7 / 24
7.お犬のお友達
大学に来たら友達何人できるかなって。そう淡い期待を抱いていたけれどここでも俺はボッチのようだ。ここは俺が桃太郎の出来損ないと知らない人達ばかりだから、普通な交友関係が築けると思ってたのに。というかより皆がよそよそしくなった気がする。考えられるのはあの俺のブレスレットぶっ飛び事件からだ。
何故だ? 何でた? 俺、なんかした?
やっぱりこのメッシュ桃色がおかしい奴だとか思われたのかな。
「ん~・・・染めるか」
終業のチャイムが鳴り、教室を出ようとした時だった。
「なぁ」
ふいに同い年とは思えないほどの大柄の青年に声をかけられた。髪も灰緑色のカッコいい、瞳の色も茶色に青が混ざっている。ハーフなのかもしれない。
「・・・あんた、桃?」
「~っ!?」
声にならない声とはこういうことだ。
「なっ、ななななななな・・・」
「ふはっ。そんなに驚くことでもねぇだろ。苗字に羽桃李って桃の字がある時点で、そういう世界に通じてる奴は気づくしよ」
ということは。
「えっと・・・鬼?」
「あのよ、おれの名前は犬飼友樹。鬼なら鬼の字があるんだよ」
犬飼。そして桃に通ずる。
「! ワンちゃんか!」
鬼退治で桃太郎と一緒に戦ったサル、トリ、イヌの犬!
「・・・ワンちゃん言うな」
「えー!? マジでか! あっちにはいなかったからさ!」
「? あっち?」
「あぁ、桃源郷・・・」
しまった。口を塞いだけど時すでに遅し。
「・・・なるほどね。だからここにいる桃の奴らとは匂いが違うのか」
「え」
「ほら、おれ鼻には自信があるんだよな。んで、あんたがここに来た時すぐに桃だと分かった。匂いを上手く隠してやがるけど、嗅いだことの無い桃の香りだから気になっちゃってよ」
恐るべし犬の嗅覚!
「だが、どうした? ここ最近おまえのフェロモン漏れまくってるけど」
「もももも漏れまくってる!? うそん!」
ふいに手首を掴まれた。
「しかも鬼くせぇ。このブレスレットもそうだが」
犬飼の犬歯が鋭利に光った。
「喰われたな?」
そこまで分かるのか。
「マーキングが半端ねぇな」
「マーキング?」
「あぁ、ただ喰うだけならここまで匂わねぇ。おまえは違う。染み込ませる匂いだ」
染み込ませる? 確かに、先生に顔射に体中に精液かけられた・・・けど。こうでもしないと匂うからって言ってたし。
「先生には俺の桃の香りが強烈だからって」
その匂いがなんで本人の俺には分からないのかなぁ全く。
「『先生』?」
「あ」
しまったぁっぁぁぁぁぁ!
「へぇ~・・・なるほど」
「だ誰にも言わないでくれ頼む!」
先生が捕まる!
「べっつに、この大学は桃の認可が取れた鬼達しかいねぇ。だから鬼が多いからよ、そうそうバレやしねぇって」
桃の認可。本当に桃の力は大きいのか。
「そんなに鬼がいいのか?」
「あぁ、桃源郷出のおまえは知らねぇかもか。まぁ、鬼は元から各地に生息してたってことだ。何も、この世界の基準が『人間』ってだけで、他にも人間種がいるってことだよ」
まじまじと犬飼を見た。
「おまえのような?」
「そう。おれはシルバーウルフっていう異国の狼も入った一族。昔先代が桃太郎に会ったことがあるらしい」
「! ぅえええっ!?」
やっぱり異国ハーフなのと狼も混じっててしかも桃太郎と出会った先代のご子息。
「改めてよろしこ。友樹と呼んでくれ。桃源郷の桃に会うのは初めてだ」
差し出された手を取って握手を交わした。
「よろしく。俺も董一郎でいいよ」
あぁ、ようやくお友達ができたけど。でも普通のお友達じゃなかった、けどまぁいいよな!
教室を出てとりあえず外へ出た。
「んで?」
「ん?」
「先生って?」
いきなり本題。
「どの鬼?」
「聞き方!」
「おれ言語学専攻だけど、おまえは?」
「ぅえ? えっと・・・」
「羽桃李」
「せっ、先生!?」
なぁんでこんなグットタイミング!?
「今日はもう授業終わりでしょう」
「何把握してんだよ」
「自分のゼミの生徒の履修を把握してもいいでしょう別に」
先生と友樹が視線を重ねた。
「はぁ~・・・なるほど。この鬼が董一郎の『先生』ねぇ」
「? 何このイヌッコロ」
「いいいいいぬっこ」
「! 先生何で分かったんだよ!?」
「あのねぇ、こんなド派手な容姿してたら分かるでしょうが。もはや牽制してるし。生意気な犬は鬼にやられるよ」
「うるせぇよ性豪赤鬼が!」
「万年発情犬に言われたく無いなぁ」
「万年発情してねぇから!」
『おすわりなさい』
「!?」
先生のその一言で友樹はおすわりをした。
「てっめぇ!」
「口の悪いイヌッコロだね」
「え? え? なんで友樹言うこと聞いてんの!?」
「『言霊』だよ。『上位』の鬼しか使えねぇな!?」
「そうだ、最上位の鬼様だ。分かったかな。分を弁えたかな?」
「クッ」
「ちょ、いつまでおすわりさせてんだよ」
「このクソ生意気な目が尊敬の眼差しに変わるまでね」
大人げない。子供だ。大きな子供がいる。
「まっさか、大の男嫌い超女好き百戦錬磨のあんたがついに男に手ぇ出す時が来たとは。いい情報ゲットしたなこれ」
「あ」
ピリッとした空気が頬を伝った。
「グゥッ」
友樹が苦しそうに上を向く。見えない何かがおすわりする友樹の首を締めている!?
「友樹!?」
「はは、図星ぐぇ」
「喋るな馬鹿!」
「このイヌッコロ、どうするか・・・」
先生の目も本気だ。
こんな時どうしたら。
先生の目が金色に、角が生え始めた。
「先生ごめん! フンッ!」
思い切り先生の鳩尾を殴った。
「ガハッ」
友樹のおすわりが解けた。
「へへ! ざまぁ、キャンッ!」
減らず口の友樹の頭もげんこつで殴った。
「おまえらいい加減にしろ!」
そんなに強くしてないのに。大袈裟に先生は小刻みに震え蹲って呻いている。でもおかしなことに、友樹の頭部が地面にめりこんでいる。
「れ?」
ズボッと友樹が顔を出した。
「おまえ! 殺す気かクソ! 普通の人間だったら即死だぞ!?」
「違うっての! 軽くコツンだって!」
友樹の頭にたんこぶが出来ている。
「これが! 軽く!? おまえおかしいぞマジで!」
「いやぁ、うん、おまえで良かった、な」
友樹が俺をまじまじと見やる。
「おいおい髪がピンクになってんぞおまえ」
「え」
「なんだなんだ? 桃源郷の奴らはこんなに力が強ぇのかよ」
「は? いや俺っ・・・んぐ」
右肩を引かれ振り返ったら、唇に温かい感触を受けた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。