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第弐拾肆話-議員

議員-8

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「おい! 起きろ!!」
 長四郎の目覚めはその第一声から、始まった。
「う~ん、疲れているんだから寝かせろよ」
 長四郎はそう言って、布団を頭から被って二度寝しようとする。
「二度寝すんなっての!」
 布団を引っぺがされた長四郎は、ダンゴ虫のように身体を丸める。
「ラモちゃん。朝から元気だね」
 ベッドから身体を起こしながら、長四郎がそう言うと燐から布団を取り上げてもう一度、眠りにつこうとする。
「だから、寝るなって」燐はすかさず、布団を取り上げる。
「もぉ~ ドSなんだから。あの議員さんの警護ならラモちゃんと根岸君に任せるから」
「あんた、それでも探偵? 依頼人を守るのが探偵の役目でしょ」
「うん。そうだね。だから、俺は夢の中から依頼人を守る事にしたから」
「ふざけないで。あの人が襲われたの知っているでしょ」
「・・・・・・」
 長四郎から返事がないので、ベッドに視線を向けると長四郎はスヤスヤと眠っていた。
「だから、寝るなァァァァァァァァァァァァァァァァ」
 燐のエルボーが長四郎の鳩尾にクリーンヒットするのだった。
「痛てて」
 鳩尾に手を当てながら、長四郎は歩を進めていると燐からキ゚ッと睨まれ「何でもありません」とだけ答え燐に付いていく。
「おはようございます」
 議員会館の警備員に挨拶する燐に続いて長四郎も「おはようございます」と小声で挨拶する。
 西天光の部屋へと来た二人に、根岸が慌てた様子で近づいてきた。
「おはようございます! 探偵さん、ちょっと、まずい事になってますよ」
「まずい事になっているのは、俺の鳩尾。というか、あばら?」
 またもや、燐に睨まれる長四郎は「何でもありませぇ~ん。てか、まずい事って何よ?」と尋ねる。
「俺たち、クビになるかもです」
「何でですか?」燐が不満気に理由を聞く。
「何でって言われてもな・・・・・・」
 そう言う根岸も、長四郎達が来る五分前に会社から電話で聞いただけだからである。
「多分、ラモちゃんが犯人を捕まえたと思っているんだろうな」
「ああ、そう言う事か!」
 燐が嬉しそうに納得すると「探偵さんの出番は無しですね」と根岸はチクリと嫌味を言う。
「それは兎も角として、ラモちゃんが捕まえたのは世間を騒がしている犯人じゃないぞ」
「そうなの!?」
「そうなんですか!?」
「それより、小岩さんは?」
「ああ、今日は次の講演会の打ち合わせとかで荒川区の公民館に」
「最初にそれを言え!!」
 長四郎は鳩尾の痛みも忘れて、慌てた様子で議員室を飛び出して行く。
 燐と根岸も急いで後を追う。
「ねぇ、どうしたの?」
 エレベーターホールに着き、エレベーター待ちしている間に燐が質問した。
「小岩さんが危ないかもしれない」
「探偵さん、どういう事ですか?」説明を求める根岸。
「説明している時間はない。取り敢えず、外に出てタクシー捕まえるぞ!」
 エレベーターが来ないので、痺れを切らした長四郎は階段へと向かい駆け足で降りていく。
 議員会館出てすぐにタクシーを拾えた三人は、荒川区の公民館へと向かう。
「説明してよ」
「ちょい待ち。今から一川さんに連絡するから」
「分かった」
「あの、一川さんというのは?」
「私達の馴染みのある刑事さん」
「おお、なんかドラマみたいな展開になってきましたね」
「根岸さん。はしゃがない」
「すいません」
「ったく、早く出ろよ。あのハゲ!!」
 悪態をつく長四郎を乗せたタクシーは、荒川区の公民館へと向かって走っていくのだった。
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