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第3章〜逆転世界の電波少女〜⑮
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・感染爆発の影響で、人類の半数以上が亡くなったセカイ
・二大強国の対立の結果、核戦争で地球上の大半の生物が死滅したセカイ
など、さまざまなセカイを見てきたオレは、どんな目に遭っても、
「「そういうものだ ……(So it goes)」
という諦観した人生観を身につけることになった。
ただ、ようやく安住の地となる場所を、見定めることができたと感じる。
クリーブラットは、これまでオレが行ってきた活動に対して色々と思うところがあるようだが、このあとの結果を見てもらえば、オレの真意も理解してくれるだろう。
小学生のとき、その歌唱力とパフォーマンスに魅入られて以来、彼女は、オレにとって憧れの対象であり、同時に、自分の劣等感の要因にもなる存在だった。
中学生になると、色めき立った男子どもが、彼女の周囲に集まるようになるのをオレは黙って見ていることしかできなかった。
彼女が、次々と交際の申込みをしてくる男子に対して、丁寧に断りを入れたというウワサを聞くたびに、オレは、ホッと胸をなでおろしていたのだが、そのソフトな対応が、さらに、彼女の人気を支えていることに言いようの無い不安を覚えていたのも事実だ。
(今となっては、その頃の彼女は、完全に猫を被っていたんだろうと感じる)
オレ以外の同じ小学校の卒業生たちは、そのようすを少し遠巻きに眺めつつ、自分たちと同じ学校を卒業した彼女が、学内だけでなく、学外でも注目を集めはじめたことを、どこか誇らしく感じている面があったようなのだが……。
一方、オレ自身は、他の卒業生たちと違って、徐々に自分との立場の違いが鮮明になっていく彼女に対する、複雑な感情は、ますます大きくなっていた。
次々と告白しては、玉砕していく男子どもに対しては、
(彼女の歌声とパフォーマンスの素晴らしさに、最初に気づいたのはオレなのに……)
という感情を抱き、彼女自身に対しては、
(控えめな性格だったアイツが、あんなに輝いているのに、オレ自身は……)
という劣等感の入り混じった想いは、どうしようもなく肥大していく。
表面上は、親友や先輩、そして、後輩たちとの部活動に打ち込んでいたが、彼女に対する複雑な想いは、小学生の頃から、ずっとオレの心の中にあった。
彼女と同じく、部活の後輩が、入学直後に男子から立て続けに告白されたことでトラブルに巻き込まれ、
「誰とも付き合うつもりはないし……興味のないヒトから好意を向けられるのって……気持ち悪い」
という言葉を吐いたときには、そこに、
(オレの幼なじみも同じように感じているんだろうか……)
と、彼女の姿を重ねて安堵する一方で、また、そんな根拠に乏しい考えにすがっている自分自身の情けなさに落ち込む日々が続いた。
中学生活の後半に入ってから、歌手としてデビューを目指す彼女は、本格的にレッスンを再開したこともあり、学校に登校してくる機会が少しずつ少なくなっていった。
一時期、周囲の男子との接点が少なくなったことから、彼女との関係を進展させるような存在は少なくなったが、同時に、部活動で忙しくなったオレ自身との接点もますます少ないものになった。
少しずつ、それでも確実に自身の活躍の場を広げていく彼女に対して、言いようのない感情を抱きながら中学生活を過ごしていたオレは、とくに目標を持って生きている訳ではない自分と相手を比較し、
(オレが遊びに誘うまでは、寂しそうにスマホをいじっていた、大人しい転校生だったのに……)
と、屈折したますます大きくしていった。
そして、中学二年生の冬休み直前のこと――――――。
しばらく、男性の影が見えなかった彼女に、果敢に交際を申し込み続ける男子生徒があらわれた。
それは、高校進学を前に、県内屈指の好投手として注目されていた野球部の先輩で、彼は、彼女たちと複数名で何度か遊びに出かけたあと、陽が傾きはじめた教室にクリーブラットを呼び出し、
「もし、オレが強豪校に合格できたら、付き合ってくれないか?」
と告白した。
部活動の取材で、たまたま放課後の校舎内を移動していたオレは、衝撃を受け、その場から駆け出してしまい、無意識のまま、学校の敷地外へと飛び出してしまった。
もう、あんな惨めな想いは二度としたくない――――――。
その想いだけをバネに、オレは、この日まで、オレの理想とするセカイを実現するために、活動を続けてきた。
そして、ようやく、彼女に対して誇れるだけのコトを行える準備が整った。
ただし、その仕上げのためには、あの同居人に協力してもらうことが必要だ……。
そこで、オレは、人知れず彼女を呼び出すための算段を練る。
そして、古典的な方法ながら、効果が高いと考えられる方法を取ることにした。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
誕生日おめでとう!
