84 / 87
燈夜の葛藤
しおりを挟む
「咲夜ちゃん、久しぶりー」
家に帰ると、燈夜先輩がヒラヒラと手を振ってきた。
このような事は前にも何度かあったのであまり気にはしなかったが。
……それにしても、燈夜先輩と会うのは久しぶりだ。
「あ、燈夜先輩、お久しぶりです。
シフォンケーキでよろしければご用意致しますが……」
司に教わりながら作ったシフォンがあったはずだ。
一応紅茶の茶葉、アールグレイを混ぜてある。
「咲夜ちゃんの手作り?」
「はい。
……あ、他の物の方がいいでしょうか?」
「咲夜ちゃんの手作りの方、貰ってもいいかな?」
「はい、お兄様は……」
「もちろん貰うよ」
ということで、私の手作りシフォンケーキとお茶を取り出すと、シフォンは5分の1くらいに切り分けて持っていった。
それにしても、何故そこまで燈夜先輩は手作りにこだわるのだろうか?
「お兄様、燈夜先輩、お持ちいたしました」
「ありがとう、咲夜」
「ありがとう咲夜ちゃん」
私は2人に笑顔で返すと、退室しようとした。
だが、兄がそれを許さなかった。
「咲夜、おいで」
「お、お兄様!
私は着替えて来ますので…」
「あぁ……じゃあ、また後でおいで」
「はい」
私は部屋を出ると溜息をついてラフな格好に着替えようとクローゼットを開けた。
その中から、兄に貰ったワンピースを選ぶと、それに着替えて髪を1つにまとめあげた。
「お兄様」
「咲夜、可愛いよ。
おいで」
「はい」
多少の気恥ずかしさはあるものの、何年も同じようなことが続くと慣れるものだ。
「咲夜ちゃん、天也君と婚約したって聞いたけど……好きなの?」
「なっ……何を言うんですかっ……!?」
「好きなんだ」
「からかわないでくださいっ!!」
燈夜先輩は少し悲しげに、寂しげな表情を浮かべていた。
一体どうしたというのだろうか?
まさか、私を妹のように思っていてその妹が婚約するのが……って事だろうか?
だが、それにしても人をからかうのは駄目だと思う。
からかうのなら天也の方にして欲しい。
「……そっかー。
あ、咲夜ちゃん、シフォンとお茶ありがとう。
美味しかったよ」
「そう言っていただけて良かったです」
「じゃあ、僕は予定あるしそろそろ帰るね」
そう言って立ち上がる燈夜先輩に、私もお見送りをしようと立ち上がった。
だが、他でもない燈夜先輩によって止められてしまう。
「見送りはいいよ」
「そういう訳には……」
「咲夜、僕が行くからいいよ。
部屋に戻っているといい」
そう言われてしまえば私には否定できる理由が無く、仕方なくといった風に頷いた。
「……はい、分かりましたお兄様。
燈夜先輩、また明日」
「……うん、またね、咲夜ちゃん」
少し名残惜しそうにする燈夜先輩は笑顔で隠すとそのまま行ってしまった。
……それにしても、今日の先輩はおかしかった。
一体何があったのか。
◇◇◇
「燈夜」
悠人が僕に声をかけてくる。
僕は、咲夜ちゃんの事が好きだった。
……いや、今も好きだ。
ずっと、ずっと前から好きだった。
だが、もうそれも今日で終わりだ。
咲夜ちゃんは天也君の事を好きなのだ。
あんなに取り乱す姿も、恥じる姿も初めてだった。
だから、僕は咲夜ちゃんがそれで幸せになれると言うのなら……潔く身を引こうと思う。
そう思って今日、悠人に無理を言ってここに来たんだ。
あわよくば、これが政略結婚で、咲夜ちゃんが僕を選んで欲しいと思いながら。
一種の賭けだったのかもしれない。
けど、結果は惨敗。
きっと、咲夜ちゃんは僕の想いにも気付いていないだろう。
ならば、まだ。
この関係でいられるかもしれない。
でも、それで僕は咲夜ちゃんのことを諦められるのか。
きっと、出来ない。
出来るはずがなかった。
簡単に諦めきれる程度の想いならば、ここに来てはいないから。
「燈夜、お前は諦めるのか?
