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第10話 素直な王路が可愛すぎる件
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結局あの日は、王路のかーちゃんと連絡が取れて、仕事を早退して病院まで迎えに来てくれた。――ちなみに、めっちゃ美人だった! そりゃ、あのかーちゃんの遺伝子受け継いだら、王路がイケメンなのは仕方がない!
オレは養護教諭のおばちゃん先生と一緒に王路を見送ったあと、おばちゃん先生と別れて、退勤してきたかーちゃんの車に乗って帰宅した。
――そして、翌日の早朝。
オレは朝の自主練を休むつもりで、朝6時半というレアな時間に王路のマンションに見舞いに来ていた。――だって、放課後は部活があるし、部活帰りだと遅い時間になっちまうからな。
「一応、王路に◯INEして確認したら『OK』って返ってきたから……まあ、大丈夫だろ!」
何度か遊びに来たことがあるのに、『彼氏』の見舞いに来たって思うと、なんか知らんが緊張する。
オレはマンションのエントランスに入って、機械に王路んちの部屋番号を入力した。するとしばらくして、はい、と王路の声が聞こえてきた。
「あっ、もしもし。オレです、姫川です」
『プッ。もしもし、ってなんだよそれ。しかも敬語になってるし』
「うっ、うるせーな! 慣れてねーんだよ、こういうの!」
『クックッ、あーおもれぇー。あ、今、オートロック解除したから。早く上がってこいよ。じゃな』
笑うだけ笑った王路に、一方的に通話を切られたオレは、「相手は病人だ」と思うことで怒りを抑えた。――そうだ。むしろ、あれだけ喋れるようになってることを喜んだ方がいい。
オレはエントランスを抜けてエレベーター前に立つと、エレベーターが降りてくるのを待つ間に、少しだけ昨日の王路の姿を思い出す。
両目を閉じて、弱っていた王路を思い浮かべ、むむむっと脳にインプットする。
「――よし! アイツは病人! オレはそのお見舞い! 喧嘩しないっ!」
自分にしっかり言い聞かせて、いつの間にか到着していたエレベーターに急いで乗り込んだ。
「……エレベーターに乗ると、なんであんなに気まずくて、無言になっちまうんだろう。あと、なんでかビミョーに怖い」
とかなんとか、どーでも良いことを一人で喋っていたら、目的の階にエレベーターが止まった。オレはスポーツバッグを肩にかけ直し、エレベーターを降りる。――えーっと。王路んちは、エレベーターから降りて左側……だったよな?
オレが左へ向かって歩き出した瞬間――
「おい! どこ行くんだよ、姫川。俺のうちはこっちだろーが」
後ろから王路の声が聞こえてきて、驚いて振り返ると、中途半端に開けたドアから顔を出した王路と目が合った。ゲラゲラ笑っている。――どうやら右側だったらしい。
意味もなく咳払いをして方向転換。は、恥ずかしい……っ!!
こっちを覗き見ながら、ひーひーと腹を抱えて笑う王路の姿を見て、オレは少しだけ王路の体調が心配になってきた。――こいつ、熱のせいで、ハイテンションになってるんじゃないのか……?
オレは王路の元へたどり着くと、なんの前置きもなく背伸びして、冷却シートの貼られた額に自分の額をぴたりと当てた。
「なっ、おいっ、姫川っ!?」
「んー? なんだ?」
「急になにすっ……」
「おい! てかお前、まだ熱高ぇじゃねーか!」
バッと額を離すと、笑いすぎて火照っていた王路の背中を押して一緒に玄関へ入った。
「ったく。昨日あんだけしんどそうだったのに、半日でケロッとしてるから、変だなって思ったんだよな。まあ、オレのかーちゃんは、大体一日で熱が下がるって言ってたけど。」
――個人差ってあるしな!
事前に◯INEで聞いていた通り、王路のかーちゃんは仕事に出かけて居なかった。とーちゃんは海外赴任中。
「そんじゃ、お邪魔しまーす」と、オレは靴を脱ぎ、しっかり揃えて家に上がる。オレのかーちゃん、しつけには厳しいからな!
「おい、王路。早く部屋に戻って横になれ。お前、また昨日みたいに苦しい思いしたいのかよ?」
リビングの扉を開けて、おしゃれなテーブルの上に、お見舞い品を並べていく。けど、王路がリビングに来ない。
「何やってんだ、アイツ」
オレは荷物を置いて、玄関まで小走りで戻ると、王路が玄関で頭を抱えてうずくまっていた。
「王路!!」
昨日の姿がフラッシュバックして、オレはスリッパを脱ぎ捨てて駆け寄った。
「王路、王路? 大丈夫か? またしんどくなったのか? オレが支えてやるから、取り敢えず立とうぜ。春だけど、朝はまだ冷えるし、身体に悪いだろ?」
王路の腕を自分の肩に回して立たせようとした時、赤い顔で潤んだ目の王路がオレを見上げた。
「……と、思った」
最初の言葉が掠れて聞こえなかった。「もう一回言えよ」と、耳を近づけると、
「キス、されるかと思った」
「はぁ!? おまっ、それで玄関でじっと座ってたんか!? そんなペラッペラのパジャマ1枚で!? てか、キスだったら、もう2回もしてんだろーが!」
「いや……自分からするのと、お前の方からしてくるのとじゃあ、破壊力が違う、っていうか……」
「破壊力ってなんだよ!? 意味わかんねー! 日本語で喋れ日本語で! もぉ~、お前って……普段はしっかりしてんのに、こういう時はポンコツだな!!」
「ハイ。スミマセン。俺は、ポンコツです」
しおらしく謝る王路を見て、オレは思った。――素直な王路。かわいすぎじゃね?
