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「ひでえ現場、これで何人目だよ」
「しかもまた同じメッセージだろ。秘密にしておけっていうわりには、毎回派手だな」
現場に非常線が張られたのは、女が死んで一時間程経ったときだった。警視庁捜査一課の刑事、桜井直人も、他の刑事同様の認識を持っていた。
「今回も、例の切り裂きジャックで間違いないですよ」
桜井に気づいたらしい顔馴染みの鑑識が声をかけてきた。
切り裂きジャックとは、一八八八年にイギリスで起きた連続猟奇殺人事件で、未解決の事件として世界的に有名である。警察がなかなか犯人に捕まえられないことから、マスメディアが「現代日本に蘇った切り裂きジャック」と犯人を揶揄したため、この連続殺人事件は世間ではそんな風に呼ばれていた。
「背後から腹を刺された後、頸動脈を切られて絶命。被害者の血液でメッセージを残す。血文字のメッセージの文面は、マスコミには伏せてあるにも関わらず、毎回同じKeep it quiet」
現場には犯人の物と思しき靴痕が残されていたが、大量生産されているスニーカーということしかわからず、サイズはバラバラ。犯行現場は都内を点々としており、被害者の性別や年齢に共通点はなく、実は八方塞がりの状態にある。
「またマスコミが騒ぐな、余計に調子に乗るじゃねえか」
「そう思うなら、早く捕まえてくださいよ」
「ああ。そのための情報、しっかり頼むぜ」
互いに励まし合った後、現場を離れれば、直属の上司である係長の高梨に手招きされた。急いで駆け寄れば、高梨は厳しい顔つきでこう言い放った。
「ここはいいから、すぐ庁舎に戻ってくれ。課長が呼んでいる」
警視庁捜査一課で、強行犯つまり殺人や傷害事件を扱う係に桜井は所属している。係長の名前をとって通称「高梨班」と呼ばれていた。
「課長が? 捜査の真っ最中に? 俺、なんかやりましたっけ?」
捜査一課長直々の呼び出しで、現場を放り出してである。
「いい話ではないらしいぞ。上からの呼び出しだそうだ」
「だったら、臨場する前に言ってくださいよ」
「連絡が来たのは今し方。私は勿論、課長も内容は知らされていない」
仏頂面で恐れられている高梨の顔がより一層強張っていた。
「要するに、もっと上からの呼び出しということですか」
やれやれと桜井は大げさに肩をすくめてみせた。実は、上からの呼び出しは初めてではない。やはり、桜井の経歴がそうさせるのだろうか。
「誰が何を言おうが、おまえは私の部下だ。後で私用の携帯に連絡を入れること、他言無用と言われようが気にするな。必ずだぞ」
自棄になりかけた桜井の気持ちを汲んでのことだろう、高梨の強い言葉が胸に染みた。
「はい。ありがとうございます、係長」
どうせまた厄介事を押しつけるつもりなのだ。さっさと終わらせて、戻ればいいだけ。そんな風に考えて、桜井は気持ちを切り替えることにした。
「しかもまた同じメッセージだろ。秘密にしておけっていうわりには、毎回派手だな」
現場に非常線が張られたのは、女が死んで一時間程経ったときだった。警視庁捜査一課の刑事、桜井直人も、他の刑事同様の認識を持っていた。
「今回も、例の切り裂きジャックで間違いないですよ」
桜井に気づいたらしい顔馴染みの鑑識が声をかけてきた。
切り裂きジャックとは、一八八八年にイギリスで起きた連続猟奇殺人事件で、未解決の事件として世界的に有名である。警察がなかなか犯人に捕まえられないことから、マスメディアが「現代日本に蘇った切り裂きジャック」と犯人を揶揄したため、この連続殺人事件は世間ではそんな風に呼ばれていた。
「背後から腹を刺された後、頸動脈を切られて絶命。被害者の血液でメッセージを残す。血文字のメッセージの文面は、マスコミには伏せてあるにも関わらず、毎回同じKeep it quiet」
現場には犯人の物と思しき靴痕が残されていたが、大量生産されているスニーカーということしかわからず、サイズはバラバラ。犯行現場は都内を点々としており、被害者の性別や年齢に共通点はなく、実は八方塞がりの状態にある。
「またマスコミが騒ぐな、余計に調子に乗るじゃねえか」
「そう思うなら、早く捕まえてくださいよ」
「ああ。そのための情報、しっかり頼むぜ」
互いに励まし合った後、現場を離れれば、直属の上司である係長の高梨に手招きされた。急いで駆け寄れば、高梨は厳しい顔つきでこう言い放った。
「ここはいいから、すぐ庁舎に戻ってくれ。課長が呼んでいる」
警視庁捜査一課で、強行犯つまり殺人や傷害事件を扱う係に桜井は所属している。係長の名前をとって通称「高梨班」と呼ばれていた。
「課長が? 捜査の真っ最中に? 俺、なんかやりましたっけ?」
捜査一課長直々の呼び出しで、現場を放り出してである。
「いい話ではないらしいぞ。上からの呼び出しだそうだ」
「だったら、臨場する前に言ってくださいよ」
「連絡が来たのは今し方。私は勿論、課長も内容は知らされていない」
仏頂面で恐れられている高梨の顔がより一層強張っていた。
「要するに、もっと上からの呼び出しということですか」
やれやれと桜井は大げさに肩をすくめてみせた。実は、上からの呼び出しは初めてではない。やはり、桜井の経歴がそうさせるのだろうか。
「誰が何を言おうが、おまえは私の部下だ。後で私用の携帯に連絡を入れること、他言無用と言われようが気にするな。必ずだぞ」
自棄になりかけた桜井の気持ちを汲んでのことだろう、高梨の強い言葉が胸に染みた。
「はい。ありがとうございます、係長」
どうせまた厄介事を押しつけるつもりなのだ。さっさと終わらせて、戻ればいいだけ。そんな風に考えて、桜井は気持ちを切り替えることにした。
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