咲夜はまだ、お前を恋愛対象として見ていないのに」
「……潔く身を引こう、なんて思ってたんだけどね。
けど、やっぱり駄目みたいだ。
僕は咲夜ちゃんを諦めきれない」
「当然。
だって僕の咲夜は可愛いからね。
天使としか思えないくらい可愛いっ、可愛すぎる!!」
また悠人の暴走が始まった。
けど、確かにその通りだと思ってしまう僕も僕なのだろう。
でも、それでも咲夜ちゃんが彼を選ぶというのなら……。
その時はちゃんと身を引いてお祝いしようと思う。
だが、それまでは……。
天也君には悪いけれど全力でかかろうと思う。
まぁ、悠人に気をつけながら、ね。
とりあえずは恋愛対象として見てもらうところからなんだけど。
あの咲夜ちゃん相手ならそこが一番大変そうだ。
◇◇◇
私は、1人残された部屋で、窓の外を眺めていたが、すぐに自室へと戻ることにした。
後で戻ってくるだろう兄に見つかれば面倒だと思ったからだ。
ただ、今日の燈夜先輩の様子はおかしかったように思える。
だからといって、調子が悪いというわけではなさそうだった。
大学生活が大変なのだろう。
きっと今日もその相談だったに違いない。
……ならば、邪魔をしてしまい申し訳ない。
今度お詫びをしよう。
窓の外を眺めていると、燈夜先輩と不意に目が合った。
にこやかに手を振ってくる先輩に、私も笑顔で返した。
先程とは違い、いつも通りの先輩に戻ったように思えて少しだけ安心する。
そういえば、兄も婚約したことだし、次に誰かと婚約するとすれば燈夜先輩だろうか?
普通に比べれば遅い方ではあるが、良い人が見つかればいいと思う。
「清水、燈夜先輩は好きな方がいるのでしょうか?」
「……咲夜様、相変わらずの鈍感ぶりで」
「え……?
ま、まさか、もう既に……!?」
「……遠からずあたっているというのがまた」
一体清水は何を言っているのだろうか。
本当に、燈夜先輩が好きな人ってどんな人なのだろうか?
物凄く気になる。
そっちの方も、今度それとなく探ってみようと思う。
家に帰ると、燈夜先輩がヒラヒラと手を振ってきた。
このような事は前にも何度かあったのであまり気にはしなかったが。
……それにしても、燈夜先輩と会うのは久しぶりだ。
「あ、燈夜先輩、お久しぶりです。
シフォンケーキでよろしければご用意致しますが……」
司に教わりながら作ったシフォンがあったはずだ。
一応紅茶の茶葉、アールグレイを混ぜてある。
「咲夜ちゃんの手作り?」
「はい。
……あ、他の物の方がいいでしょうか?」
「咲夜ちゃんの手作りの方、貰ってもいいかな?」
「はい、お兄様は……」
「もちろん貰うよ」
ということで、私の手作りシフォンケーキとお茶を取り出すと、シフォンは5分の1くらいに切り分けて持っていった。
それにしても、何故そこまで燈夜先輩は手作りにこだわるのだろうか?
「お兄様、燈夜先輩、お持ちいたしました」
「ありがとう、咲夜」
「ありがとう咲夜ちゃん」
私は2人に笑顔で返すと、退室しようとした。
だが、兄がそれを許さなかった。
「咲夜、おいで」
「お、お兄様!
私は着替えて来ますので…」
「あぁ……じゃあ、また後でおいで」
「はい」
私は部屋を出ると溜息をついてラフな格好に着替えようとクローゼットを開けた。
その中から、兄に貰ったワンピースを選ぶと、それに着替えて髪を1つにまとめあげた。
「お兄様」
「咲夜、可愛いよ。
おいで」
「はい」
多少の気恥ずかしさはあるものの、何年も同じようなことが続くと慣れるものだ。
「咲夜ちゃん、天也君と婚約したって聞いたけど……好きなの?」
「なっ……何を言うんですかっ……!?」
「好きなんだ」
「からかわないでくださいっ!!」
燈夜先輩は少し悲しげに、寂しげな表情を浮かべていた。
一体どうしたというのだろうか?
まさか、私を妹のように思っていてその妹が婚約するのが……って事だろうか?
