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笛ラムネ

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 ぴ~ぴ~と私が笛ラムネを吹いていると...。

「愛川さん、どうして笛ラムネなんか吹いているんだい? そんなのは小学生で卒業するものだろう?」

「...」

 そう言われたのでガリっと笛ラムネを噛み砕く私。

「まあ、そうね。でもせっかくの楽しい気分を邪魔しないで貰えるかしら?」

「それは...、すまないとは思うけれど、やっぱりちょっと子供っぽいと思うんだよ。愛川さんがそう言う事をするのは似合わないと言うか...」

 石川君の言いたいこともわかる。

 学年トップの成績を誇る私がこんな子供騙しのお菓子で喜んでいる姿なんて幻想というか信じがたいという気持ちはね...。

 でも、残念ながらこれが愛川結美なの。

 少々子供っぽいこともしておかないとカズ君と付き合えないでしょう? 彼は子供っぽい事が大好きなんだから...。

 テレビゲームに人気のソシャゲ、ボードゲームにカードゲーム。

 私にとってはどれも

 けれど、それを彼と一緒になって体験することで全ての現象を最高峰の体験に感じてしまうのだから楽しくて仕方ないのだ。

 私は彼と一緒にやる遊びゲームであればなんでもする。

 彼が望むと言うのであればこの歳でも鬼ごっこや隠れんぼを私は全力でやり切るだろう。

 鬼ごっこであれば島を一つ借り切っての大規模な鬼ごっこの企画を提案するし、隠れんぼあればビル一つを使った隠れんぼを企画する。

 全てはカズ君と一緒にゲームを楽しむ為に。

 私は...

 でも...。

 そんな幸せを邪魔する連中がいる。

 このままいけば私は高校を卒業と共に愛川家のペットに成り下がるだろう。

 確実に私が死ぬまでの期間に骨の髄までしゃぶられ尽くして終わる未来しか見えないのだ。

 あの男ならやりかねないと思うと同時にそれだけは絶対に阻止しなくてはならないと私の気持ちが昂る。

(兄様を殺したくらいじゃあ、まだお父様は私を利用してくるだろう)

 私が狙うは私以外の愛川家の滅亡及び愛川グループの崩壊。

 別に愛川グループが無くなったって私はなにも困らない。

 既に老後までの資金は貯めてあるし、カズ君との結婚資金や彼といずれ生まれてくるであろう子供達の資金もたっぷりと用意してある。

 私の思い描く幸せな未来に愛川家は邪魔なのだ。

 もう2度と私に手を出さないと仮に彼らが誓ったとしても呪いのようにこの体に流れる愛川家の血筋が私を逃さないだろう。

 血と言うのは水よりも濃いのだ。

 私の中にあの金の亡者達の血が流れているのかと思うとゾッとする。

(本当に最悪。母さん以外の血は要らないんだけどな...)

 できれば一般の家庭に生まれてカズ君とは小鳥遊優樹のように普通の恋愛がしたかったと思う。

 そこだけは小鳥遊優樹に嫉妬している私がいるのでした。
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