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第弐拾肆話-議員

議員-9

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「これで。おつりは結構です」
 長四郎はそう言って、運転手に一万円札を手渡して、いの一番にタクシーを降りた。
「ちょっと、次に狙われるのが小岩さんってどういう事?」
「ラモちゃん、タクシーの中で軽く説明したでしょ」
「いや、それは分かるよ。でも、確証はないでしょ?」
「まぁまぁ、取り敢えず、小岩さんを探さないと」
「根岸君、よく言ってくれた。ラモちゃんと一緒に探してくれ」
「分かりました。行こう、女子高生」
「ちゃんと、名前で呼んでくれませんか!」
 憤慨する燐を無視して、根岸は小岩を探し始める。
「あ~ なんか調子狂うなぁ~」
 燐も根岸の後を追い、小岩の捜索に乗り出す。
 タクシーの中で小岩に連絡を取ってみたのだが、音信不通で折り返しの連絡もない状態であった。
 そんな状況なので、長四郎は不安で仕方なかった。
 燐と根岸は昨日、捕まえた暴漢が世間を騒がす議員秘書襲撃犯だと思い込み小岩のガードをおろそかにしている事を考えていなかったからだ。
 今回の警護対象のメインは西天光だが、その実、秘書の小岩も警護対象であることをすっかりと失念していた。
 長四郎は公民館のドアノブを回すが開かず、打ち合わせが終わった事を意味していた。
「クソっ!!」
 次に、公民館の周辺をぐるりと回り小岩が居るか確認するが姿はなかった。
 もう一度、小岩のスマホに通話をかけるが留守番メッセージに繋がるだけで応答はない。
 すると、燐から着信が入る。
「ラモちゃん、どうした?」
「小岩さん、居たよ」
「大丈夫なのか?」
「ううん。襲われてた。今、根岸さんが応急処置している」
「分かった。場所を教えてくれ」
 燐から現在地を告げられた長四郎は、燐の元へと向かう。
 小岩が襲われたのは公民館から百メートル程、離れた雑居ビルと雑居ビルの間であった。
 長四郎が着いた頃には、担架で運ばれている小岩が救急車に乗せられる所だった。
「小岩さんは?」容態を燐に聞くと「少し、頭を切ったぐらいで救急隊員の人が言うには、命に別条はないらしいよ」と答える。
「そうか。襲った犯人については聞けた?」
「フードを被った男だけとしか」根岸が答えた。
「昼間だから、顔を見れてもよさそうだけどな」
「いきなり、背後から掴みかかれて薄暗い場所に引きずりこまれたら、誰だって混乱するでしょ?」
「そこまで聞き出したの?」
「当たり前」
「あの、誰か付き添われる方は?」救急隊員にそう言われ「僕が行きます」と根岸が挙手して救急車に乗り込む。
「探偵さん。西さんの方を頼みます」
「分かった」
 長四郎がそう返事すると同時に、救急車のドアが閉まり病院へと向けて走り出していった。
「私達、これからどうする?」
「ラモちゃん、小岩さんを見つけた時の状況を教えてくれ」
「良いよ」
 燐は長四郎に小岩を発見した時の状況を発見現場で説明し始めた。
「根岸さんは、ここに身を隠すように居た」
 燐が指さす先はごみ収集ボックスの奥側で、路地の入口から見れば死角になる位置だった。
「なんか、隠れるような場所に居たな。逃げてきたの?」
「ううん、ここで襲われたって言ってた」
「ここで襲われてたのに、身を隠すような場所に居たのか」
「そうみたい」
「なんか、気になるな」
「え、何が?」
「ま、良いや。一川さん達は呼んでるんだろ?」
「当然」
「じゃ、ラモちゃんはここに残って一川さん達に説明してあげて」
「あんたは?」
「俺は、西さんの所へ戻る。良いか、現場荒らすなよ」
「んな事、言われなくても分かってます。べぇ~」
 燐は立ち去る長四郎に向かって、あっかんべーする。
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