だが、それにしても人をからかうのは駄目だと思う。
からかうのなら天也の方にして欲しい。
「……そっかー。
あ、咲夜ちゃん、シフォンとお茶ありがとう。
美味しかったよ」
「そう言っていただけて良かったです」
「じゃあ、僕は予定あるしそろそろ帰るね」
そう言って立ち上がる燈夜先輩に、私もお見送りをしようと立ち上がった。
だが、他でもない燈夜先輩によって止められてしまう。
「見送りはいいよ」
「そういう訳には……」
「咲夜、僕が行くからいいよ。
部屋に戻っているといい」
そう言われてしまえば私には否定できる理由が無く、仕方なくといった風に頷いた。
「……はい、分かりましたお兄様。
燈夜先輩、また明日」
「……うん、またね、咲夜ちゃん」
少し名残惜しそうにする燈夜先輩は笑顔で隠すとそのまま行ってしまった。
……それにしても、今日の先輩はおかしかった。
一体何があったのか。
◇◇◇
「燈夜」
悠人が僕に声をかけてくる。
僕は、咲夜ちゃんの事が好きだった。
……いや、今も好きだ。
ずっと、ずっと前から好きだった。
だが、もうそれも今日で終わりだ。
咲夜ちゃんは天也君の事を好きなのだ。
あんなに取り乱す姿も、恥じる姿も初めてだった。
だから、僕は咲夜ちゃんがそれで幸せになれると言うのなら……潔く身を引こうと思う。
そう思って今日、悠人に無理を言ってここに来たんだ。
あわよくば、これが政略結婚で、咲夜ちゃんが僕を選んで欲しいと思いながら。
一種の賭けだったのかもしれない。
けど、結果は惨敗。
きっと、咲夜ちゃんは僕の想いにも気付いていないだろう。
ならば、まだ。
この関係でいられるかもしれない。
でも、それで僕は咲夜ちゃんのことを諦められるのか。
きっと、出来ない。
出来るはずがなかった。
簡単に諦めきれる程度の想いならば、ここに来てはいないから。
「燈夜、お前は諦めるのか?
咲夜はまだ、お前を恋愛対象として見ていないのに」
「……潔く身を引こう、なんて思ってたんだけどね。
けど、やっぱり駄目みたいだ。
僕は咲夜ちゃんを諦めきれない」
「当然。
だって僕の咲夜は可愛いからね。
天使としか思えないくらい可愛いっ、可愛すぎる!!」
また悠人の暴走が始まった。
けど、確かにその通りだと思ってしまう僕も僕なのだろう。
でも、それでも咲夜ちゃんが彼を選ぶというのなら……。
その時はちゃんと身を引いてお祝いしようと思う。
だが、それまでは……。
天也君には悪いけれど全力でかかろうと思う。
まぁ、悠人に気をつけながら、ね。
とりあえずは恋愛対象として見てもらうところからなんだけど。
あの咲夜ちゃん相手ならそこが一番大変そうだ。
◇◇◇
私は、1人残された部屋で、窓の外を眺めていたが、すぐに自室へと戻ることにした。
後で戻ってくるだろう兄に見つかれば面倒だと思ったからだ。
ただ、今日の燈夜先輩の様子はおかしかったように思える。
だからといって、調子が悪いというわけではなさそうだった。
大学生活が大変なのだろう。
きっと今日もその相談だったに違いない。
……ならば、邪魔をしてしまい申し訳ない。
今度お詫びをしよう。
窓の外を眺めていると、燈夜先輩と不意に目が合った。
にこやかに手を振ってくる先輩に、私も笑顔で返した。
先程とは違い、いつも通りの先輩に戻ったように思えて少しだけ安心する。
そういえば、兄も婚約したことだし、次に誰かと婚約するとすれば燈夜先輩だろうか?
普通に比べれば遅い方ではあるが、良い人が見つかればいいと思う。
「清水、燈夜先輩は好きな方がいるのでしょうか?」
「……咲夜様、相変わらずの鈍感ぶりで」
「え……?
ま、まさか、もう既に……!?」
「……遠からずあたっているというのがまた」
一体清水は何を言っているのだろうか。
本当に、燈夜先輩が好きな人ってどんな人なのだろうか?
物凄く気になる。
そっちの方も、今度それとなく探ってみようと思う。
10
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
虫ケラ扱いの男爵令嬢でしたが、牧草風呂に入って人生が変わりました〜公爵令息とはじめる人生の調香〜
もちもちしっぽ
恋愛
男爵令嬢フレッチェは、父を亡くして以来、継母と義妹に粗末に扱われてきた。
ろくな食事も与えられず、裏庭の木の実を摘み、花の蜜を吸って飢えをしのぐ日々。
そんな彼女を、継母たちは虫ケラと嘲る。
それでもフレッチェの慰めは、母が遺してくれた香水瓶の蓋を開け、微かに残る香りを嗅ぐことだった。
「あなただけの幸せを感じる香りを見つけなさい」
その言葉を胸に生きていた彼女に、転機は突然訪れる。
公爵家が四人の子息の花嫁探しのために催した夜会で、フレッチェは一人の青年に出会い、一夜をともにするが――。
※香水の作り方は中世ヨーロッパをモデルにした魔法ありのふんわり設定です。
※登場する植物の名称には、一部創作が含まれます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる