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ジルベール様がそう声をかけると、部屋の中から小さな悲鳴が聞こえ、少しして扉が開きました。
若い女性が襟元を押さえながら逃げるように部屋を出ていきました。お仕着せのような服なので、学園の下働きの方なのかもしれません。
きちんと折り目正しく着られておらず、まるで慌てて着用したように見えますが、すぐ階段を走り降りてゆかれました。
「あれは誰だ?」ジルベール様は階段の下へと、彼女を追いかけて行かれました。
「…ったく」音楽室の奥からオリオン様が不機嫌そうに姿を現しました。
「今の声の男はどいつだ。邪魔しやがって」
オリオン様は私の後ろに控えている護衛のハッサンを睨みました。
「平民の警備員か?…貴族の令息に命令するような声がけは、相手を確認せずの行為であっても、処分対象になることもあるからな!」
オリオン様はジルベール様を見なかったので、扉を叩いたのはハッサンだと思ったようです。
私がハッサンを見ると、彼は安心してくださいという感じで小さくうなずいてくれました。
声がけはジルベール様なので、ハッサンは処分対象にはならないはずです。
オリオン様は、ふと私を見ました。
「なんだ、どこの誰かと思ったらサフィラじゃないか。
今日うちの学園祭に来るなんて話は聞いていないよ。いきなりだなあ。
一応は正式な婚約者なんだから、ちゃんと連絡は欲しいな。」
彼は上から下まで私の装いを眺めると、少し笑みを浮かべました。
「へえ…お洒落して来たんだ。いつもより綺麗に見えるじゃないか。
ここ、あまり人が来ない場所なのに、僕のいる場所を探し当てたんだ。
そんなに僕に気に入られたかったんだね。フフ、悪くないじゃないか。」
彼は私に近づいて来ると、私の顔を覗き込みました。オリオン様の頬は紅潮しています。ふとみるとシャツがはだけていて胸元が少し見えます。
いきなり距離を詰めてきた彼に、私は後ずさりしてしまいました。
そもそも私は彼に気に入られることを願って来たのです。
でも今の私は、場を去ったジルベール様が戻ってきてくれないかと、そればかり考えてしまいました。
オリオン様に話したかったことは、準備してきたはずです。
でも、唇が震えて、ものを言うことができなくなりました。
いくら未婚の私でも、オリオン様が今なさっていたことくらいは、想像がついたのです。
こちらが後ろに下がったのに、オリオン様はまた距離を縮めてこられます。
行く場がなくなった私は少しずつ階段を降り始めました。
侍女テレサと護衛ハッサンが後ろから進み出て、私の両隣を埋め、共に降りてくれています。
「おや、どうしたんだい。僕に会いに来てくれたんだよね。」
オリオン様は笑顔のまま階段を伝って降りて来られます。
私は足も震え出しましたが、ハッサンが腕を支えてくれました。
私はもう、この場を逃げるように去りたい思いでいっぱいです。
でも何か申し上げないと、オリオン様にはこちらの意図は伝わらないような気もします。
このままずっとついてこられるのてしょうか…
一体、どうすれば良いの…!
「さっきの女性のことを気にしているのかな」聞いてないのにオリオン様は話をはじめました。
若い女性が襟元を押さえながら逃げるように部屋を出ていきました。お仕着せのような服なので、学園の下働きの方なのかもしれません。
きちんと折り目正しく着られておらず、まるで慌てて着用したように見えますが、すぐ階段を走り降りてゆかれました。
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声がけはジルベール様なので、ハッサンは処分対象にはならないはずです。
オリオン様は、ふと私を見ました。
「なんだ、どこの誰かと思ったらサフィラじゃないか。
今日うちの学園祭に来るなんて話は聞いていないよ。いきなりだなあ。
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彼は上から下まで私の装いを眺めると、少し笑みを浮かべました。
「へえ…お洒落して来たんだ。いつもより綺麗に見えるじゃないか。
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そんなに僕に気に入られたかったんだね。フフ、悪くないじゃないか。」
彼は私に近づいて来ると、私の顔を覗き込みました。オリオン様の頬は紅潮しています。ふとみるとシャツがはだけていて胸元が少し見えます。
いきなり距離を詰めてきた彼に、私は後ずさりしてしまいました。
そもそも私は彼に気に入られることを願って来たのです。
でも今の私は、場を去ったジルベール様が戻ってきてくれないかと、そればかり考えてしまいました。
オリオン様に話したかったことは、準備してきたはずです。
でも、唇が震えて、ものを言うことができなくなりました。
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「おや、どうしたんだい。僕に会いに来てくれたんだよね。」
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私は足も震え出しましたが、ハッサンが腕を支えてくれました。
私はもう、この場を逃げるように去りたい思いでいっぱいです。
でも何か申し上げないと、オリオン様にはこちらの意図は伝わらないような気もします。
このままずっとついてこられるのてしょうか…
一体、どうすれば良いの…!
「さっきの女性のことを気にしているのかな」聞いてないのにオリオン様は話をはじめました。
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