Detectiveは宇宙人

飛鳥 進

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第壱話-開始

開始-4

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 誠が事務所まで送ってくれるとの事で覆面パトカーに乗り事務所へと向かっていた。
「小永さん、あの男が犯人で良いんですか?」
 車が少し走り出したところで新三に先程、出会ったサラリーマンの真希 芳人が大隈 泰山を殺害した犯人なのか誠は確認をする。
「そうだお」新三はその一言だけ返す。
 何故、人とぶつかっただけで犯人だと分かるのか?
 しかも、それを鵜吞みにする警察。
 愛子はこの国の警察を信用しないでおこうそう心に誓うのであった。
「じゃあ、彼の身辺調査を行いますね」
「宜しくぅ~」
 新三は目を閉じて眠りにつく。
「ふぅ~」
 愛子は息を吐き窓から見える空を眺める。
「どうされました?」
「いや・・・・・・・」
「ああ」愛子が何を考えているのか、察した誠は話始めた。
「もしかして、小永さんの能力をご存知ないのですか?」
「能力、ですか?」
「ええ。小永さんは人を見ただけでその人が被疑者かどうか分かるんです」
「まさか・・・・・・・」
 そんな漫画みたいな話あるわけがないと思う。
「信じてないみたいですね。僕も最初の方は深見さんと一緒でしたよ。
でもね、小永さんの能力は本物なんです」
「超能力がこの世界には存在する。そういう事ですか?」
「はい。超能力と宇宙人が存在するんです」
 車は事務所近くの駅ロータリーで停車した。
「ありがとうございました」
「いえ、起きてください!! 小永さん!!!」
「あ、もう着いたの? 誠っち、ありがとう。また、何かあったら呼んでね」
「はい」
 愛子と新三が降りた事を確認すると車を発進させる。
「ふわぁ~わ」
 大きなあくびをした新三は一人事務所へと戻って行くのを愛子は見送ることしかできなかった。
「ああ!! ムカつく!!! 訳分かんねぇんだよ!!!!」
 愛子は飲み干したジョッキをドンッと机に叩きつける。
 その夜、愛子の新人歓迎会が駅ビルに入っている居酒屋で開催されていた。
「ごめんね。私が悪かった」隣に座る所長の史が愛子の背中を擦りながら慰める。
「いいや、私が悪いんですぅ~」
 今度は机に突っ伏して泣き始めた。
 史は酒乱の娘かと思いながら介抱する。
 それからしばらく泣き続けた愛子は落ち着きを取り戻したのか、顔を上げてすぐ近くに置いてあった史のビールを一気に飲み干す。
「ふぅ~」
「落ち着いた?」
 顔を上下小刻みに揺らしながら頷く愛子。
「ごめんなさい。取り乱しちゃったみたいで・・・・・・・」
「良いのよ。あなたはよくやっているから」
「へ?」
「ふふっ。この1週間近く貴方を見てきたけどよくやっている。
今までの子達は1週間持たなかったもの」
「そんな、まさか・・・・・・・・・」と言いつつ、愛子は「やっぱり」と心の中で一人納得する。
「愛子ちゃんはさ、宇宙人とか超能力って信じるタイプ?」
「その話ですか・・・・・・・・」
「あれ、もしかして知っちゃっている系?」
「はい。今日、誠っちいや巽川さんから教えて貰いましたから」
「彼ね。彼も愛子ちゃんと同じで最初は滅茶苦茶戸惑ってたんだから。
なんなら、事務所に怒鳴り込んできたぐらいで。凄かったんだから」
 懐かしいといった感じで史は遠くを見つめる。
「そんなことがあったんですね」
 愛子は枝豆を口に頬張る。
「そうそう」
 史はタブレット端末で追加の飲み物を注文した。
「私、これからどうすれば良いんでしょうか」
「どうって言われてもね。それはあなた自身が決めることじゃないかしら。
辞めるなら辞めてもらっても構わないし、別の探偵事務所を紹介するわよ」
「それは」
 一瞬、愛子の脳裏でお願いしようか考えたがもう少しだけ頑張ろうと思い、願い出るのを踏みとどまった。
「もう少し、頑張ってみようと思います」
「そう、意外とつまらないのね」
「どうしてですか? 辞めないんですよ。私」
「え、だって、そういうベタな展開になると思っていなかったもん」
 注文したカシスオレンジが届いたので、史は口をつける。
「でも、辞めますって言って一度は離れても、戻ってくるパターンとかあるじゃないですか!!」
「それってさ、そこそこの期間居た奴がとる行動じゃない?」
「うっ!!」
「私の勝ちみたいね。という事で、今回のお支払いは愛子ちゃんモチね」
「そんなぁ~」
「これから宜しくね。愛子ちゃん」
「はい!!! 頑張ります!!!」
 愛子はこう言ったものの内心、宇宙人などの非現実的な事実を受け入れずにいた。
 その頃、新三は事務所で一人考えに老け込んでいた。
 今回の犯人である真希 芳人の事だ。
 あれから数時間、誠から連絡はない。
 追い詰める材料がないのか? それとも、自供に持ち込めて今頃送検の準備で忙しいのか。
 どちらにせよあの男が犯人であることは間違いないのだ。
「電話こないなぁ~」
 彼氏の電話を待つけなげな彼女のように誠からの連絡を待つ。
 すると、見計らったように新三のスマホに着信が誠から入る。
「もしもしぃ~ 誠っちぃ~」
 気だるそうな女子高生風に応答する新三。
「小永さん、例の事件についてなんですけど」
「うん」
「どうも、被疑者を追い込めるだけの材料がないんです」
「そう」
「それで、いつもの通り」
「分かった。ウチの所長には伝えておくから。明日はどうすれば良いの?」
「迎えに上がります。何時ごろがよいですか?」
「う~ん、そうだな。愛子ちゃん、明日は二日酔いっぽそうだから。
13時で、どう?」
「分かりました。それと小永さん」
「何?」
「深見さんは小永さんの相棒という事で宜しいのでしょうか」
「相棒season14の米沢さんみたいなこと聞くね? 誠っち」
「で、どうなんです?」
 誠は良いから早く答えろといった感じの口調で事実確認をする。
「バディでいいんじゃね? 後は彼女次第だけど・・・・・・・・」
 新三は窓からの景色を見ながらニヤリと笑う。
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