追憶のquiet

makikasuga

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真実の先にあるもの

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「情が入れば関係が壊れる。何がきっかけかは知らないが、パートナーを殺されれば、相手に殺意を覚えたっておかしくない」
 桜井は大きく息をついた後、椅子に座った。そして少しばかり考えて、頭を掻いた後、こう言い放った。
「ところで、あんたのことはなんて呼べばいいんだ?」
「昨日自己紹介しただろ」
「名前は聞いたけど、苗字は知らねえし。そんな親しくもねえのに、名前で呼ぶのもどうかと思って」
 本当に変わっている。今まで通りのあんた呼びでも、レイは全く気にしないのだが。
「言ってなかったな。俺もマキも鬼籍に入っている。名前は好き勝手に名乗っているだけで、個人を識別する記号みたいなもんだ。シラサカは日本人じゃねえし、そもそも戸籍がない」
 鬼籍に入るとは死を意味する言葉である。そこまで説明せずとも、桜井は理解したらしい。
「何かあっても、誰にも気づいてもらえないってことかよ。親兄弟はいないのか?」
「いたら、こんなことやってるわけがない」
 ストレートに返してやれば、桜井が黙った。何を言われたところで今更だというのに、気を遣われると対応に困る。

 あんなに俺らのこと嫌がってたくせに、変な奴。

「話の続きに戻るけど、二人目まではそうだとして、三人目の被害者であるフクザワを殺したのは誰なんだ?」
「その前に、三人目の被害者のフクザワヨシオだけ、他の被害者と異なっているところがあるんだが、わかるか?」
 レイはタブレットを操作し、六名の被害者の名前と年齢、遺体発見場所を記したページを桜井に見せた。

 ①タナカミチコ、二十七歳、女性。自宅マンション近くの路上で遺体発見。
 ②カツラギマモル、二十六歳、男性。閑静な住宅街の公園の滑り台で遺体発見。
 ③フクザワヨシオ、二十六歳、男性。②と同区内のアパートの一室で遺体発見。
 ④ヤマトコウセイ、三十歳、男性。繁華街の路地裏で遺体で発見。
 ⑤イソダジュンジ、二十三歳、男性。勤務先の高層ビルの屋上にて遺体発見。
 ⑥サクラダマリ、三十二歳、女性。歓楽街の路地裏で遺体で発見。

「フクザワだけ、室内で遺体が見つかってる!」
 現職の、しかも捜査一課の刑事だけあって、桜井はすぐ違和感に気づいてくれた。
「そうだ。他の五名は外で遺体発見なのに、フクザワだけは部屋の中。それも自宅ではなく、自宅から程近い場所にある空きアパートの一室」
「なんでコイツだけ室内なんだ? しかも自宅じゃなく空きアパートの一室って」
 桜井はそう言うと、腕組みをして考え込んだ。
「フクザワの自宅の捜索は、勿論してるよな?」
「ああ。被疑者特定のために、私物の押収とか色々」
「鑑識は入らなかったのか?」
「いや、刑事だけだ。鑑識は遺体発見現場しか入っていない」
 やっぱりなとレイは呟き、隣で眠っているシラサカの頭を叩いた。
「出番だ、起きろ。車をホテルの正面玄関に回せ」
「やっと終わりかよ。はいはい、家まで送ればいいんだろ」
 シラサカは大欠伸をした後、立ち上がり、凝り固まった体をほぐしていく。
「終わってねえよ、話はまだ途中だ」
 そう言うと、レイはポケットからスマートフォンを取り出し、電話をかける。
「マキ、家にいるか? だったら、今すぐ俺の部屋に行け。机の引き出しの一番下を開けろ。今からシラサカの車で帰るから、それ持って一緒に来るか、無理ならシラサカに渡して」
『行くに決まってんじゃん、レイのバカ!』
 離れていてもわかるほどの大声だった。どうやら留守番にさせられたことを根に持っているらしい。
「あんまりマキをいじめんなよ」
 電話を切ってすぐ、シラサカが声をかけてきた。
「そんなつもりはねえよ」
「つーかさ、俺が来る意味あった? 飯食って寝ただけなんだけど」
 言われて見ればその通りだが、事件の話はまだ終わっていない。
「てっきり話があるものだと思っていたが、考えすぎだったかな」
 シラサカの指摘は間違っていない。この後マキが合流することを考えると、話せるのはこのタイミングしかないだろう。
「詳しいことは後で話すが、先に資料をメールで送っておく」
 レイはスマートフォンを操作し、予め用意してあったファイルをメールに添付して送信する。一連の様子を桜井は不思議そうな顔で眺めていた。
「そんなにマキに知られたくないのかよ」
「説明が面倒なだけ。おまえは全部知ってるから」
 シラサカはジャケットのポケットからスマートフォンを取り出し、操作する。見る見るうちに顔が強張った。
「おい、これって」
「忘れてないよな、八年前のこと。だからおまえを任せるんだよ」
 ここまでする意味があるのか、正直まだわからない。
 けれど、どんな偶然であれ、出会ってしまったのだから、このまま見過ごすことなんて出来やしない。
「そうだな、これは俺がやるべき仕事かもな。オーケー。おまえらを送り届けたら、家に帰るわ。連続殺人なんて興味ねえしな」
 連続殺人を興味がないと言い切ったシラサカに、桜井は面食らったようだった。
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