伯爵と勝負

牧野きうい

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ラルフ視点ー結局エマには敵わないー

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 分かっている。分かっているさ。このままではどうにもならない事ぐらい。

 八方塞がりで何か打開策が無いかと思いロズ兄に会いに行った。

 ロズ兄は現国王ではあるが昔のよしみで仲良くさせてもらっている。これまでも幾度となく意見を出し合い、時には衝突もしお互い助け合ってきた。

 と言っても相手の方が一枚も二枚も上手だが。

 先ほどの事にしてもあれだけこちらの事情を把握しているとは思わなかった。だが責める口調の裏に愛がある事を知っている。

 彼なりに発破をかけた事も。それだけに何も言い返す事ができなかった。

 情けないぞ。ラルフ・ウィリアムズ・フォン・ローギル。誇り高い伯爵ではないのか。今夜こそエマに愛を告げよう。

 王宮からの帰りの馬車でそう決意した。



 エマ・ノックス。商家の娘で父親は準男爵。

 広大な土地を持ち、多岐にわたって農産物を製作・加工・販売している。人の動かし方がうまく、農民からもほとんど不満は出ていないらしい。
 確か一昨年の葡萄の出来が良く、その葡萄からできるワインは新しいものでも芳醇で、王室御用達になった為、一代限りではあるがノックス氏は準男爵になった。それだけではなく、今までの功績も含めてなのだろうが。

 口さがなく『アイツは金で爵位を買った』と言う貴族もいるが私はそうは思わない。
 そんな事を言ってるやつの中にどれだけ同じ事ができる者がいるのか。領民が幸せと思える領主であるのか。

 話が脱線してしまったが、そのエマと半年ほど前から関係を持っている。この国は結婚に処女性を求めるほど貞操観念は強くはないが、エマは誰のものでもなくて、初めて貫いた時は感動で体が震えた。

 私は最初から結婚するつもりで、エマも嫌がってはいない(筈で)ベッドではすぐに蕩けて私に身を委ねてくる。

 しかしそれ以外では常に余所余所しく、目も合わせる事が少ない。関係を持つ前は、顔を合わせればニッコリ笑ってくれていたのに。

 やきもちを焼かせたくて、他の行儀見習いのと部屋に籠るようになった。もちろん2人きりではない。間違いが無いように侍従と侍女が控えている。

 まぁ私が愛しているのはエマだけだから間違えようもないが。

 チェスの試合と称して毎日日替わりで対戦している。自分で言うのもアレだが私はかなり強いので、勝負どころか練習にもならないのだが、喋っているだけではいつの間にか秋波を送って来るからだ。

 自分がいい条件なのは知っているが、私は愛している人と結婚したい。

 性格を表しているような真っ直ぐで漆黒の髪の毛。見つめられると心の底まで見透かされてしまいそうな大きく黒い瞳。形のいい耳に血色のいい小さい唇。そこから漏れる啼き声は下半身を揺さぶる。

 本当は何回でもしたいが、しつこい男だと思われたくなくて、いつも1回に止めていた。

 思い出していたら下履きが窮屈になり、焦って対局に意識を戻す。

チェックメイト王手

 コトンとビショップ僧侶を置く。

「流石ですわ。何手先まで読まれておられるのですか?」
「チェックまでは30手くらいですかね」
「素晴らしいですわ! あの……この後はご一緒できますか?」

 腕に触れようとする手を立ち上がる事で避けた。

「この後雑務が残っているので失礼する」

 顔も見ずに部屋を出る。チェスは嫌いではないが、終わると必ずと言っていい程その後の誘いがある事に困憊していた。

 エマの顔が見たい……。もうこんな周りくどい事は止めよう。気が付いてしまった。エマが私に好意を持っていなければ嫉妬などする筈も無いのだ。

 執務室に入って重たい息を吐く。そもそもエマに勝負を持ち出したのは、己の心の弱さからだ。
 身体からだは手に入れているのに、心はどうしようもない。エマは真面目なだ。私に逆らえないだけではないのか、本当は嫌ではないのか。

 そうしてしばらくしても解決策が見つからぬまま、ロズ兄に会いに行ったのだった。



 馬車の中で想いを伝える決心をしたものの、今日のエマはいつも以上に不自然だ。私と顔を合わせようとするとどこかへ逃げて行く。余りにも何度も避けられるので、段々とイライラしてきた。

