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潜入【改】

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「さて...行くか...」

 私は湖にに面した部分を泳いで屋敷の背後に回る。

 どうやらコルネロ亭は、湖の真ん中に立っているようなので、戦略的に建てられているように思えてならない。

 湖の真ん中に建っているという事は、一本しかない屋敷に続く道以外からは攻められないような建築をしていたのだ。

 これではそれ以外の道から攻め様にも船などがいる為現実的ではない。

 そう、私みたいに自由自在に泳ぎ回れる生物でもなければだがな...。

 私は闇夜に紛れて邸宅内へと侵入した。

 人の気配をかなり感じるので、天井に張り付きながらバレない様に進む。

 流石に天井を警戒する者などほとんどいないはずなので、私は誰にも気がつかれることなく色々な部屋を探索するが、なかなかアリカの居場所を突き止められない。

 もしも見つかってアリカを人質にでも取られたら面倒なことになりそうなのが気にかかる為、出来るだけ見つからずに早く決着をつけたいところではある。

 そうしていると、興味深い部屋にたどり着いた。

 無数の檻がある部屋、その一つ一つの籠に中に私と同じモン娘達がいた。

 だが、皆元気がない。

 ほとんどの者は受け答えすらしてくれなかった。

 それに、何個か檻の中にいる者を見たが、どこかしら欠損している者も少なくはなさそうだ。

 手が無いものや足が無いもの、はたまたは体の8割がなく、無理やり魔法で生命活動を続けさせられている個体さえあるしまつ。

「酷いな...」

 私は思わず声を漏らした。

 一切関係のない種族と言えど、同じモン娘として思うところが無いわけではないが、これも全てこいつらが人間という種族に負けた事実だと思うと苛立ちが募る。

(なんでこいつらはこんな脆弱な人間に負けたんだ?)

 思わず顔をしかめてその部屋を後にしようとした。

 こんな場所にずっといればこっちが発狂しそうになる。

「待って...」

 誰かの呟きが聞こえたので振り返る。

「誰だ?」

「私です...」

 言葉のする方に向かっていく。

 少し奥の埃かぶった檻の中にそいつはいた。
 それは白髪の白い少女だった。

 体には無数の傷跡があり、明らかに拷問の跡が見受けられる。

 首には首輪がまかれていて、まるで家畜のように檻に繋がれていた。

「...、何か用か?」

「はい、あなたはモン娘ですか?」

「そうだが、どうした?」

「今すぐここから逃げて下さい、モン娘はここにいてはなりません、その理由を今説明します」

 その子が言うにはここはモン娘を売り払う場所であり、それは個体単位ではなくパーツ単位であるらしい。

 例えば右手や心臓など、体の一部から売買しているのだ。

 それを聞いて合点がいったことがある。

 ここにいる奴らは商品で少しずつ体を剥がれていくのだろう、だからウンともスンとも言わない奴が多いのだと思う。

 そりゃそうか、いつ自分の体が剥がされるのかわからない状況がずっと続いているのだから、心身共に疲労困憊するのも無理はない。

 彼女はエレメントのモン娘なので、パーツ単位で売られることがなく、利用価値も薄いらしいので、ずっと五体満足で買い手が見つかるまでここに置かれているらしい。

 まあ、お化けみたいな存在であるエレメントの体は切り分けることもできないし、体を触るにしても実体化させなくてはいけない彼女は、そっち系に使うのも面倒な手順を踏まなくてはいけない。

 そのため彼女が売れ残るのもわかる。

「わかった、忠告は聞いておこう、だが、私も助けなくてはいけない者がいるの、貴方の言葉を鵜呑みにしてここを去るわけにはいかない」

「そうですか...、危険ですが貴方がそうしたいのであれば仕方ないことでしょう、ですが、危なくなったらすぐにお逃げください、奴らに捕まれば全身を汚された後商品にされてしまいますから...」

 彼女の表情が曇る。

 それを見た私は彼女の檻を破壊した。

 拳一つで頑丈な檻を壊した私を見て彼女は驚いたような顔をしていた。

「なぜ...、私を助けるのですか?」

「さあな、ただ私がそうしたかっただけさ」

 彼女を助けるのにこれといった理由はない。

 ただそうしたかっただけなのだ。

 そしてさっきから嫌な雰囲気を醸し出している彼女の首輪を壊す。

 恐らくこれが彼女をこの地に縛り付けている呪いのアイテムなのだろう。

 現に首輪を壊せば嫌な雰囲気が消えたからだ。

 彼女は不意に現れ、自分を救ってくれた私を静かに見つめていた。
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