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ゼロとJTR
①
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連続殺人事件の三人目の被害者フクザワヨシオ。彼は二人目の被害者であるカツラギマモルを殺した犯人で、カツラギは最初の被害者であるタナカミチコを殺した犯人だという。
「フクザワは自宅の寝室で死のうとしたってことかよ」
フクザワは自宅近くにある空きアパートの一室で発見され、既に死亡していた。直接の死因は頸動脈を切られたことによる出血性ショックだった。
「自室で腹を刺して、空きアパートの一室に移動するのは不自然だろ。ルミノール反応からして、それなりに出血を伴っているんだ。この状態で立ち上がれば、どこかに血痕が残るはず」
レイは床にルミノールが入った液体を噴射したが、青白く光ることは無かった。
「だが、床には血痕がない。だとすれば、別の誰かがここへ来て、傷を負ったフクザワを運んだということになる」
「だったら、マンションの防犯カメラの映像を調べれば」
「記録を調べたが、事件当日にここを出入りした者はいない」
調査済であったことに驚きつつも、レイなら納得である。桜井はすぐ視点を切り替えた。
「このマンションは裏口もあったよな。ここは一階だし、こっそり忍び込むことも出来るんじゃないのか」
「裏口にも防犯カメラはある。それも含めて調べたが、フクザワ本人の出入りも確認出来ない状態にある」
「本人の出入り?」
「事件当日、フクザワが会社で仕事をしていたことは、警察も確認しているだろう」
レイが言うように、事件当日、フクザワが普段通り出勤して仕事をこなしていたことは同僚や上司が証言している。
「出勤していることは間違いないのに、マンションを出た映像が残されていない」
表であれ、裏であれ、外に出たというのならその映像が残っているはず。これは明らかに不自然である。
「マキ、電気をつけてくれ」
「了解」
照明がつくと、青白い光は消え、何もない部屋へと変わる。レイの指示を守って、マキは照明のスイッチをハンカチで押さえていた。
「この部屋にいる間、フクザワは生きていた。病院に運んでいれば、命は助かっていただろう。だがフクザワは死んだ。ここではなく、別の場所で」
背中がぞくりと震えた。今の言葉で第三者の介入が真実味を帯びてきたから。
「誰かがここへ来て、フクザワを連れて出て行った。その証拠となる映像は、削除されているってことかよ」
「警察は防犯カメラの映像まで調べていなかった。まあ当然だよな。フクザワの殺害現場はここじゃねえし、ましてや自殺しようとしていたなんて思ってなかったからな」
カツラギとフクザワに接点がないと判断したことが、時期尚早だったのだ。きちんと調べていれば、こんなことにならなかったのに。
俺達は、見当違いの捜査をしていたってことかよ。
これでは犯人を捕まえるどころか、エスカレートさせるだけ。桜井は唇を噛みしめるしかなかった。
「だったら、フクザワを殺したのは誰なんだ?」
犯行を止められなかったのなら、せめて犯人だけでも捕まえたい。こうなった以上、レイを頼るしかないだろう。
「そろそろ気づいてもいい頃だと思うが、この事件の法則性に」
「法則性?」
レイは憐れむように桜井を見つめた後、大きな溜息をついた。
「一人目を殺したのは二人目。二人目を殺したのは三人目。だとしたら、三人目を殺したのは?」
「まさか四人目の被害者だというのか!?」
ニヤリと笑うレイ、その通りだと言わんばかりに。
「警察がカツラギとフクザワの関係を見抜いていれば、事件はここまで発展しなかった。先に気づいた第三者がそれを利用した。四人目の被害者のヤマトコウセイは、その第三者、つまり真犯人と接点があったはず」
レイの考えを正しいと仮定すれば、二人目以降の犯人は同時に被害者でもある。
「まるでゲームじゃねえか」
「そうさ。犯人を見つけた者は、次の犯人になるべくそいつを殺す。自分だけは捕まらない、捕まえられないだろうと思い込んで」
「だったら、六人目の被害者を殺した犯人も狙われてるってことだろ。早くそいつを見つけねえと」
桜井の言葉を遮るように、マキがジャケットのポケットから拳銃を取り出した。
「レイ、お客さんだよ」
纏う空気が変わった。それまでの可愛らしさはなりを潜め、冷酷な殺し屋の顔へと変わる。
「真犯人とご対面か、厄介なお客さんか。どうせ後者だろうけど」
そう言うと、レイは部屋を出て玄関へと向かっていく。
「待ってよ、僕が先に」
慌てて後を追うマキ。わからないなりに危険を感じた桜井も後を追えば、レイは玄関の施錠に手をかけようとしていた。
「そいつを仕舞え。見られると厄介だ」
「仕舞ったら、レイがやられるじゃん」
「本当にバラすつもりなら、こんな方法は取らない」
外に聞こえないように、小声でやりとりする二人。
ここへ来て桜井にもわかった、外に誰かがいることが。その人物が強烈な殺気を放っていることも。
