FLY HIGH

真山マロウ

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過去

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「もしかして調子悪い? 今日あんまり混んでないから帰ってもいいよ。ゆっくり休みなね」

 休憩あけ、ミスばかりしていたら店長さんが早退させてくれた。

 帰ってからも心ここにあらず。夕飯も食べてはみたけど味がよくわからない。ベッドに入っても眠れなくて、数時間たっても寝がえりばかり。

 短い間だったけどシロにはお世話になった。本当に感謝してる。だから心残りなく送りだしたい。どうすればシロは喜んでくれるだろう。やっぱり夢? でも、そんなの私には……。

 記憶の箱をひっくり返す。そういや、いつからだろう、夢を持たなくなったのは。なにか強烈なきっかけがあったんじゃなく、小さいことの積み重ねな気がする。

 一番最初は物心ついたとき。テレビアニメのキャラクターに憧れ、変身して敵をやっつける正義の味方になりたかった。

 当時の私は、望んでいればやがて自然となりたいものになれるものだと思っていたので、近所の子たちとのごっこ遊びもリハーサルのような気持ちで参加していた。だけれど主役になるのは誰がみても華やかな目立つ子で、私は仲間でも敵でもなく、戦ってるのを野次馬する人。しかもモブAやBどころか、EかFくらいのポジション。それが毎回になると鈍感な私でさえも、自分はどう頑張っても主要キャラになれないタイプなんだと理解した。

 小学校にあがってからは、もう少し現実味のある夢を持った。星を眺めるのが好きだったから、そういう仕事をする人になれたらと。けれども理系に進んで難しい計算とかができないといけないのを知り、理科も算数もどんなに勉強しても七割そこそこの点数しかとれない私には到底無理だと断念した。

 お次は、博物館にいった時に優しくしてもらった学芸員さんの博識さに憧れ、そういう方面を目指そうかと思った。しかし、そうなるためには覚えなきゃいけないことが山ほどあるのは当然で。記憶容量の残念さを自覚してからは、あえなくギブアップ。

 だが、それでもまだ夢みること自体を諦めたわけじゃなかった私は発想を転換し、好きなことじゃなく得意なことを頑張ればなにかしらなりたいものになれるのではと考えた。そこからジャンル問わず、習い事などで様々にチャレンジしてみたら――勉強、スポーツ、アート、手先の器用さ、それらにともなうコミュニケーション、などなど、どれをとっても平均かそれ以下。

 まったくの盲点だったけれど、私には得意なことすらなかったのだった。
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