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15.おまじない
離れを出て、本堂とやらに向かった。結構歩いた。先生といた離れは遠かったらしい。
「・・・・・・」
本堂に到着して客間に向かった。そこでちんまりと頭を垂らす友樹が正座している。
「ゆう・・・」
「すいませんでしたぁぁぁぁ!」
ゴンッと頭を畳に強打しながらの土下座。
「友樹・・・」
「本当にごめん」
「頭、あげろ馬鹿」
額が案の定血だらけ。
「おまえのせいじゃないだろ。むしろ謝るのはこっちだ。おまえは陽菜の被害者なんだ」
「いやごめん! あの声と香りに逆らえない自分が悔しくて」
「このケダモノが」
「先生が言うな!」
ジトっとした視線を友樹から受ける。
「凄いマーキング、されたな」
「え」
何? 凄いって分かるのか。
「当たり前でしょう。またあの女がどこぞの男か女を使って董一郎を襲いかねない。ブレスレットだけでは対処できないからね」
『やぁやぁおまたせしたのぅ』
犬神様が何かを咥えてぽてぽてと歩み寄ってきた。そして可愛らしいお口を床に伏せた。
「あ」
俺の前に先生の紅い秘石と槐の木のブレスレットが置かれた。
「ありがとうございます!」
秘石効果もあって凄く綺麗でお洒落。
『うむ。付けてみるがいい』
「はい」
ブレスレットを腕に通す。
「?」
なにか体が軽くなった、気がした。
『どうじゃ?』
「き、気のせいかもしれないんですけど、体が軽くなったような」
『気の循環をしなくてもいい、と体がホッとしたのかものぅ』
「確かに! あぁ、なんて楽なんだろう」
スンスンと先生が鼻を首筋に付けて来た。
「犬か」
「あの女の香りがようやく消えたな」
「え」
『双子故、桃源郷での繋がりが中々打ち消すことはできんかったが、縁切りの組紐と、鬼倉家の秘石の相乗効果じゃな』
俺は陽菜とずっと繋がっていた、らしい。
「先生」
「なに」
「気になってたんだけど」
「あぁ」
「この先生の家の秘石、どういう効果があるの?」
「呪」
「しゅ?」
「呪いだよ。呪いって言っても『呪を絶つ呪い』だ」
「何それ?」
『呪の文字にはのぅ、「のろう」と「まじなう」の二つの読みがある。前者は災いをかける方、そして後者には災いをかけるのは勿論、逆に「災いを消す」意味もある。おまじないという言葉があるじゃろ。あれには「守護」の意味もあるのじゃ。目には目にを歯にはを、呪いには呪い、ということじゃな』
「な、なるほど・・・」
じゃぁこれは先生の「まじない」か。
「犬神様、お願いしていたもう一つのものは?」
『おぅおぅできるとる。亜子、ここへ』
「はい」
奥から亜子さんが顔を出した。丸いお盆に小さな箱を乗せている。
「董一郎」
「はい?」
「左手」
「? はい」
俺の左手人差し指に、白くて綺麗な、それでいて凄くシンプルな指環を嵌められた。
「これ・・・」
「ブレスレットは鬼倉家。それはオレ自身の・・・おまじないだ」
先生自身のおまじない? いやそれはそれで強そうで嬉しいんだけどさ。指環って。
『新しい秘石を用意するとはさすが桃師鬼倉家じゃのぅ』
「決着付ける前にあの秘石だけじゃ敗北確定だったんで早急に作らせました。その代わり、次の休みには顔を出せと命令を受けましたけどね」
いや、指環はまずいのでは? いや、薬指じゃないし、セーフ、だよな。
「なに、指環見つめて。そんなに気に入ったか?」
「じゃなくてぇ! 指環なんてしたことないから。へ、変な感じ」
「あぁん、あたくしは薬指にしてあげてって言ったんだけどねぇ」
「いやそれはダメでしょまずいです亜子さん!?」
「そうだよ。『薬指』には『女性』がつけるものだからね」
ほら、先生も分かって・・・ん?
「なにその意味深な言い方? 至極当然のことじゃん」
先生は不遜の笑みを向けて来る。
「『鬼流』はこうなんですよ」
「は?」
何鬼流て。
「ああぁぁ~そういうことね♡」
「えっ!? なに?」
『ふぉっふぉっふぉ』
「何この俺だけ分かってない空気!?」
「さぁ、朝食にしましょう。友樹? 手伝いなさい」
「はい、お母様・・・」
しくしくと哀愁漂うまだ引きづってる友樹の背中を見送る。
「董一郎」
「え?」
「次の土曜日、出かけるから」
「え? 何処に」
「オレの家、あ、正確には実家」
「!? へぇあっ!? なんで!?」
「そのブレスレットの秘石は新調品でさ。昨日の今日寄越して貰ったんだけど」
「昨日の今日!? すいません!」
「その代わりに、君を連れてこいって」
「!?」
それはつまり。
「この石に護られるべきふさわしい桃か! それを見定める為に!?」
「・・・・・・ぇあ、あぁ! そうだ!」
『・・・自分で墓穴堀に行ったぞ』
「黙ってください。そうなんだよ董一郎、だからまた泊まりになるけど、いいよね」
「当然です、分かりました。俺もこの石がもう頼りなので。前のより全然なんか楽だし、是非、お礼を・・・って。そうか、まだこれを正式に貰えるとは限らないんだった。粗相のないようにしなきゃだ」
『・・・や、もう加工してこっちに来とる時点で嫁認定しとふがっ』
「? 何か犬神様が話していた気がするけど?」
「気にしない。じゃぁ決まりだね」
「はい」
先生の御実家へ行くことが決まった。
あぁ、緊張する。
このブレスレットは凄く気に入った。今更返せない返したくない。
指環も、案外悪くない?
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