「さあ、ご対面といこうか」
そう言うと、レイは嬉しげに玄関を開け放った。ほとんど同時にこんな声がかかる。
「フクザワは自宅の寝室で死のうとしたってことかよ」
フクザワは自宅近くにある空きアパートの一室で発見され、既に死亡していた。直接の死因は頸動脈を切られたことによる出血性ショックだった。
「自室で腹を刺して、空きアパートの一室に移動するのは不自然だろ。ルミノール反応からして、それなりに出血を伴っているんだ。この状態で立ち上がれば、どこかに血痕が残るはず」
レイは床にルミノールが入った液体を噴射したが、青白く光ることは無かった。
「だが、床には血痕がない。だとすれば、別の誰かがここへ来て、傷を負ったフクザワを運んだということになる」
「だったら、マンションの防犯カメラの映像を調べれば」
「記録を調べたが、事件当日にここを出入りした者はいない」
調査済であったことに驚きつつも、レイなら納得である。桜井はすぐ視点を切り替えた。
「このマンションは裏口もあったよな。ここは一階だし、こっそり忍び込むことも出来るんじゃないのか」
「裏口にも防犯カメラはある。それも含めて調べたが、フクザワ本人の出入りも確認出来ない状態にある」
「本人の出入り?」
「事件当日、フクザワが会社で仕事をしていたことは、警察も確認しているだろう」
レイが言うように、事件当日、フクザワが普段通り出勤して仕事をこなしていたことは同僚や上司が証言している。
「出勤していることは間違いないのに、マンションを出た映像が残されていない」
表であれ、裏であれ、外に出たというのならその映像が残っているはず。これは明らかに不自然である。
「マキ、電気をつけてくれ」
「了解」
照明がつくと、青白い光は消え、何もない部屋へと変わる。レイの指示を守って、マキは照明のスイッチをハンカチで押さえていた。
「この部屋にいる間、フクザワは生きていた。病院に運んでいれば、命は助かっていただろう。だがフクザワは死んだ。ここではなく、別の場所で」
背中がぞくりと震えた。今の言葉で第三者の介入が真実味を帯びてきたから。
「誰かがここへ来て、フクザワを連れて出て行った。その証拠となる映像は、削除されているってことかよ」
「警察は防犯カメラの映像まで調べていなかった。まあ当然だよな。フクザワの殺害現場はここじゃねえし、ましてや自殺しようとしていたなんて思ってなかったからな」
カツラギとフクザワに接点がないと判断したことが、時期尚早だったのだ。きちんと調べていれば、こんなことにならなかったのに。
俺達は、見当違いの捜査をしていたってことかよ。
これでは犯人を捕まえるどころか、エスカレートさせるだけ。桜井は唇を噛みしめるしかなかった。
「だったら、フクザワを殺したのは誰なんだ?」
犯行を止められなかったのなら、せめて犯人だけでも捕まえたい。こうなった以上、レイを頼るしかないだろう。
「そろそろ気づいてもいい頃だと思うが、この事件の法則性に」
「法則性?」
レイは憐れむように桜井を見つめた後、大きな溜息をついた。
「一人目を殺したのは二人目。二人目を殺したのは三人目。だとしたら、三人目を殺したのは?」
「まさか四人目の被害者だというのか!?」
ニヤリと笑うレイ、その通りだと言わんばかりに。
「警察がカツラギとフクザワの関係を見抜いていれば、事件はここまで発展しなかった。先に気づいた第三者がそれを利用した。四人目の被害者のヤマトコウセイは、その第三者、つまり真犯人と接点があったはず」
レイの考えを正しいと仮定すれば、二人目以降の犯人は同時に被害者でもある。
「まるでゲームじゃねえか」
「そうさ。犯人を見つけた者は、次の犯人になるべくそいつを殺す。自分だけは捕まらない、捕まえられないだろうと思い込んで」
「だったら、六人目の被害者を殺した犯人も狙われてるってことだろ。早くそいつを見つけねえと」
桜井の言葉を遮るように、マキがジャケットのポケットから拳銃を取り出した。
「レイ、お客さんだよ」
纏う空気が変わった。それまでの可愛らしさはなりを潜め、冷酷な殺し屋の顔へと変わる。
「真犯人とご対面か、厄介なお客さんか。どうせ後者だろうけど」
そう言うと、レイは部屋を出て玄関へと向かっていく。
「待ってよ、僕が先に」
慌てて後を追うマキ。わからないなりに危険を感じた桜井も後を追えば、レイは玄関の施錠に手をかけようとしていた。
「そいつを仕舞え。見られると厄介だ」
「仕舞ったら、レイがやられるじゃん」
「本当にバラすつもりなら、こんな方法は取らない」
外に聞こえないように、小声でやりとりする二人。
ここへ来て桜井にもわかった、外に誰かがいることが。その人物が強烈な殺気を放っていることも。
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そう言うと、レイは嬉しげに玄関を開け放った。ほとんど同時にこんな声がかかる。
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