【社会人BL】俺は雌イキしかできんのに彼氏が妊娠を恐れている…!?【トンデモR18】

春Q

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2.ウルトラレアギフト

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「卯月」
 いつの間にか車は停まっていた。
 俺はパワーウィンドウの根本に額を付けて、死んだふりをしている。

「卯月、こっち向いて」
「う……」

 先に謝ったら楽になれるような気がした。

 ごめん、ごめん、本気じゃないよ、セックスしたら俺が爆死するんだよな。ふざけただけ。バカだな、俺が愛するおまえを人殺しにするわけないよ、とか。

 いかにも俺が言いそうなセリフだ。彰永もきっと、その方が喜ぶんじゃない?
 でも、それを言ったら最後、俺、本当に、彰永に抱いてもらえなくなっちゃう気がする。

 嫌われるのはイヤ、媚びるのもダメ。俺、一体どうすればいいんだよ、みんな、なんで自分の気持ちを正直に口にできるんだ。

 身動きが取れなくなっていると、彰永が車を降りた。ああ終わったと思った。
 遅れて、ドアを閉める風圧が、背中を叩く。

 まだ、まだ追いかければ間に合うかも、と気持ちばかり急くのに、体は死んだナメクジみたいに動かない。俺も彰永もナメクジならよかったのに。

 こんこん、と窓を叩く音がして、片目で外を覗くと、助手席側の外に彰永はいた。

 ガラスに指を当てて、細い目で俺を見る。その口が開閉して、何かふてくされたように喋っているのはわかるが、まるで聞こえない。

 彰永は本当に気が利かないから、鍵のかかっていない車のドアを、向こうから開けてはくれない。

 おい、俺は一体、何を見せられてんだよ。

 そこで立って喋ってくれている嬉しさより、はっきりと怒りが沸いてきて、俺はドアの前をどけと手真似で指図する。

 彰永は、首をかしげてドアから一歩後ろに後ずさった。

 開けて、彰永の顔を直接見るのは、本当に簡単なことだった。抱かれたいとか言ったのを思い出すと、急に恥ずかしい。

 瞬きして地面に目をやると、彰永の駐車は本当にひどいものだった。
 スーパーマーケットのでかでかとした駐車場だが、店から離れているのをいいことに、三台分の場所へ斜めに駐車している。枠線のはみだし方が、掟破りすぎる。

 開いたドアのふちを持った彰永が、言う。

「卯月」
「……なに」
「うん……」

 俺を呼んだのはそっちのくせに、彰永は頭を掻いた。何を言いたいのか全然わからん。
 まあ、聞こえていると思ってずっと話してたんだろうから無理もないが。

 こんな吹きっ晒しの駐車場で。

 彰永がクソすぎる駐車をしたせいで、周囲には誰もいなかったが、外で、しかも地元で話したい話題ではない。特に俺は、そこそこ名の知れた店で働いている。

 しかし俺は失うような物を何ひとつ持っていないとしても、坊ちゃん育ちの彰永は違うだろう。いや、コイツは周囲の目を気にしたことなどないが、その分、俺がちゃんとするべきなのだと思う。

 手招きをすると、彰永はその体勢を保ったまま少し屈んだ。うん、いくら彰永のスタイルがいいからって、車の中まで覗き込んではこないだろう。また鼻水が出てくる。

「……俺、うざい? ごめんね」
「そんなこと思うわけないだろ」

 俺と彰永の立場は全く食い違っている。
 俺はどんなにセックスしようが赤ちゃんは絶対にできないと思うし、それでもセックスしたい。対して、彰永は先っぽでも俺に挿れたら絶対に赤ちゃんができて、俺が死んでしまうと思っている。

「彰永、あのね」

 俺は一旦、彰永の世界観を受け入れた。

「俺は、おまえとセックスして体が妙なことになって、死んだっていいんだ」
「やめろよ、自分でそんなこと言うの」
「だってそんなの、女が赤ちゃん産むのと、同じだろ」

 赤ちゃんが無事に産まれて来ること自体、有り難くて、稀有で、愛でたいことなのだ。産まれてきてくれたと思ったら、出産に耐え切れず、お母さんが死んでしまったりする。元気に育つ保証だって何一つない。

 だから、神様からの贈り物なんだろ。

 理不尽で意味不明で高くついて、カスタマイズ無限のオプションもりもりで、いつまで待てば仕上がるのか、死ぬまでもらえないのかもわからない、全世界でたった一つだけ、超限定の、ウルトラレアな贈り物。

「できるとかできないとか、産めるとか産めないとか、ハナからこっちには決める権限はないんだよ。俺は彰永の気持ちを聞きたい。俺のこと好き? セックスしたい? 赤ちゃんができなくても? たとえ俺を殺すことになっても? それでも俺を抱いてくれる?」

 長く客商売をしてきたが、こんなにひどい要望の聞き取りもそうない。
 泣きじゃくりながら最悪の迫り方をする俺に、彰永はつらそうに顔を歪めた。

「俺、卯月を抱きたくないとか、そんなの、思ったこともないよ……思えないんだよ……それが暴力と同じだってわかってても」

「……じゃあ。早く」

 腕を広げて迎えるなんて、とてもじゃないができなかった。身を縮めている俺を、彰永は強く強く抱きしめる。気の優しいコイツには珍しいことだ。苦しいのに、ようやく深く呼吸ができた。
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