 それにノックス氏からの手紙も既に届いている筈だ。どうして何も言って来ないのだ。後で思えば理不尽ともとれる自分の考えに、この時は気が付いていなかった。

 避ける訳を問い詰める為に夜、部屋へ呼んだ。

 しばらくすると小さなノックが鳴った。

「エマでございます」

 強引に引きずり込み施錠する。

 つい責めるように聞いてしまうと、エマの潤んだ目で見上げられた。自分の中の欲望がムクムクと湧き上がってくるのが分かる。


 抱きたい。
 昨日抱いたばかりなのに欲しくてたまらない。

 何も答えないエマに焦れて奪うように口付けた。舌をねじ込み、口の中を犯す。キスの間の苦しそうな息遣いでさえ私を煽る。

 もう下半身は完全に勃ち上がっていた。

 どれぐらい口付けていただろうか。エマの身体から力が抜け始めた時、素早く抱きかかえベッドに落とした。
 すぐに覆いかぶさり、愛撫しながら服を剥いていく。

 ふと顔を見ると先ほどまでは蕩けていたのに、今は気もそぞろなエマにイラ立ち、乳首に食らいついた。

「痛いです! ラルフ様」
「エマが悪いんだよ」

 集中していないから。

 それでも痛みを与えてしまったのは申し訳なく、優しく口に含み転がせた。エマの胸は大きくて柔らかくて本当に素晴らしい。

 勿論ココも……。

 そっと触るとそこはもう濡れそぼっていた。いつも私の手で素直に感じてくれているエマが愛おしい。

 我慢ができずに一気に貫いた。エマの中は程よくキツく暖かく天にも昇るほどに気持ちがいい。
 抱きしめながら奥を細かく突くとエマは弱い。そうしていつものようにエマを先にイかそうとしふと目を開けた。

 するとエマの大きな黒い瞳が私の目に飛び込んできた。

 その瞬間ドクリと心臓が音をたてて鳴り、それが下半身に直結してしまった。

「ああっ。くっ!」

 盛大にイってしまった。気持ち良すぎた余韻で大きく息を吐く。

 エマにとうとうイかされてしまったな。こうなればどんな事でも受け止めよう。私の負けだ。あまりにも情けなく逆に笑みまで出てくる。

 気持ちよくしてやれなかった事を誤ると、エマはそんな事ないという風に首を振った。

 先送りにしていてもいい事がないな。腹を括るか。

「エマ、君の勝ちだよ。私にして欲しい事はある?」

 エマは何か考え込んでいるようだった。

「して頂くと言いますか…お伝えしたい事があるのですが、それをお許し頂けますでしょうか」
「それは私にとって良い話かい?」
「分かりません」

 何を言われるのか。もう抱かれたくないと言われるのか。目の前が暗くなるような気がした。
 それでも約束は約束だ。きちんと受け入れなければいけない。

 そう思い、先を促した。

「ラルフ様、ずっとお慕いしておりました。身分不相応なのは理解しております。申し訳ありません」

 涙が零れそうな瞳で見上げられながらそう言われ、縮みかけていた自身が膨らんでくる。
 エマに気付かれないようにわざと冷静に答えてごまかした。

「ありがとう、エマ。私もエマの事が好きだよ」

 けれど、それがいけなかったらしい。

「皆平等にですよね。心得ております。ラルフ様はお優しいですから」

 何を言っているんだ?このは。

「皆って何? だいたいね、君の結婚相手って誰だか知っているのかな?」
「結婚相手、でございますか?」

 エマとの結婚を決めた時から外堀は埋めてある。ロズ兄には条件付きではあるが、結婚の許しは得ていたし、ノックス氏にも報告済みで、手放しにではなかったが喜んでもらえた。

 先ほどのエマの告白で何も憂いが無い状態になった。もしかしてまだ何も知らない?

「あの、まだお相手は。父が決めるとは思うのですが」
「その父上から手紙が来ていなかったかい?」

 再び考え込むとエマは口を開いた。

「そう言えば、部屋の机の上に置いてあったような気がします。立ち聞きしてしまった会話の内容が余りにもショックで、昨日は何も考えられずベッドに入りました」

 立ち聞き?真面目なエマには珍しい事だが、どんな話だ?これは聞き出さなければいけない。

「まぁその話は置いておいて、どんな話を聞いてショックを受けたんだい?」

 エマは誤魔化そうとしていたが、そうはいかない。すると渋々ながら、とても言いにくそうに私がエマ以外の行儀見習いも抱いていると思っていたと、衝撃の発言がエマの口から飛び出した。

 自分の不甲斐なさと、やきもちを焼いてくれた嬉しさと、だけどそんな男だと思われていたのかというショックが入り混じりため息しか出なかった。

 純粋なエマは、私が行儀見習いに差をつけてはいない、と思ったのだろう。

 エマ以外に関しては正解ではあるが、方向が間違っている。

 誤解が解けても身分差を気にするエマ。本当に真面目だ。その事もあって一番にロズ兄の所へ行ったのに。

 そして最初から結婚するつもりだった私には避妊の意志が無かった。順番が逆になっても構わないし、むしろできてしまえば真面目なエマは断れない。

 勿論エマの心が手に入らなければ一生苦しむ事になるが、一方通行でも私が愛している事に変わりはないので、最悪の場合それでもいいかと思っていた。

 エマは自分の中で結論が出たらしく、嬉し涙をボロボロと零した。

 その大きな目から出る涙はとても愛おしく、先ほど色気の無い話をしていたとは思えないくらいエマの中で大きく膨らんだ。

 エマには無理をさせてしまうけど、もう我慢ができなくて一言だけ誤り肉棒を激しく動かした。

 想いが通じ合うとこんなに気持ちいいものだとは知らなかった。自分の人生の中で一番の快感かもしれない。

 またすぐに果て、やっと余裕のできた私は、本日三度目にしてようやくエマをイかせる事ができた。

 気をやってしまったエマの髪の毛に口付ける。エマが起きたら今度こそ「愛している」と必ず伝えよう。



 エマには色んな意味で、最後まで負けっぱなしだ。
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