転生したら守護者?になり称号に『お詫び』があるのだが

紗砂

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王都

2

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『お主、今はカイじゃったか。

お主に祝福があらんことを祈っておる。
それと、お主の大切な者は元気じゃぞ。
ワシが保証しよう』

「っ……本当、なんだな?
あいつらは元気にやってんだな!?」


大切な者。そう隠すのはきっと……。
ガキ共は元気にやっているようで良かった。

まぁ、このクソジジイの保証ってのは気になるが。


『本当じゃ。また、近いうちに、な』


転生神がそう口にした瞬間、俺とリュークは外に吐き出される。


「リューク」

「何、カイ?」

「無事みたいで良かった」

「カイこそな」


誰かが運んでくれたのだろう。俺たちは寝台に寝かされていた。
寝台から降りると俺とリュークは部屋から出る。
その際、少しだけ違和感を感じた俺は


「ステータス」


画面を開くとまたもや驚きのもの。


 カイ

 体力:301
 魔力:321
 筋力:194
 耐久:492
 敏捷:263
 
 職業:冒険者??守護者??
 魔法:火 水 風 土 無
 称号:『勇者の親友』『お詫び』
    『友との誓い』
 加護:転生神の加護ver.2


やべぇ、ツッコミどころが増えてやがる。
転生神の加護ver.2ってなんだ? ver.2って……。
今までのはver.1だったのか?
よくわからん。ってか、耐久上がりすぎじゃね?
しかも、?増えてないか? 何もやってねぇよな?


「カイ? ステータスなんか開いて…どうかしたか?」

「……リューク、加護のとこみせてくれないか?」

「は? 加護?いいけど……。ステータス公開」


俺は何も言わずにリュークのステータスを見る。


 リューク

 体力:253
 魔力:411
 筋力:159
 耐久:467
 敏捷:298
 
 職業:勇者
 魔法:火 水 風 土 光 無
 称号:『勇気ある者』『異常の親友』          
    『友との誓い』
 加護:女神の加護          
                  
                 
耐久以外は普通だった。
魔力もかなり上がっているようだ。
加護は……ver.2とかは出ていない。
俺のステータスは何かがおかしい気がする。
                   
                   
「カイ、本当どうしたんだ?
いきなりステータス見せてくれなんて……」

「……俺のステータスを見れば分かる。
誰にも言うなよ? ステータス公開」


俺のステータスを黙って見たリュークは無言になった。


「……ver.2って何だろうな?
それと、職業欄……余計曖昧になってないか?
あと、耐久の上がり方異常じゃね?」

「……俺もそう思う。けど、耐久はまぁ、守護者だからって思えば理解はできる。
それより、やっぱver.2ってのが気になるんだが……」

「……なんだろうな?」

「本当にな……」

                  
俺達が2人して廊下に突っ立っていると誰かが来た。


「リューク君、カイ君、目覚めたのですね。
体の方はどうですか?」

「俺もカイも元気だよな」

「あぁ。
……ver.2」


最後にぼそっと呟いたver.2という言葉にリュークは苦笑をもらした。


「いつまで言ってるんだよ……」

「だったら、リュークのステータスにver.2って出てみろよ。
絶対気になると思う」

「………あぁ、確かにな」


どうやら納得してくれたらしい。
だが、確かにいつまでも言っている訳にはいかないだろう。


「今日と明日は念の為、休んでください。
明後日には…そうですね、私は出来ませんが、他の者に王都の案内をお願いしておきましょう」

「やったぜ!」

「っしゃぁ!」


リュークと楽しみにしていたギルドとかにも行けるのだろうか?
そう考えると楽しみでたまらない。
それを見透かしたようにハミルは釘をさした。


「体調を崩されたら延期致しますのでしっかりと、休んでください。
では、お部屋にご案内致します」


ハミルの笑顔の裏にはどこか暗いものが見えた気がした。

うちの孤児院に時々来ていた奴らにそっくりの笑顔だ。
作り物の笑顔。

それは、俺が1番嫌いな表情だった。
だって、そういう奴らは大抵、先生を困らせるから。
ガキ共を怖がらせるから。だから俺は笑顔を作るやつを信用しない。

ハミルを警戒しながらも着いた部屋は最上階の1番広いだろう部屋だった。
俺とリュークで1室ずつ分けられそうになったので2人して否定してなんとか1室にしてもらった。
……広い部屋に1人でなんて絶てぇ嫌だ。


「……なぁ、本当にこの部屋であってると思うか?」

「俺、今勇者じゃなくて良かったと思ったわ……」

「俺も?よりはマシだ。ver.2とかな」


色々と部屋を見ていくと小さな本棚があった。
そこには色々な種類の本があり、中には魔導書もある。
その中から水属性のものを選び本を開く。
大抵回復で分けられていない場合、水に回復系統の魔法があると考えたからだ。

