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★6.構えはこう

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 俺は手をゆっくり離したが、彰永はまだ目を閉じている。全年齢アニメっぽく、頬にキスして囁く。

「終わったよ」
「……うん」

 彰永は頬を紅潮させてうなずいた。右手をまぐまぐと握ったり閉じたりさせていて、超可愛い。
 そして、なんだか急に自信満々な顔つきになったかと思ったら、その手で俺の顎を掬い上げた。

「卯月、好きだよ」

 俺はなんにも大したことしてないのに彰永は死ぬほど嬉しそうに笑って、俺の頬に、首鼻先に、額にキスする。

「もう、触っていい? 卯月。おまえの全部」
「……うん」

 そううなずくだけで、俺の全部が、彰永の全部になったことがわかった。変な話だ。俺はまだ、表面を軽くなぞられただけなのに。




 前と後ろを同時触られるのは初めてだった。別にイけるわけではないのだが、変な感じが胸にまで上ってきて、自分でシーツの肌理に乳首をこすりつけようとしてしまう。

「ひうぅ……う、ううっ」

 四つん這いで、発情した猫のように腰が揺れてしまう。ローションをぬめらせてケツをいじっていた彰永が、急に指を抜く。

「やら、やぁっ」

 二本入っていた。寂しさを訴えるようにきゅうきゅうと締まって、いっそう大きく腰を揺すってしまう。

「あ、や、だめぇっ」

 舌が入ってくるのがわかった。今日はまだ綺麗にしていないのに。

 先を固く尖らせながら、奥を探ろうとする。逃げようとすると、前を、チンポをしごかれ、ますます抜け出せなくなる。

 俺は彰永に女みたいに扱われているのに、同時に男の部分を刺激されてもいて、わけがわかんなくて余計に涙が出る。

「やぁあ、や、やら、やぁっ」

 舌が引き抜かれる。尻の谷間にキスされる。

「うう、うーっ」
「卯月、息していいんだよ。息、」

 喘ぎの変わり方で察したのだろう。彰永は優しく言った。そんなに優しいなら早くその股にぶらさがっているチンポで突いてほしい。 

 しつこく舐めまわされて、俺の尻は飴玉みたいに溶けてきそうだ。

「それ、やなのぉっ、もぉ、あああっ」

 右手の人差し指が、亀頭の先を丸くなぞる。太ももの付け根がビキビキと緊張する。喉が潰れそうなほど悦がり、激しく首を振る。

「なんで嫌? 恥ずかしい?」
「あ、あ、あ、こわい、こわいよぉ」
「チンポが気持ちいいと、怖い?」
「うぇ、え、ふええ……っ」

 やだ、無理。土下座するみたいに泣いた。

 コイツに許可を出した、数十分前の自分をぶん殴りたい。そのうえ、彰永は俺の泣き顔を、アジの開きをひっくり返すみたいに簡単に暴く。でも、キスは好き。変な味がする。

「……もぉ……チンポ挿れて……」
「もうちょっと、もうちょっとだけ。挿れたら俺、頭回んなくなるから、たっぷり卯月を可愛がりたいんだよ」
「うーっ」

 距離をおいた間にお預けしすぎたから、変な知恵をつけてしまった。

「卯月。好き、卯月……ね。ちょっとだけ」

 耳元で囁かれると弱い。まあいいよ。もうちょっとならね。

「卯月が俺と会えない時でも、自分でチンポをしごいてイけたらいいんだけど」
「ムリ! やだ!」
「なんで。俺のこと思い浮かべて、たくさん射精してくれたら、すごく嬉しいのに」
「……バカ!」

 言語野が溶けて、短くしか罵倒できない。

「どうして? 俺も卯月が会ってくれない間、いっぱいオナニーしてたよ。卯月の顔とか体を思い出して、会いたいなあって思いながら」

 セルフで射精できるヤツが自慢してくるな。その上、彰永は「構えはこう。握って、こう」などと俺の背中に覆いかぶさりつつ、自分の流儀を指南してこようとする。

 位置的に彰永のチンポがケツに当たった。バカなのだ。乗られた俺はともかく、乗ったおまえがなぜそれを予想できない。やめろ、一緒になって動くな。挿入っちゃうから。

 挿入った。

「……んっ」

 彰永が喉奥で喘いで、俺を深くまで突き刺してきた。目の前が真っ白になってしまう。

「ふぁあ、あ、あ、や、やん」

 彰永はこうなるともうダメだ。
 でかい手の平で、俺の手ごとチンポを握りこんで、腰を使いだす。
 俺はケツを犯されつつ自分で自分のチンポをしごくようなことになってしまう。

「彰永ぁ、あ、ああっ、彰永っ」
「うん、うん、うん」

 二人して汗びっしょりで、服もベッドもぐちゃぐちゃにして、深く交わる。
 今、全身で覚えこまされている、チンポの快感の波に、体が粉々にならないように持ちこたえることしかできない。

 孕ませてなんて、まさか。
 結局のところ彰永の妄想を信じられない俺には、口が裂けても言えない。

 でも、思うくらいはいいじゃないか。

 見せかけだけのまがい物だったとしても、今こうやって重ねている体はここにあって。
 届くことがないと予め決まっている贈り物を待ちわびる気持ちは、きっと俺も彰永も、同じなんだから。
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