の手をそうっと包む。

 手の甲を、優しく優しくさすりながら今にも泣きだしそうな声を漏らした。

「どうやって産むんだ」

「いや知るか。こっちが聞きてえよ」

「ニワトリの総排泄孔みたいにお尻から出すとしても、卵と大きさが全然違う。あるいは内視鏡検査とは逆に、尻から入ったものを口から引っ張りだすのかもしれないけど」

「やめろ、笑いを取りに来るな」

 この馬鹿は、胃カメラと大腸内視鏡検査を混同しているらしい。

 口からカメラを入れて大腸見るわけないだろ。死んじゃうから。

 だが、床を叩いて爆笑している俺と対照的に、彰永は自分の世界に入り込んでしまっているようで、真剣な面持ちを崩さなかった。

「お腹を切るにしても、卯月の腸がどうなるのかわからない。弁が付いてるってことは、何かしら産む方法はあると思うけど、現在の医療技術じゃどうにもならない。俺、卯月を失いたくないんだよ」

 感極まったように、俺に抱き着いてくる。

「なあ、頼むよ。卯月……」

「えーっ……頼むって言われても……」

 ここまで彰永の妄想というか、俺たち二人だけの集団幻覚みたいな話なのに、急に現実の話を持ち出されても困る。

 彰永の半纏からは、彰永の匂いがした。

 こてんと頭を肩に寝かせていると、彰永は俺を熱っぽく口説くように言った。

「なあ、俺の気持ちもわかってくれよ」

「おお……? 彰永ちゃんの気持ち……?」

「俺だって本当は卯月を一晩中抱きたいよ。でも十年おまえとセックスして、どうやれば弁が開くのかもうわかっちゃったんだ。このままじゃ、卯月を妊娠させちゃう」

「……だとしたら、普通にウンチ部屋の方へ射精してほしいもんですね」

「もう我慢できないんだよ。卯月もそうだろ。おまえが赤ちゃん産みたいって思ってるのと同じくらい、いや、それ以上に、俺は」

 彰永の声は、言葉にならずに消えていった。

 動物みたいに体をすりよせてきて、情けない笑い声をかすかに漏らす。

「卯月、ごめん……気持ち悪いよな、こんな」

 そんな声を出されると、俺までつらい気分になる。

 まったく、誰だよ。こんな真面目で優しい彰永ちゃんを苦しめているのは。

 俺かー。

 こしょこしょと、優しい声が耳たぶを打つ。

「なんか、別に付き合い始めの時はここまではっきりした気持ちじゃなかったんだけど」

 俺の股間はまだ無意味な勃起を続けている。

 謎の出っ張りが、真面目に話している彰永の腹を押していた。

 これさえなければ、もっとキツく抱きしめてもらえたのになあ。邪魔。

「卯月と過ごすうちに、本当にちょっとずつ、こうなっちゃったんだよ……」

「んん……」

「ああ、ずっと一緒にいたいなって思って。わかるだろ……俺……なんか、挿れてる時はいつも頭の中ぐちゃぐちゃなんだよ。うまく喋ったり考えたりできなくなるし」

「……うん」

「でも、今日はもう卯月にチンポ挿れた途端に物凄く、頭がはっきりして、孕ませたい、妊娠させる、卯月を俺だけのものにするんだって、そんなことばっかり考えてた」

 俺は彰永とはエロいことを散々してきた。だが言葉だけでここまで赤面させられたのはこれが初めてだった。

 彰永の苦笑が、寄り添う体に響いてくる。

「意味わかんないよなあ。だって赤ちゃんができても、卯月が俺のものになるわけがないだろ。そんな因果関係はないのに、なんか、卯月を妊娠させさえすれば、俺だけのものにできるはずだって、なんか」

