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誰かの記憶

たった2人の食事会

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 何もない白い空間にポカンと存在しているテーブルと椅子と私。

 椅子に座った私の前には大きなステーキと酒の入ったワイングラスが用意されています。

 それをテーブルマナーを守りながら食べていると、いつのまにか後ろに存在していた女性が話しかけてきました。

 女性は布で顔を隠しているので表情は読み取る事ができないが口調で何となく嬉しいのだとは分かっている。

「うん×××よく出来てるよ、毒を中和しながら美味しく食べられているから合格だ...、死んでいないしね」

 そう、私の目の前に出されている食事は全て致死性猛毒入りの食事である。

 それを自身の唾液を強化した特別なモノで中和しながら食べているのだ。

「うん、大丈夫...、もうこれくらいの毒なら効かないから...」

「ふふっ...頼もしいね...×××、でもダメだよ」

 彼女は私の口を軽く引っ張って笑顔を作りだす。

「食事中は笑わないと...、何かあった時に媚を売るのも大事な仕事だからね...」

「...分かってる」

 退屈な食事会。

 私と彼女以外存在しない空間で私は最期の訓練を行っているのだ。

「戦闘訓練は充分な成果をあげれているから後はこの食事会さえ合格できればあなたはある程度自由の身になれる」

「...」

「あなたと言う完成品がようやく完成したのよ?もっと嬉しいと言う感情を示しなさい」

「...嬉しい? 嬉しいわけないでしょ?」

「なぜ?、貴女はいずれ誰にも到達できない頂にまで達する事が出来るのよ?、嬉しい以外の感情など必要ないでしょう?」

「そうね...、貴女に何を言っても仕方ないのは分かってたけど、まさかここまでだとは思っていなかったよ」

 私の言葉を聞くと彼女は僅かに笑っていた。

「良い答えね、この城に存在する王の直属兵にまともな奴が存在するとでも思っていたのかな?」

「いいえ、ただ...私が思っていたよりもここは面白そうと思っていただけ」

「ずっと退屈そうにしているのに?」

「ええ、ここは退屈だわ、毎日の訓練と仮想の王族に付き合わせれるだけの

「仕方ないんだよ、ここは貴女を強化する為の空間...、貴女を立派な兵隊になるためには必要な処置だから...」

「致死性の毒物を食べることが?」

「そうそう、後は|さ

「隠された素質の多さ?」

 よくわからない事を言われたので私は首をかしげる。

「今は分からなくて良い...、いずれ少しずつ分かって行くから...」

 彼女の何処と無く優しい言葉を最後に私は食事を終えた。

「ご馳走さま、じゃあ扉を開いてよ、私は合格なんでしょ?」

「勿論、貴女は立派な我々のなのだから...」

「..?」

 私にはその意味がよく分からなかった。

 別に誰かと契約を交わした訳でもないし、ただ口だけの約束で王族に忠誠を誓っただけだからである。

「行ってらっしゃい...、が待ってるから早く行ってあげなさい」

「分かってる...、ようやく王族直属の配下になったんだからな、せいぜい良い暮らしをするさ」

「あの子によろしく...」

「分かってるって!」

 私はこの空間に入れられてから始めて開かれた世界にワクワクしながら外に出るのだった。
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