追憶のquiet

makikasuga

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ゼロとJTR

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「もっとはっきり言ってやろうか。あんたは大事な人間を人質に取られている」
 図星だったのだろう。蓮見隼人は被っていた帽子を脱ぎ捨て、素顔を露わにした。
「おまえ達の手は借りない。俺ひとりでやり遂げてみせる」
 そう言うと、鋭い目でレイを睨みつけてきた。国を護ることを使命とするせいか、自分達が正義だと言わんばかりの態度である。
「俺をJTRと間違えたくせに」
「おまえこそ、JTRを知らなかったくせに」
 レイと間違えるくらいだから、蓮見も真犯人のことはよく知らないようである。人質と思われる桜のことも、拘束されるといった実害には至っていないのだろう。

 だとすれば、まだ揺さぶっている状態か。

 その後、蓮見は桜井に視線をやると、こんな言葉を投げかけた。
「余計な事はしないでくれと、草薙さんに伝えろ」
「あの、でも、俺は」
「君は捜査一課の刑事だろう、桜井巡査部長。それともまた、我々の監視と聴取を受けたいのか」
 どうやら蓮見は桜井を知っているようだった。何も言い返すことが出来ず、桜井は俯いた。監視と聴取という言葉に、傷ついているようだった。
「次に会ったら敵として認識する。ハナムラとはいえ、容赦はしない」
 公安内部にもハナムラの情報は伝わっているらしい。レイやマキだけではなく、桜井にも敵意をむき出しにして、蓮見は去っていった。
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