だが、魔法陣のようなものが多くあまり良くは分からない。
だが、それでもいつか、リュークの役に立つだろうと必死に覚えようとする。


「カイ?」


ひょこっと扉から顔を出すリュークに少し時間を使いすぎたことを理解せざるを得なかった。
そんなリュークに悪い悪い、と謝ると俺は水の魔導書を隠し部屋の探検に戻った。


「なぁ、カイ。昔、勇者の話とかよく聞いてただろ?
あれさ、本当に自分の意思だったと思うか?」

「……どうしたんだ、いきなり?」


リュークの職業は勇者だ。だからこそ、何か思うところがあるのだろう。
やはりリュークは勇者として活動するのを躊躇っているのだろうか?

                  
「……カイ、俺……怖い。
魔王だとか、魔族だとかさ本当に敵なのか?

共存だって出来るんじゃねぇのか?

……それに、俺はこないだまでただの農民のガキだったんだぜ。
そんな俺が魔王なんて倒せるのか……?
なぁ、カイ……俺、俺……」


リュークはきっと勇者という職業を知ってからずっと悩んできたのだろう。
その声は不安や重圧で押し潰されそうな程に硬く、弱々しい声だった。

泣きそうな程に震えているのにも関わらず、リュークは決して涙を流さない。
ただ、俯いて答えを求めて俺に問う。


「さぁな。リュークはどうなんだ?
俺はリュークの意思を尊重するぜ。
お前が勇者なんて職業を放り出したいって言っても、魔王を討伐するって言っても、話に行くって言っても、俺はそれに付き合うさ。
……2人ならどんな事があっても怖くねぇ、だろ?」


俺の言葉にリュークは目を見開きポロッと涙を零す。

『2人ならどんな事があっても怖くない』

それは、俺とリュークが初めて森に行き、迷子になった時にリュークが言った言葉だ。
その言葉であのころの俺は救われた。
だからこそ、今、俺はその言葉をリュークに返す。


「……あー、カイのせいだからな!

……でも、そうだな。
学園卒業して、一旦、話に行って。
それでも無理ならその時に考える事にする。

……カイ、長い旅になると思うけど付き合ってくれるか?」

「今更、何言ってんだよ。
どこへ行こうと付き合うって言ったばかりだろうが。
俺はお前の親友であり、仲間であり、家族でもあるんだぞ!」


その言葉が信頼や親愛と言った話としてこの先ずっと受け継がれて行くなど、その時の俺もリュークも分かるはずもなかった。




俺は、リュークの話の中で少しだけ後ろめたい思いになった。

……それも仕方ないだろう。
俺は、リュークに1番の俺の秘密『転生』について何も話していないのだから。
リュークならばきっと受け入れてくれるだろう。

それでも怖かった。
俺とリュークの関係が変わってしまうような気がしたから。
だが、これ以上言わないのはさすがにズルいだろう。


「……リューク」

「ん?」

「リュークは、俺がどんな秘密を抱えて……打ち明けても今のままでいてくれるか?」


それでも、このままではいけないことは分かっていた。
リュークがここまで俺を信頼してくれるのなら俺も打ち明けよう、そんな気にもなった。


「何言ってんだ、当たり前だろ? カイはカイだからな!」


あぁ、やはり。
やはりコイツは、リュークは眩しすぎる。
俺にとって、リュークはやはり太陽のような存在だった。


「そう、か……。なら、俺も話すよ。
俺の抱えてきた、一番の秘密。聞いてくれるか?」

「……あぁ」



リュークは緩ませていた顔をキリッと真面目な表情へと戻し座り直した。
俺は苦笑を漏らし、一度深呼吸をしてからポツポツと語り始めた。
元はこの世界じゃない世界にいた事。
そしてあのクソジジイ、もとい転生神に出会いこの世界へ『カイ』として転生したこと。
どうやらあのクソジジイ……。転生神のせいでステータスがおかしい様だということ。
全てをリュークに話す。そして、反応を伺うと、ビクビクしていたのが馬鹿らしくなるような答えがきた。


「ふーん、で? ま、転生神がいるんなら転生とかもあるだろうな。
あー、俺の前世ってどんなんだったんだろうな?」


色々と考えていた自分が馬鹿らしく感じた。
いや、リュークなら『カイはカイだろ?』とか『それでもカイだってのは変わんねぇだろ?』だとかいうと思っていたのだが……。
まさかそんな事を口にするとは……。


「俺がこの事言うのを躊躇っていた理由って何だったんだ……?」

「さぁ?」


俺はガックリと項垂れるのであった。
だが、それでも俺の心は随分と軽くなっていた。
今日、本当の意味でリュークの親友になれた気がする。

そのせいか、心が軽く感じられた。
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