婚約破棄?喜んでお受け致します!

紗砂

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カイン3

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ルーナとルイスが婚約してから数ヶ月、あの2人が婚約したことによって、私にも婚約の話が持ち上がるようになっていた。

本来であれば、ルイスよりも私の方が先に婚約するはずであったのだからそれも仕方の無いことかもしれないが、どの令嬢も私の身分と容姿にしか目がいってないようで煩わしいとさえ感じる。
ルーナのように私の中身を見て接してくれる者はいなかった。


「カイン様、具合が悪そうです。
しっかり休んでいますか?」


連日の婚約者候補とのお茶会により精神的疲労が溜まっていたのだが、やはりルーナにはバレてしまうらしい。
心配そうに私の顔を覗き込むルーナに癒される。


「あぁ、問題ない。
ありがとう、ルーナ嬢」


ルーナはルイスの婚約者となったのだから今までと同じように呼び捨てでは不味いだろうと一ヶ月前から呼び方を変えたのだが、ルーナは初めこそ不満そうではあったものの、今はもう気にしていないようだ。

……少しは気にしてくれていいのだがな。
私から変えておきながらではあるが、ルーナとの距離が離れてしまったようで寂しく思う。

……さすがに認めよう。
あの時、ヴォルに言われたことは確かだった。
私は、ルーナが好きだ。
あの眩しいくらいに純粋な笑顔も、私を気遣ってくれる優しい心も、全てが愛おしいと思う。
だが、もう遅い。
ルーナは、弟の婚約者になってしまった。
どう望んでも私がルーナの隣に立つことはない。


「……本当ですか?」

「あぁ、本当だ」

「あ……兄上、ルーナ!」


ルーナと二人きりの時間は終わりのようだ。
ルイスは私たちを見つけ笑顔で駆け寄ってくる。
正直、ルイスが羨ましい。
ルーナと共にあれるのだから。
だが、私とルーナが婚約したとして、ルーナを幸せに出来るかと言われたら無理だろう。
ならば、ルイスの方が良いのかもしれない。
そう分かってはいても、気持ちは追いつかないのだ。

ルーナに王妃教育という名目で苦労をかけたくはない。
そう思いつつも、ルーナが私と共に歩んでくれるのならば……そう思う気持ちもある。


「ルーナ嬢、ルイスを頼む」

「勿論です、カイン様。
ルイス様は私の婚約者ですから」


少し恥ずかしそうにルイスを婚約者と言ったルーナに思わず顔を顰めた。
そして、ルイスへの嫉妬を隠し、私は笑顔で立ち去った。
その足で、そのまま自室へ行くと、私の行動を見透かしたようにヴォルがいた。


「カイン、お前やっと自覚したのか」

「……ヴォル。
あぁ、自覚した。
自覚してしまった……。
なぁ、どうすればいい?
私はこれからルイスとルーナにどんな顔をして会えばいい?」


怖かった。
私の気持ちがルーナにバレてしまうことが。
私のせいで、関係にヒビが入ってしまうかもしれないことが。
何より、この醜い嫉妬心をどこへ向ければいいのかが分からなかった。


「……今はそのままでいいんじゃね?
いつか、ルーナを諦められるさ。
それまではなんか、別のことで気をまぎらわせようぜ」

「……諦められると、思うか?」


諦められるわけがない。
ルーナのことを思い浮かべただけで苦しいのだ。
愛おしさが溢れてくるのだ。
それを、諦めきれるはずがない。


「まぁ、1つだけ方法が無いわけでもない」

「……なに?」

「ルーナの抱えるもんがバレればお前の弟との婚約は無かったことになるだろうよ。
けど、それを明かすのは早くてもルーナが学園を卒業してからだ。
お前がそれまでルーナを好きでいられたら、だな。
当然婚約者もいないって前提だぜ?」


ヴォルの言う秘密。
それがどれだけ重要なことなのかは分からない。
だが、あのヴォルがこれだけ言うのならば信じてみようと思った。

ルーナが卒業する時、その時まで私は何があっても婚約者を決めない。
そして、それまでにルーナの想いを私の方へと向け、婚約者にしてみせる。

ルイスには悪いがな。


「あ、俺は可愛い妹の味方だからな。
ルーナの意思を最優先するぞ」

「あぁ、分かっている。
少しの可能性があるのならば、私はそれにかけてみるさ」


それから、私は婚約者候補となった令嬢達へ丁度いいであろう相手を用意し、候補から外れて貰った。
他国から娶るという話も出ていたが、それに関してデメリットを強調し、断り、同盟という形で丸め込んでやった。

結果、ルイスがルーナへと婚約破棄を申し付けるその時まで、私には婚約者はいないという異例の事態となったのだった。

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