渡したいモノがあるから、放課後に
4号館校舎の屋上に来てほしい
誰かに見られると恥ずかしいから
こっそり来てもらえると助かる
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
無地のメモ用紙に、シンプルなメッセージを書き込む。
その下級生のクラスメートの生徒に、待ち合わせの時間帯と場所を書いたメモ書きを渡してくれるように頼み、オレは、校舎の屋上へとむかった。
・二大強国の対立の結果、核戦争で地球上の大半の生物が死滅したセカイ
など、さまざまなセカイを見てきたオレは、どんな目に遭っても、
「「そういうものだ ……(So it goes)」
という諦観した人生観を身につけることになった。
ただ、ようやく安住の地となる場所を、見定めることができたと感じる。
クリーブラットは、これまでオレが行ってきた活動に対して色々と思うところがあるようだが、このあとの結果を見てもらえば、オレの真意も理解してくれるだろう。
小学生のとき、その歌唱力とパフォーマンスに魅入られて以来、彼女は、オレにとって憧れの対象であり、同時に、自分の劣等感の要因にもなる存在だった。
中学生になると、色めき立った男子どもが、彼女の周囲に集まるようになるのをオレは黙って見ていることしかできなかった。
彼女が、次々と交際の申込みをしてくる男子に対して、丁寧に断りを入れたというウワサを聞くたびに、オレは、ホッと胸をなでおろしていたのだが、そのソフトな対応が、さらに、彼女の人気を支えていることに言いようの無い不安を覚えていたのも事実だ。
(今となっては、その頃の彼女は、完全に猫を被っていたんだろうと感じる)
オレ以外の同じ小学校の卒業生たちは、そのようすを少し遠巻きに眺めつつ、自分たちと同じ学校を卒業した彼女が、学内だけでなく、学外でも注目を集めはじめたことを、どこか誇らしく感じている面があったようなのだが……。
一方、オレ自身は、他の卒業生たちと違って、徐々に自分との立場の違いが鮮明になっていく彼女に対する、複雑な感情は、ますます大きくなっていた。
次々と告白しては、玉砕していく男子どもに対しては、
(彼女の歌声とパフォーマンスの素晴らしさに、最初に気づいたのはオレなのに……)
という感情を抱き、彼女自身に対しては、
(控えめな性格だったアイツが、あんなに輝いているのに、オレ自身は……)
という劣等感の入り混じった想いは、どうしようもなく肥大していく。
表面上は、親友や先輩、そして、後輩たちとの部活動に打ち込んでいたが、彼女に対する複雑な想いは、小学生の頃から、ずっとオレの心の中にあった。
彼女と同じく、部活の後輩が、入学直後に男子から立て続けに告白されたことでトラブルに巻き込まれ、
「誰とも付き合うつもりはないし……興味のないヒトから好意を向けられるのって……気持ち悪い」
という言葉を吐いたときには、そこに、
(オレの幼なじみも同じように感じているんだろうか……)
と、彼女の姿を重ねて安堵する一方で、また、そんな根拠に乏しい考えにすがっている自分自身の情けなさに落ち込む日々が続いた。
中学生活の後半に入ってから、歌手としてデビューを目指す彼女は、本格的にレッスンを再開したこともあり、学校に登校してくる機会が少しずつ少なくなっていった。
一時期、周囲の男子との接点が少なくなったことから、彼女との関係を進展させるような存在は少なくなったが、同時に、部活動で忙しくなったオレ自身との接点もますます少ないものになった。
少しずつ、それでも確実に自身の活躍の場を広げていく彼女に対して、言いようのない感情を抱きながら中学生活を過ごしていたオレは、とくに目標を持って生きている訳ではない自分と相手を比較し、
(オレが遊びに誘うまでは、寂しそうにスマホをいじっていた、大人しい転校生だったのに……)
と、屈折したますます大きくしていった。
そして、中学二年生の冬休み直前のこと――――――。
しばらく、男性の影が見えなかった彼女に、果敢に交際を申し込み続ける男子生徒があらわれた。
それは、高校進学を前に、県内屈指の好投手として注目されていた野球部の先輩で、彼は、彼女たちと複数名で何度か遊びに出かけたあと、陽が傾きはじめた教室にクリーブラットを呼び出し、
「もし、オレが強豪校に合格できたら、付き合ってくれないか?」
と告白した。
部活動の取材で、たまたま放課後の校舎内を移動していたオレは、衝撃を受け、その場から駆け出してしまい、無意識のまま、学校の敷地外へと飛び出してしまった。
もう、あんな惨めな想いは二度としたくない――――――。
その想いだけをバネに、オレは、この日まで、オレの理想とするセカイを実現するために、活動を続けてきた。
そして、ようやく、彼女に対して誇れるだけのコトを行える準備が整った。
ただし、その仕上げのためには、あの同居人に協力してもらうことが必要だ……。
そこで、オレは、人知れず彼女を呼び出すための算段を練る。
そして、古典的な方法ながら、効果が高いと考えられる方法を取ることにした。
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誕生日おめでとう!
渡したいモノがあるから、放課後に
4号館校舎の屋上に来てほしい
誰かに見られると恥ずかしいから
こっそり来てもらえると助かる
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
無地のメモ用紙に、シンプルなメッセージを書き込む。
その下級生のクラスメートの生徒に、待ち合わせの時間帯と場所を書いたメモ書きを渡してくれるように頼み、オレは、校舎の屋上へとむかった。
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