追憶のquiet

makikasuga

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その男、天才につき

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 食事を終えて最後のコーヒーが出されると、レイは鞄の中からタブレットを取り出した。
「じゃあ、俺もここから参加ね」
 まるで見ていたかのように、シラサカが現れ、レイの隣に座った。
「少しは遠慮しろ」
「呼んだのはそっちじゃん。マキが色々勘づいてんぞ。いい加減話してやれよ」
「ごちゃごちゃ言うなら帰れ。俺は刑事さんと事件の話をするだけだ」
「世間で話題のジャック・ザ・リッパーか」
 シラサカの方がレイより年上なのに、そんなことは気にせず、むしろ偉そうに話す。年功序列がないのか、それとも警察でいうところの階級は上なのか。それより桜井が気になっているのは、シラサカが室内であってもサングラスを外そうとしないことだ。目を見られたくないということなのか、そこに傷でもあるのだろうか。
 手持ち無沙汰の桜井は、ふたりのやり取りをぼんやりと眺めつつ、とりとめのないことを考えるしかなかった。
「おまえのことだから、犯人の目星はついてんだろ。勿体つけずに教えろよ」
「この連続殺人は特殊な事案だ。警察は全ての犯人を逮捕することは出来ないだろう」
 ふざけるなと反論しようとした桜井だったが、レイの自信有り気な様子を見て、言葉を飲み込んだ。
「全ての犯人? 連続殺人じゃねえってことかよ」
「言ったろ、特殊事案だって。最初の被害者とされているのは、タナカミチコ、二十七歳、女性。腹部を刺されたことによる出血性ショックで死亡。このときは頸動脈を切られてねえし、血文字も無かった」
「手口が違うのに、なんで最初の犠牲者にされてんだ?」
「二人目の被害者と凶器が同じだったから。ここから二人目以降の被害者をあげていくぞ」
 今回の連続殺人の被害者は、レイが上げた順に表すと以下のようになる。

 ①タナカミチコ、二十七歳、女性。自宅マンション近くの路上で遺体発見。
 ②カツラギマモル、二十六歳、男性。閑静な住宅街の公園の滑り台で遺体発見。
 ③フクザワヨシオ、二十六歳、男性。②と同区内のアパートの一室で遺体発見。
 ④ヤマトコウセイ、三十歳、男性。繁華街の路地裏で遺体で発見。
 ⑤イソダジュンジ、二十三歳、男性。勤務先の高層ビルの屋上にて遺体発見。
 ⑥サクラダマリ、三十二歳、女性。歓楽街の路地裏で遺体で発見。

「六人全員同じ凶器なわけ?」
「いや、三人目以降の凶器は全て異なる。手口が同じなだけだ」
 シラサカの疑問に答えたのは桜井ではなく、レイだった。まるで六件分の捜査資料の全てを見てきたかのように。

 まさかこいつ、全部頭に入ってんのかよ。

「ここまで間違ってねえよな、刑事さん」
 桜井の心を読んだのか、レイが不敵な笑みを浮かべて言った。
「昨日の被害者は知らねえ。途中で帰らされたから」
「そうだったな。捜査本部は犯行現場に残された靴痕から犯人を追っているが、これは四件目の犯行から始まったことだ。靴痕から大量生産されたユニセックスのスニーカーと判明したものの、サイズはバラバラ」
「バラバラってことは、別々の犯人なんじゃねえの?」
 再びシラサカが疑問を口にすると、レイが桜井を見た。ここから先は桜井に話させたいらしい。
「俺が話していいのかよ」
「どうぞ。刑事さんしか知らないことだろ」
 知ってるくせにと言いたかったが、こんなところで争っても仕方がないし、シラサカが知らないことからして、この情報は世間には漏れていないようである。
「血文字の内容が同じだったから。内容については報道規制が敷かれていて、容疑者しか知らない極秘事項になってる」
「だったら、犯人は捜査関係者って線もあるよな」
 さすがと言うべきか、シラサカは鋭い指摘をした。
「ヤッサンから裏で公安が動いてるらしいって話は聞いた」
 初耳だった。捜査に関わっているからこそ、桜井達には伏せられていたのだろうか。
「そういや、今の警視総監ってさ、前にゼロの指揮官だったんだよな」
 警察庁警備局警備企画課。国の安全を第一と考える公安警察の中で情報収集を手掛ける部門がある。その部門はゼロと呼ばれていた。
「ゼロの統括は、裏理事官といわれる警察庁のキャリア理事官が担当する。裏理事官となるのは、エース級の警察官僚で、後に警察庁長官や警視総監といった重要なポストに就くことが多い。出世コースに乗っただけだろ」
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