追憶のquiet

makikasuga

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復活のコールサイン

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 レイの言葉を合図に、マキが扉を開けて突入する。続いて桜井が中へ入り、U字ロックを表に出し、扉を閉じないようにすれば、何発かの銃声が響いた。マキの身を案じつつ、桜井は蓮見の拳銃を構え、更に奥へと進んでいく。
「まあ、予想はしてたけど」
 冷静なマキの声で、無事であるとわかり安堵する。
 向こう側に二人の男が倒れていた。身動きひとつしないことからして、既に絶命しているのだろう。たったひとりで瞬時に二人を倒す。桜井の想像以上に、マキは有能な殺し屋なのだろう。
「思ってた以上に、あんたクズだよね」
「それはこっちの台詞だ。ことごとく邪魔しやがって!」
 蓮見桜は額から少量の血を流し、意識を失っていた。レイのパソコンから聞こえてきた悲鳴からして、イソダが突き飛ばしたのだろう。意識を失う位だから、頭を強く打ったのかもしれない。早く病院に連れて行った方がいいのだが、イソダはそんな状態の彼女を抱え込み、胸に銃口を突きつけていた。
「彼女を離せ」
「無能な人間が俺に命令するな。おい、いつまで寝ている、起きろ!」
 怪我をしているというのに、イソダは桜を無理矢理起こそうと揺り動かす。
「やめろ!?」
「会いたがっていた男が、もうすぐここに来る。早く目を覚ませ」
 イソダは桜の目を覚まさせ、レイとマキの存在を見せつけようとしている。彼らの手で彼女を殺させるために。
「聞こえなかったのか、やめろと言っている!?」
「安岡零に心当たりがあるといえば、喜んでついて来たもんな。さあ、目を覚ますんだ!」
 そう言って、イソダは桜の頬を叩いた。その衝撃で彼女は呻き声を漏らし、覚醒へと向かっていく。

「もう無理、我慢出来ない。こいつバラす」
 マキがイソダに銃口を向けた。
「手を出すな、マキ!」
 ここでマキがイソダを殺せば、桜に見られる可能性が高い。マキの姿を見られるだけじゃない。桜が目を覚まして、そこに死体があったら、彼女は大きなショックを受けるはず。
「こんな奴を生かすのが正義なの? 僕には理解出来ない」
「そうじゃない。あの子に死体を見せないでやってほしいんだよ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
 マキは頭に血が上ってしまっているし、殺しに慣れているから、それを見てどう思うかなんてことは考えないだろう。
 だが桜井は知っている。元恋人が目の前で拳銃自殺をしたときのこと、あのときの彼女の顔が脳裏に焼きついて、今も離れないことを。

 今ここで、俺がやるべきことはなんだ?

 レイの違法捜査に加わったものの、桜井は何も出来なかった。その上、命まで救ってもらった。

 あるはずだ、考えろ、刑事である俺にしか出来ないことを。

(犯人を捕まえろ。ハナムラにJTRを渡すな。生きて逮捕しろ)

 はっとした。蘇ってきたのは、さっき聞いたばかりの草薙の言葉だった。
「武器は人を助けるために持つもの。少なくとも俺は、そう思っている」
 桜井はマキの前に立ちはだかり、イソダに銃口を向けた。
「へー、刑事さんが俺を殺すの? やっぱイカレてるよ、あんた」

 俺は、S1S mpdの誇りにかけて、彼女を助けると決めたんだ!

 引き金を弾く直前、桜井は銃口を天井に向け、発砲した。イソダはマキと違って殺しには慣れていない。銃声を聞けば、そこへ意識が向けられるはずである。
 桜井の予想は的中した。その隙をついて、今にも覚醒しそうな桜を庇うようにしてイソダから引き剥がせば、ほぼ同時に銃声がして、背後から強烈な痛みに襲われた。
「ナオ……!?」
 マキの言葉が聞こえてすぐ、近くで銃声がした。

 やめろ、マキ、彼女に血を見せないでくれ。

 声が出ない。言葉にならない。なぜか酷く目が回る。息をすることが苦しくて、とても寒い。
「あなたは……誰?」
 耳元で消え入りそうな声が聞こえた。
「私を、助けてくれたの?」
「もう、大丈夫、俺は、刑事、だから……」
「本当に、刑事さん? ごめんなさい、何も見えないの」
 この様子では、一刻も早く病院に運んだ方が良さそうだ。
「すぐ、病院に運んであげるからね。君のお父さんと、約束したんだ。絶対、助けるって」
「お父さん、どこ、どこにいるの?」
「近くにいるよ、すぐに会えるから。だから今はじっとして……」
 また声が出なくなった。体が重く、やけに眠くて、寒くてたまらないのに汗が滴り落ちてくる。やがて、桜と同じように視界が暗闇で閉ざされた。

 なんだ、ここ、暗くて、何も見えない。もしかして俺、撃たれたのか?

 そう思った瞬間、桜井の意識はぷつりと途切れた。
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