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魔王……らしい
しおりを挟むそれは、とても懐かしい夢だった。
私がまだルーシャ・カルナヴァルだった頃。
ケヴィンとも、リオンとも出会う前の事。
私はそれに会っていた。
それは私に言った。
『君はきっと巫女となる。
だけど…それは今じゃない。
巫女となるのは君がもう一度この世界を生きる時。
君が21となる時が……。
その時になったら私はもう一度君に会いに行こう。
それまで、私と話したこの記憶は封じておく。
私の名は×××。
…今の君では聞き取る事は出来ない、か。
じゃあね、巫女。
君がもう一度この世界を生きる、その時まで……』
彼はそう告げると悲しげな顔で私に魔法を施した。
記憶の封印という、禁忌の魔法を。
意図も簡単に。
そこで私の意識は浮遊した。
目が覚めるとそこは白い天井だった。
私の寝ているベットに寄りかかるようにして寝ているのはエリー。
そして、椅子に座っているのはリマだった。
「……っ…あぁ、私…。
気を失ったんだ……」
私がそう呟いたのが原因かリマが起きた。
「ル、ルー……?
ルー!ルー!!
起きましたのね!?
本当に…本当に…!!」
リマは私に抱きつき涙を浮かべていた。
大袈裟な反応だったが私がどれだけ心配をかけたのかが良くわかる。
「リマ、苦しい……」
「も、申し訳ありませんわ!
……ですが、ルー。
あなた、1週間近く眠っていたんですのよ?」
1週間……。
それは、うん。
予想外。
まさかそんなに寝ていたとは……。
だがそれよりも、あの夢…いや、記憶か。
あの人は何者なのだろうか?
何故、私が転生し巫女となることを知っていたのだろうか?
何故私の記憶を封じていたのだろうか?
「お姉ちゃん…?
起きた、の?
お姉ちゃん!
良かった……。
あ、私、皆を呼んでくる!」
エリーはそう言って部屋を出ていってしまった。
そして残ったのは私とリマの2人だけ。
うーん。
気まずい……。
だが、こうなった以上、ケヴィンと話した後に皆にも伝えなければいけないだろう。
そうでなければきっと納得しないだろうから。
そして、エリーと共にケヴィンや両親、アンリといった人達が入ってくる。
「ルーナ!
良かったわ……」
「ルーナ、体は大丈夫か!?」
「ルーシャ、具合は……」
「ルーシャ様…」
皆、それぞれ心配してくれていたのだと実感した。
私は大丈夫、と言うとケヴィンに問いただす。
「…ケヴィン、話していい?」
「……全てはルーシャ様のお好きな様に。
私は如何なる罰でもお受けいたします」
「そう……」
ケヴィンの答えを聞き、私は意を決して話すことにした。
だが、その前にリマには話さなければいけない事がある。
「リマ、今まで言ってなかったけど……。
私の称号、巫女なんだ」
と、軽く口にした。
「……は?
み、巫女様?
ルーが……?
……確かにそう考えるとあの馬鹿げた魔力にも納得がいきますわ」
と、それについてはこれで終了。
私もリマも特に何を言うでもなく完結した。
「…お父さん、お母さん、エリー、リマ、アンリ。
ルーシャ・カルナヴァルって知って、る?」
私の声は少しだけ震えていた。
私の告げた名にリマはハッとした表情を浮かべる。
そして、アンリはただ頷き、エリーは疑問をうかべつつも小さくうん、と返事をし、両親は戸惑いつつも頷いた。
「じゃあ、その死因は…?」
「病死、ですね」
「病死じゃなかったっけ?」
「えぇ…」
「病死だな」
アンリ、エリー、お母さん、お父さんの順にそれぞれ答えていく。
だが、リマだけはまさか、といった表情を浮かべた。
「……毒殺…」
「……うん。
リマが正解…。
誰に殺されたかは、知ってる?」
「…まさか、ルーシャ・カルナヴァルの右腕だったケヴィン、ですの?」
リマはもう、気付いたのだろう。
あの魔法の中で見たものが事実だったということに。
そのせいか顔を青ざめている。
私はリマの答えに静かに頷いた。
「ルーシャにケヴィン……。
ルー…あなた、ルーシャと呼ばれていますわよね?
それに、殿下もケヴィンと……」
流石リマ。
もう、そこまで気付くとはね。
「…アンリもエリーも疑問に思わなかった?
私が礼儀作法について教わった時、すぐに全てマスターしたことについて」
それにアンリとエリーはハッとした表情になる。
「……私は、ケヴィンに殺された。
私の前世の名はルーシャ・カルナヴァル。
死因は病死ではなく、毒殺。
そこにいる元従者による、ね。
本当、息苦しいし、喉や胸は痛むし、裏切られたっていう悲しみやらで禄な死に方じゃなかったわ。
しかも、私を殺した当の本人は悲しげに見ているし。
何より、私を殺したのが初恋の人ってのが一番堪えたわ」
「私もルーシャ様の事は初恋でした。
それ故に最も愚かな事を選んだと理解しております。
……ルーシャ様、申し訳ございませんでした」
今思えばあれは誰かに仕組まれたことだったのかもしれないと思う。
根拠はあの夢だ。
私が21となる時。
そう言った。
つまり、あれは私が21になる時に殺されふ…もしくは死ぬということだったのだろう。
「……私はどうせ21で死ぬ事となっていたと思う。
そして、転生して巫女となる。
そこまでは多分シナリオ通りってとこかな?
