桃李し男は鬼愛し

佐橋 竜字

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7.お犬のお友達

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 大学に来たら友達何人できるかなって。そう淡い期待を抱いていたけれどここでも俺はボッチのようだ。ここは俺が桃太郎の出来損ないと知らない人達ばかりだから、普通な交友関係が築けると思ってたのに。というかより皆がよそよそしくなった気がする。考えられるのはあの俺のブレスレットぶっ飛び事件からだ。
 何故だ? 何でた? 俺、なんかした?
 やっぱりこのメッシュ桃色がおかしい奴だとか思われたのかな。
「ん~・・・染めるか」
 終業のチャイムが鳴り、教室を出ようとした時だった。
「なぁ」
 ふいに同い年とは思えないほどの大柄の青年に声をかけられた。髪も灰緑色のカッコいい、瞳の色も茶色に青が混ざっている。ハーフなのかもしれない。
「・・・あんた、桃?」
「~っ!?」
 声にならない声とはこういうことだ。
「なっ、ななななななな・・・」
「ふはっ。そんなに驚くことでもねぇだろ。苗字に羽桃李って桃の字がある時点で、そういう世界に通じてる奴は気づくしよ」
 ということは。
「えっと・・・鬼?」
「あのよ、おれの名前は犬飼友樹ゆうき。鬼なら鬼の字があるんだよ」
 犬飼。そして桃に通ずる。
「! ワンちゃんか!」
 鬼退治で桃太郎と一緒に戦ったサル、トリ、イヌの犬!
「・・・ワンちゃん言うな」
「えー!? マジでか! あっちにはいなかったからさ!」
「? あっち?」
「あぁ、桃源郷・・・」
 しまった。口を塞いだけど時すでに遅しおすし
「・・・なるほどね。だからここにいる桃の奴らとは匂いが違うのか」
「え」
「ほら、おれ鼻には自信があるんだよな。んで、あんたがここに来た時すぐに桃だと分かった。匂いを上手く隠してやがるけど、嗅いだことの無い桃の香りだから気になっちゃってよ」
 恐るべし犬の嗅覚!
「だが、どうした? ここ最近おまえのフェロモン漏れまくってるけど」
「もももも漏れまくってる!? うそん!」
 ふいに手首を掴まれた。
「しかも鬼くせぇ。このブレスレットもそうだが」
 犬飼の犬歯が鋭利に光った。
「喰われたな?」
 そこまで分かるのか。
「マーキングが半端ねぇな」
「マーキング?」
「あぁ、ただ喰うだけならここまで匂わねぇ。おまえは違う。染み込ませる匂いだ」
 染み込ませる? 確かに、先生に顔射に体中に精液かけられた・・・けど。こうでもしないと匂うからって言ってたし。
「先生には俺の桃の香りが強烈だからって」
 その匂いがなんで本人の俺には分からないのかなぁ全く。
「『先生』?」
「あ」
 しまったぁっぁぁぁぁぁ!
「へぇ~・・・なるほど」
「だ誰にも言わないでくれ頼む!」
 先生が捕まる! 
「べっつに、この大学は桃の認可が取れた鬼達しかいねぇ。だから鬼が多いからよ、そうそうバレやしねぇって」
 桃の認可。本当に桃の力は大きいのか。
「そんなに鬼がいいのか?」
「あぁ、桃源郷出のおまえは知らねぇかもか。まぁ、鬼は元から各地に生息してたってことだ。何も、この世界の基準が『人間』ってだけで、他にも人間種がいるってことだよ」  
 まじまじと犬飼を見た。
「おまえのような?」
「そう。おれはシルバーウルフっていう異国の狼も入った一族。昔先代が桃太郎に会ったことがあるらしい」
「! ぅえええっ!?」
 やっぱり異国ハーフなのと狼も混じっててしかも桃太郎と出会った先代のご子息。
「改めてよろしこ。友樹ゆうきと呼んでくれ。桃源郷の桃に会うのは初めてだ」
 差し出された手を取って握手を交わした。
「よろしく。俺も董一郎でいいよ」
 あぁ、ようやくお友達ができたけど。でも普通のお友達じゃなかった、けどまぁいいよな!
 教室を出てとりあえず外へ出た。
「んで?」
「ん?」
「先生って?」
 いきなり本題。
「どの鬼?」
「聞き方!」
「おれ言語学専攻だけど、おまえは?」
「ぅえ? えっと・・・」
「羽桃李」
「せっ、先生!?」
 なぁんでこんなグットタイミング!?
「今日はもう授業終わりでしょう」
「何把握してんだよ」
「自分のゼミの生徒の履修を把握してもいいでしょう別に」
 先生と友樹が視線を重ねた。
「はぁ~・・・なるほど。この鬼が董一郎の『先生』ねぇ」
「? 何このイヌッコロ」
「いいいいいぬっこ」
「! 先生何で分かったんだよ!?」
「あのねぇ、こんなド派手な容姿してたら分かるでしょうが。もはや牽制してるし。生意気な犬は鬼にやられるよ」
「うるせぇよ性豪赤鬼が!」
「万年発情犬に言われたく無いなぁ」
「万年発情してねぇから!」


『おすわりなさい』


「!?」
 先生のその一言で友樹はおすわりをした。
「てっめぇ!」
「口の悪いイヌッコロだね」
「え? え? なんで友樹言うこと聞いてんの!?」
「『言霊』だよ。『上位』の鬼しか使えねぇな!?」
「そうだ、最上位の鬼様だ。分かったかな。分を弁えたかな?」
「クッ」
「ちょ、いつまでおすわりさせてんだよ」
「このクソ生意気な目が尊敬の眼差しに変わるまでね」
 大人げない。子供だ。大きな子供がいる。
「まっさか、大の男嫌い超女好き百戦錬磨のあんたがついに男に手ぇ出す時が来たとは。いい情報ゲットしたなこれ」
「あ」
 ピリッとした空気が頬を伝った。
「グゥッ」 
 友樹が苦しそうに上を向く。見えない何かがおすわりする友樹の首を締めている!?
「友樹!?」
「はは、図星ぐぇ」
「喋るな馬鹿!」
「このイヌッコロ、どうするか・・・」
 先生の目も本気だ。
 こんな時どうしたら。
 先生の目が金色に、角が生え始めた。
「先生ごめん! フンッ!」
 思い切り先生の鳩尾を殴った。
「ガハッ」
 友樹のおすわりが解けた。
「へへ! ざまぁ、キャンッ!」
 減らず口の友樹の頭もげんこつで殴った。
「おまえらいい加減にしろ!」
 そんなに強くしてないのに。大袈裟に先生は小刻みに震え蹲って呻いている。でもおかしなことに、友樹の頭部が地面にめりこんでいる。
「れ?」
 ズボッと友樹が顔を出した。
「おまえ! 殺す気かクソ! 普通の人間だったら即死だぞ!?」
「違うっての! 軽くコツンだって!」
 友樹の頭にたんこぶが出来ている。
「これが! 軽く!? おまえおかしいぞマジで!」
「いやぁ、うん、おまえで良かった、な」
 友樹が俺をまじまじと見やる。
「おいおい髪がピンクになってんぞおまえ」
「え」
「なんだなんだ? 桃源郷の奴らはこんなに力が強ぇのかよ」
「は? いや俺っ・・・んぐ」
 右肩を引かれ振り返ったら、唇に温かい感触を受けた。
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