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真実の先にあるもの
④
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駅から徒歩十分の場所にある十二階建てのマンション。三人目の被害者、フクザワヨシオの自宅は一階の角部屋だった。間取りは1LDK。リビングダイニングキッチンが八畳以上プラス一部屋という一人暮らしにしてはかなり広めの部屋である。二人目の被害者のカツラギもだが、東証一部上場企業の社員だった。
「なかなか綺麗にしてるじゃん」
マキが室内を見渡し、室内を物色する。
「素手で触るなよ。万一のことがあるから」
部屋に入る前にレイは白い手袋をした。難なく鍵を開け、当たり前のように電気を点けた。
「なんで鍵を開けられた? 電気もガスも水道も止めてるはずだぞ」
「企業秘密。おそらく寝室だな。マキ、例のもの」
「はーい」
マキはレイに液体の入ったスプレーを手渡した。扉を開け、寝室と思しき場所に足を踏み入れる。室内はベッドとクローゼットがあるだけで簡素だった。レイは整えられたベッドの上に液体をかけていく。
「おい、まさか、これって」
「ルミノール。窒素含有複素環式化合物の一種、科学捜査や化学の演示実験に使われる試薬だ。過酸化水素とともに用いると、血液の存在を強い発光で知らせる」
「それをなぜここに? フクザワの遺体は、この近くの空きアパート一室で発見されたんだぞ」
「マキ、電気を消せ」
桜井の言葉を無視し、レイはマキに指示を出した。照明が消えた途端、目の前に信じられない光景が浮かび上がる。
「ベッドのちょうど真ん中辺りだな、青白く光っているのは」
「フクザワの殺害現場は、ここだったのかよ!?」
レイがルミノールを吹きかけるまで全くわからなかった。そういった痕跡は一切残されていなかったから。
「警察の捜査は間違っていない。遺体発見現場が殺害場所だし、フクザワが殺されたことも事実だ」
「なら、どうしてここに血痕があるんだよ」
「女を殺され、その復讐にカツラギを殺した。秘密は決して明かさないことを示した上で、フクザワは自らの死で決着をつけようとした」
レイが口にした衝撃の真実に、桜井は言葉を失った。
「この事件はフクザワの自殺で終わりを告げるはずだった。それを別の誰かが殺人に変えたんだよ」
「なかなか綺麗にしてるじゃん」
マキが室内を見渡し、室内を物色する。
「素手で触るなよ。万一のことがあるから」
部屋に入る前にレイは白い手袋をした。難なく鍵を開け、当たり前のように電気を点けた。
「なんで鍵を開けられた? 電気もガスも水道も止めてるはずだぞ」
「企業秘密。おそらく寝室だな。マキ、例のもの」
「はーい」
マキはレイに液体の入ったスプレーを手渡した。扉を開け、寝室と思しき場所に足を踏み入れる。室内はベッドとクローゼットがあるだけで簡素だった。レイは整えられたベッドの上に液体をかけていく。
「おい、まさか、これって」
「ルミノール。窒素含有複素環式化合物の一種、科学捜査や化学の演示実験に使われる試薬だ。過酸化水素とともに用いると、血液の存在を強い発光で知らせる」
「それをなぜここに? フクザワの遺体は、この近くの空きアパート一室で発見されたんだぞ」
「マキ、電気を消せ」
桜井の言葉を無視し、レイはマキに指示を出した。照明が消えた途端、目の前に信じられない光景が浮かび上がる。
「ベッドのちょうど真ん中辺りだな、青白く光っているのは」
「フクザワの殺害現場は、ここだったのかよ!?」
レイがルミノールを吹きかけるまで全くわからなかった。そういった痕跡は一切残されていなかったから。
「警察の捜査は間違っていない。遺体発見現場が殺害場所だし、フクザワが殺されたことも事実だ」
「なら、どうしてここに血痕があるんだよ」
「女を殺され、その復讐にカツラギを殺した。秘密は決して明かさないことを示した上で、フクザワは自らの死で決着をつけようとした」
レイが口にした衝撃の真実に、桜井は言葉を失った。
「この事件はフクザワの自殺で終わりを告げるはずだった。それを別の誰かが殺人に変えたんだよ」
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