追憶のquiet

makikasuga

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その男、天才につき

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「あんたら、公安とも繋がりがあるのかよ」
 シラサカもレイも草薙が公安にいたことを知っていた。彼らの組織とは、それほど警察と密に繋がっているということなのか。
「公安なんて知らねえし、知りたくもねえ。犯人が誰であれ、この事案は途中から目的が変わってる」
 横道に逸れた話を、レイが元へ戻した。
「目的が変わってる?」
 シラサカの問いかけに、レイは頷き、話を続けた。
「四件目の殺人から、犯人はスニーカーを履いて犯行を行うようになっている。目的が変わったのはおそらくここ」
「三件目までと四件目以降は、違う事件だといいたいのか!?」
 たまらず桜井が口を挟めば、レイはこんなことを言い始めた。
「繋がりは一旦無視して、三件目までと四件目以降の犯行を切り離して考えるんだよ」
 連続殺人を切り離して考えるという発想は、斬新なものだった。
「二人目と三人目の被害者は、同じ会社に勤めるサラリーマンだった。警察の調べによれば、部署が異なっていて面識はないとされているが、六件の事件の中で、この二人だけが勤務先と年齢が同じで、しかも同区内で殺害されたという共通点がある。本当に面識がないのか、カツラギとフクザワの生前の情報を全て洗い直した。そしたら、出てきやがったんだよ、これが」
 そう言うと、レイはタブレットを桜井に手渡した。
 画面には、二人目の被害者カツラギマモルと三人目の被害者フクザワヨシオの二人が映り込んだ写真がある。
「これ、どこで見つけた!?」
「ある場所の防犯カメラの映像だ。面識がないとされた被害者二人は、本当は面識があったんだよ」
 近くの防犯カメラの映像は全て確認した。殺害現場や勤務先、交友関係も調べた。その上で二人に面識はないと判断したというのに。

 こいつ、マジですげえ。

 桜井の背中がぞくりと震えた。恐怖ではなく歓喜によるものだった。
「どうだ、違法捜査に協力する気になったか、刑事さん?」
 レイなら連続殺人犯にたどり着ける。いや、もしかしたら既にたどり着いているのかもしれない。
「犯人を知りたいなら、俺達と共に来い」
 彼らと行動を共にすれば、元には戻れないし、刑事でもいられなくなる。だが彼らの手を借りなければ、この事件は終焉を迎えることは出来ないだろう。
「わかった。やるよ」
 昨日柳の言葉が蘇った。

(正義なんてものは、どこにもないと知ったからです)

 桜井も柳も、むしろ刑事であったから堕ちた。犯人捕まえたいという欲求に抗えなかったから。
「交渉成立だな。今からあんたは俺達の仲間だ。その間は同等に扱ってやる。シラサカ、サングラスを外せ」
 同等といいながらも、レイの上から目線は全く変わらない。彼らの組織の中で上に立つ人間だということなのか。
「始末屋のリーダー、シラサカだ」
 ようやく素顔を晒したシラサカ、彼は青い目をしていた。ハーフかクォーターか、目鼻立ちがくっきりとした顔立ちの男だった。何より圧倒されたのは、青い両目から発せられる強い殺気だった。
「レイは情報屋のリーダーだから。態度デカいのはそのせいだけじゃないけどね」
「余計な事言うな。じゃあ、続きの説明な」
「その前に、刑事さんのことはなんて呼べばいいんだ?」
「名前なんかどうでもいいだろ」
「レイが言ったんだろ、仲間だって。だったら、刑事さんって呼ぶのは失礼だろ」
 呼び方なんてなんでもいいし、彼らが言うように「刑事さん」呼びで問題はないのだが。
「なら、苗字でいいんじゃねえ。桜井、話の続き、始めんぞ」

 むしろ、刑事さん呼びの方がよかったんじゃねえの。

 これでは警察と同じではないかと、内心溜息をつく桜井であった。
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