……ねぇ、名前も知らない私の記憶を封印したお兄さん」
「……気付かれていた、か。
…久しぶりだね、巫女。
今なら私の名前が聞き取れるんじゃないかな。
…私の名はアルファード・レス・レンタード。
聞き取れていれば嬉しいのだけど……」
「……聞き取れてるよ。
で、何で私が21で死ぬ事、転生する事、そして巫女になる事まで知っていたのか…教えてくれるよね?」
アルファードはただただ悲しげに私を見つめていた。
そんなアルファードに対して私は敵意のこもった目を向けていた。
返答によりアルファードは私の敵になるから。
「……私は君の敵じゃない。
巫女は、私達にとって大切な存在。
…まず、何故君が21で死ぬと知っていたか。
答えは巫女となる者の前世は必ず21てま終わりを迎えるから。
つまり巫女となるものにとって21年はお試しの期間というものなんだ。
次に何故転生すると知っていたか。
これは、巫女となる者は必ず体験を終えてから転生する事が決まっているから。
…その男は君のサポート役みたいなものとして転生させたにすぎないんだ。
まぁ、つまりはサービスってとこかな?
最後に、何故君が巫女となる事を知っていたか。
それは名前さ。
巫女となる前の体験のものにはルーシャと名付けられ、体験を終えた巫女にはルシャーナという名が付けられる。
これが決定事項だから。
巫女以外にルーシャとも、ルシャーナとも名乗っていい人物は存在しない。
だから分かった。
それだけだよ」
アルファードの話はまるで嘘のようで…。
私にとって到底信じられるようなものではなかった。
…私が巫女となる事は昔から決まっていただなんて…誰が信じられるのか。
「……最後に1つ。
私は…私は人間…?」
その問いはただの願いの様なものだった。
前々から感じていた違和感。
そして今日のアルファードの話。
これではまるで……。
「……いいや。
君は、神々の一部だったもの。
神々の欠片が自我をもったもの。
君は……魔族と人間、精霊を繋ぐ世界の為の調律者。
それが君の……巫女という存在…の、筈だった」
筈だった?
という事は…私は人形じゃない?
「…これは確認だけど…君の魔法の中に『調律者』は無いでしょ?」
「無い…」
「という事は君は神から自立した。
神の力をもった人間になった。
そんな感じかな」
アルファードはやはりどこか悲しげだった。
寂しそうに笑っている。
そのせいかやけに悲壮に見える。
「私からも1つだけ質問を。
…君は、誰を選ぶ?
そこにいる転生者か、君の中にいる憤怒か…そこの神官か…私か。
君の選択でこの世界の未来が決定する」
「私が選ぶのは友人と家族。
皆、私にとって同じくらい大切だから」
「……そう。
君が最後に選択した時…この世界は大きく変わる。
私としては憤怒か私を選んで欲しいけれど…。
それは君が決める事だから」
その表情は先ほどよりも少しだけ明るく感じた。
「……寿命、その意味なら私はリオと約束したから。
リオとの約束を破るつもりは無いよ?」
と、一応最後に言っておく。
まぁ、これはリオに対して言った言葉でもあるのだが。
『えへっ……嬉しいな。
ルーシャといれるなんて!
でも…単に僕を一人にするのがって意味ならその方とでも問題無いよ。
……ううん。
アル様の方が僕よりもずっと永く、辛い思いをしてるから…』
リオがアル様と言った。
リオはこれでも七つの大罪の悪魔。
その悪魔が様という敬称をつけるという事は…。
「……魔王…?」
私がそう口にするとアルファードはやはり微笑むだけだった。
だが、この場合の意味はアルファードが本当に魔王という事になる……。
「……私、魔王に魔法かけられてたの!?
それは気付かない訳だよ……。
リオもリオでいってくれれば良かったのに!
話変わるけどさ、アルってやっぱり魔王城とかに住んでるの?」
「私は1箇所にいないから…」
つまり魔王城には住んでいないと。
「じゃあ、友達って事でここに住みなよ。
……あ、駄目かな?
他に用事とかやりたいこととかあったら私の提案は無かったことに!」
「……いや、無い。
無いけど…それは出来ないよ。
巫女、君だって知っていると思うけど私達悪魔は人間に忌み嫌われている。
そんな存在がここで暮らせるわけが…」
「問題ありません。
ルーシャ様のご友人であれば教会側も何も言いません。
あっても私が言わせませんから」
アンリが私の味方をしてくれるらしい。
これで安心だね。
と、いう事で今日から魔王が移住してくることになった。
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