追憶のquiet

makikasuga

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破滅の幕開け

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「おい、起きろ、出掛けんぞ」
 レイの厳しい声で、桜井は目を覚ました。
「刑事のわりに寝起き悪いよね、ナオは」
 いつ起きたのか、マキはレイの隣で笑っていた。昨夜の事など何もなかったかのように。
「自宅へ帰してやる。シャワーを浴びて着替えてこい」
「帰って、いいのか?」
「俺が送ってやる。早く来い」
 有無を言わせずレイに連れられ、桜井は黒の国産高級車に乗り込んだ。
「運転出来るんだな」
「勿論だ。昨夜はマキにつきあわされて、大変だったろ」
「まあな。おまえのことが大好きだと耳にタコが出来るほど聞かされたよ」
「マキが本当に好きなのは恋人のハルであって、俺じゃない」
 マキのことは冗談半分に言ったつもりだったのに、真面目に返されるとは思わなかった。
「いや、そういう好きとは違うと思うんだが……」
「ごちゃごちゃうるせえよ」
 レイにぴしゃりと言い放たれ、桜井はムッとした。
 話を振ってきたのはレイだし、マキがレイを大好きだと言って泣いたのは本当のことなのだ。

 揃いも揃って、勝手な奴らだよな。

 心で悪態をついた後、桜井は笑った。 
「何がおかしい」
「いや、似てるなと思って、おまえとマキ」
「寝過ぎて、頭がおかしくなったのか?」
「外見じゃなくて中身だよ。自分のことを棚に上げるところとか、本当そっくり」
「棚に上げているわけじゃない。本当のことを言ったまでだ」
「はいはい、そういうことにしておくよ」
 法に触れる仕事をしていても、彼らの心は荒みきっていない。コウも、食事の席で見たシラサカという男もだ。表の世界にいる桜井の方が柵に捕らわれ、荒んでいるのかもしれない。

 そうこうするうちに、自宅マンションが見える場所まで戻ってきた。レイはマンションから離れた場所に車を停めたが、降りようとしなかった。
「四十五分、時間をやる。事件のことは話していいが、俺達のことは一切話すな」
 話すも何も、桜井は一人暮らしでペットもいない。
「どういうことだよ」
「行けばわかる。早く降りろ」
 どうやらレイはここで待機するらしい。それならそう言えばいいのにと思いながら、桜井は車を降りた。
 そのまま自宅マンションへ向かって歩き出すと、ポケットに入れていたスマートフォンが鳴った。画面を見れば昨夜と同じ登録外の番号。つまり、発信元はレイである。今度はなんだと思いながら、耳に当てれば一方的にこんな言葉を放たれた。
『昨日も言ったように、おまえの携帯は俺が管理している。何を話したか、全てわかるようになっている』
 前方に視線を向けて、桜井は理解した。レイがなぜマンション前に車を停めなかったのか、わざわざ電話で念押ししたのかを。
「事件のこと、話していいのか?」
『依頼主からの要望だ。JTRの逮捕だけは捜一にやらせろとしつこく言われているからな。あれだけヒントをやれば、無能な連中でも辿り着けるだろう』
「俺に逮捕させるって話じゃなかったのかよ」
 自宅マンションの玄関に見知った人物が佇んでいた。歩を進めるごとに、その人物が放つ凛としたオーラが露わになっていく。
『JTRの逮捕後、おまえはマキにバラされる。その前に情報の共有をするだけだ。口の固い人物を寄越すと聞いているが、余計な事は話すなよ』
 そこで通話は切れたが、電話が切れたわけではない。表向きは通話終了にして、桜井はスマートフォンをポケットを突っ込み、直属の上司である高梨と対峙した。
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