 軽くパニックになりかけている彰永の唇を、俺は目を閉じて唇でふさいだ。

 頭を使いすぎているオタクくんに長押しで再起動をかける。

 彰永は、ちゅっと吸い返してきた。

 頭がかなり熱くなってきている。俺は片手で炬燵の電源を切った。

「彰永ぁ」

 呼びかけると、やけに悲しそうに俺を見る。頭を掻いて、俺は彰永を慰めた。

「セックスって、そういうもんだろ。別に、おまえの感覚はおかしくないよ」

 ごそごそと膝に乗りに行く。胸を押すと、彰永は紙相撲みたいに押し倒された。

「俺だって彰永ちゃんのものになりたいってずーっと思ってるんだぜ? あーあ、でかいチンポで俺を孕ませてくんねーかなーって」

 今もだ。股の上に腰を押し付けるだけで、息が上がってくる。

 俺は舌なめずりしながら笑ってみせた。

「おまえは馬鹿だし真面目だから、もし俺に赤ちゃんできたら一生繋ぎとめておけそうだ」

「……別に、そんなことしなくたって」

「バカ。……おまえの、赤ちゃんを産みたいって、そう言ってんだよ」

 いや、ずっとそう言っていたのか。俺は。

「う、卯月……」

 告白された女の子みたいに、彰永は両手で赤面した顔を押さえている。

「……いや。だからね」

 素直すぎる反応に俺は急に照れ臭くなった。

「おまえが父親だったら赤ちゃんは幸せだと思うわけよ。真面目に仕事してるし優しいし。子供に変な気を起こさないし」

 うりうり、と、鼻先を人差し指でつっつく。

 彰永は鼻面に皺を寄せて、俺を見上げた。

「そんなの、当たり前のことだろ」

「当たり前じゃないんだなあ、これが」

 腰を揺する。服越しにチンポを刺激すると、彰永がくぐもった声をあげて首を縮めた。

「別に……俺の方は、できるって言うなら、今すぐ妊娠させてほしいくらいだけど」

 俺は彰永を見つめ返した。エロく迫られても目を閉じないところは、嫌いじゃない。

「まあ……いいや」と俺はうなずいた。

「そこまで言うならセックスするのやめるか」

「う、卯月……」

「おまえのチンポと俺のチンポ、どっちが先に爆発するか、我慢バトルしようぜぇ!」

「卯月ィーッ!」

 ビッとホビーアニメの主人公のように指を指してみせると、この可愛いオタクくんは、万歳して歓声を上げた。

 フフン、と俺は腹の底で笑っていた。

 考えればすぐわかることだが、このバトルはやらせ開催だ。俺の勝利はすでに確定している。

 彰永に中出しされなければ俺は射精できないのだから。爆発のしようがない。

 つーか彰永みたいな坊ちゃん育ちのザコが、俺のケツに挿れられない状況に、いつまでも耐えておけるとも思えん。

 俺にちょっと誘惑されただけで、さっきも屈しそうだったし。

 そして俺に半泣きで、子作り生セックスをねだりに来ると言うわけだ。気分がいいなあ。

 何も知らない彰永は、喜びのあまり、俺を抱いたままゴロゴロと広い床を転がった。

「卯月、卯月っ」

「ハハハ、バカ、やめろって」

「産み方がわかったら、たくさん、たくさんセックスしよう」

「あー、そうですか。はいはい」

 彰永は、今、世界で一番幸せ、という顔で笑った。

 乱れた俺の髪をさも愛おし気に耳にかけてくれる。

「俺、それまでしっかり働いて貯金もする。卯月にも赤ちゃんにも絶対、苦労させないよ。そうだ。ちゃんと家も買って一緒に暮らそう」

「実家のねこちゃんはいいのかよ」

 飼っている三匹の猫可愛さに、この年まで家を出なかった男が、俺に頬ずりする。

「ねこちゃんより赤ちゃんに決まってるよ。いつ来てくれてもいいようにしないと」

「……ああ、うん」

 赤ちゃん、と、彰永はまるで甘い飴でも口に入れているみたいな声で言うのだ。

「卯月と俺の赤ちゃん、きっと可愛いだろうなあ。男の子でも女の子でも、いや、どんな赤ちゃんだって俺、大事にするよ。俺と卯月のところに産まれて来てくれたら、もうそれだけでいいんだ。だって、神様からの贈り物なんだから」

 俺はそれを聞いて、ああやっぱりこんな話に乗るべきじゃなかったんだと少し後悔した。

 本当は、狂ってるぜとケツを蹴っ飛ばして、このバカがもう二度と俺の所に来ないようにすべきだったのだ。

 だってこれじゃ、彰永がかわいそうすぎる。

 でも、本当に強く思ったのは、そんなクソみたいな正論ではない。

 誰しもが親のこんな願いを受けて産まれて来た赤ちゃんだったら良かったのにと思った。

 それで、俺の固い尻にそんなベッタベタな甘い願いを当たり前のようにかけてくる彰永を、本当に好きだと思った。

 でも、彰永には敵わない。

 向こうの方が、頭がおかしくなっちゃうくらい、俺のことを好きみたいだから。
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