オレは養護教諭のおばちゃん先生と一緒に王路を見送ったあと、おばちゃん先生と別れて、退勤してきたかーちゃんの車に乗って帰宅した。
――そして、翌日の早朝。
オレは朝の自主練を休むつもりで、朝6時半というレアな時間に王路のマンションに見舞いに来ていた。――だって、放課後は部活があるし、部活帰りだと遅い時間になっちまうからな。
「一応、王路に◯INEして確認したら『OK』って返ってきたから……まあ、大丈夫だろ!」
何度か遊びに来たことがあるのに、『彼氏』の見舞いに来たって思うと、なんか知らんが緊張する。
オレはマンションのエントランスに入って、機械に王路んちの部屋番号を入力した。するとしばらくして、はい、と王路の声が聞こえてきた。
「あっ、もしもし。オレです、姫川です」
『プッ。もしもし、ってなんだよそれ。しかも敬語になってるし』
「うっ、うるせーな! 慣れてねーんだよ、こういうの!」
『クックッ、あーおもれぇー。あ、今、オートロック解除したから。早く上がってこいよ。じゃな』
笑うだけ笑った王路に、一方的に通話を切られたオレは、「相手は病人だ」と思うことで怒りを抑えた。――そうだ。むしろ、あれだけ喋れるようになってることを喜んだ方がいい。
オレはエントランスを抜けてエレベーター前に立つと、エレベーターが降りてくるのを待つ間に、少しだけ昨日の王路の姿を思い出す。
両目を閉じて、弱っていた王路を思い浮かべ、むむむっと脳にインプットする。
「――よし! アイツは病人! オレはそのお見舞い! 喧嘩しないっ!」
自分にしっかり言い聞かせて、いつの間にか到着していたエレベーターに急いで乗り込んだ。
「……エレベーターに乗ると、なんであんなに気まずくて、無言になっちまうんだろう。あと、なんでかビミョーに怖い」
とかなんとか、どーでも良いことを一人で喋っていたら、目的の階にエレベーターが止まった。オレはスポーツバッグを肩にかけ直し、エレベーターを降りる。――えーっと。王路んちは、エレベーターから降りて左側……だったよな?
オレが左へ向かって歩き出した瞬間――
「おい! どこ行くんだよ、姫川。俺のうちはこっちだろーが」
後ろから王路の声が聞こえてきて、驚いて振り返ると、中途半端に開けたドアから顔を出した王路と目が合った。ゲラゲラ笑っている。――どうやら右側だったらしい。
意味もなく咳払いをして方向転換。は、恥ずかしい……っ!!
こっちを覗き見ながら、ひーひーと腹を抱えて笑う王路の姿を見て、オレは少しだけ王路の体調が心配になってきた。――こいつ、熱のせいで、ハイテンションになってるんじゃないのか……?
オレは王路の元へたどり着くと、なんの前置きもなく背伸びして、冷却シートの貼られた額に自分の額をぴたりと当てた。
「なっ、おいっ、姫川っ!?」
「んー? なんだ?」
「急になにすっ……」
「おい! てかお前、まだ熱高ぇじゃねーか!」
バッと額を離すと、笑いすぎて火照っていた王路の背中を押して一緒に玄関へ入った。
「ったく。昨日あんだけしんどそうだったのに、半日でケロッとしてるから、変だなって思ったんだよな。まあ、オレのかーちゃんは、大体一日で熱が下がるって言ってたけど。」
――個人差ってあるしな!
事前に◯INEで聞いていた通り、王路のかーちゃんは仕事に出かけて居なかった。とーちゃんは海外赴任中。
「そんじゃ、お邪魔しまーす」と、オレは靴を脱ぎ、しっかり揃えて家に上がる。オレのかーちゃん、しつけには厳しいからな!
「おい、王路。早く部屋に戻って横になれ。お前、また昨日みたいに苦しい思いしたいのかよ?」
リビングの扉を開けて、おしゃれなテーブルの上に、お見舞い品を並べていく。けど、王路がリビングに来ない。
「何やってんだ、アイツ」
オレは荷物を置いて、玄関まで小走りで戻ると、王路が玄関で頭を抱えてうずくまっていた。
「王路!!」
昨日の姿がフラッシュバックして、オレはスリッパを脱ぎ捨てて駆け寄った。
「王路、王路? 大丈夫か? またしんどくなったのか? オレが支えてやるから、取り敢えず立とうぜ。春だけど、朝はまだ冷えるし、身体に悪いだろ?」
王路の腕を自分の肩に回して立たせようとした時、赤い顔で潤んだ目の王路がオレを見上げた。
「……と、思った」
最初の言葉が掠れて聞こえなかった。「もう一回言えよ」と、耳を近づけると、
「キス、されるかと思った」
「はぁ!? おまっ、それで玄関でじっと座ってたんか!? そんなペラッペラのパジャマ1枚で!? てか、キスだったら、もう2回もしてんだろーが!」
「いや……自分からするのと、お前の方からしてくるのとじゃあ、破壊力が違う、っていうか……」
「破壊力ってなんだよ!? 意味わかんねー! 日本語で喋れ日本語で! もぉ~、お前って……普段はしっかりしてんのに、こういう時はポンコツだな!!」
「ハイ。スミマセン。俺は、ポンコツです」
しおらしく謝る王路を見て、オレは思った。――素直な王路。かわいすぎじゃね?
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