それについては黙っておいて

ミナクオ

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それについては黙っておいて

西国君の話(#3)

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俺以外はすでにおらず、

五段坂ごだんざかと二人だけだ。



「一度帰って、風呂も済ませてきたんだろ?寝るだけなら、ここで寝てけ。」


「バイト先はこっからの方が近いし、ありがてーけど。でも、またベッドで眠らせてもらうぞ?」


「おう。今日はジャージ貸してやる。風呂入ってくるから、先寝てろ。」


「ビバ!ジャージ!」



五段坂のジャージを

着込んですぐ、

ベッドに入り込む。



夜な夜な集いはするが、

泊まり合うことはほとんどない。

講義やらバイトやらで、

それぞれ忙しい。



主のいない部屋に、

一人横になる俺。



変な感じだ。




「もう寝た?」


「いや、ぼーっとしてた。」



風呂からあがった五段坂が、

俺の隣にごろんと寝転ぶ。



五段坂の手が伸びてきて、

俺の頭を静かに撫ではじめた。



「俺は一人寝のまま、生涯を終えると思ってたから、他のやつと寝れるなんてうれしい。」


「そっか。別に頭撫でてくれなくてもいいぞ?」


「相手を寝かしつける癖がついちまってるわ。」


「気持ち良いからいいけど。相手が眠るまで撫でてんだろ?すげーな。」


「まーな。この流れだと、やっぱり寝れねーのかも。」


「それはあるな。昨夜はたまたま起きなかっただけでさ。俺が撫でてやるよ。」


「してもらったことはあるけど、寝れなかったんだよな。」


「まあまあ。今朝、俺をホールドしてたろ?それしてみろよ。その体勢で頭撫でてやる。」


「わりーな。」



生涯一人寝ってのは、

かわいそうだ。

五段坂を眠らせてやりたい。



西国さいごく、抱き心地いいんだよな。抱き枕としてしっくりくる。」


「新発見だな。」


「なんとなく落ち着くにおいするし。」


「新発見その2だな。」


「体温高めで、寒がりの俺に丁度いい。」


「新発見その3だな。」



新発見その7で、

五段坂が、

むにゃむにゃしてきた。



これはいけるか?



頭なでなでから、

背中とんとんに切り替え、

追い込みをかける。



そのうち、寝息が聞こえてきた。



落ちた!

俺、グッジョブ!!

後を追うように

すぐ眠りについた。





翌朝、俺は、

五段坂のがっちり

ホールドから脱け出し、

バイトへ向かった。






「西国、朝バイトお疲れ!講義もあったのか?」


「おー。五段坂も飯か?」



学食で声をかけられる。



「西国が出ていったの、なんとなくわかったけど、そのまま寝かせてもらったわ。」


「よく眠れたみたいでよかった。」


「おかげさまで。人肌を感じて寝つけるって良いもんだな。」


「なでなでからの、とんとんコンビネーション最高だったろ?」


「それな!癖になりそー!」


「テクニシャン。それは俺!」


「西国なしじゃいられなくなっちゃう!」


「罪な男。それは俺!」



げらげら笑っていると、

大社たいしゃがやってきた。



「なに?楽しそーじゃん」


「五段坂を眠らせなかった男が来た!」


「は?何それ?」


「俺は五段坂を眠らせた男だ!」


「謎が深まったけど??」


「西国、それについては黙っておいて。」


「お?了解!大社、そういうわけで、ヒントはもうやれん!」


「なんだよ~!」



いじけた様子の大社を見て、

またげらげら笑った。



「唐揚げやるから、いじけんな!」


「飲みもんおごってやるから、来いよ!」


「やった!ラッキー!」



五段坂の後を、

大社が付いていく。

みんなのわんこだな。



一番モテるのは雨崎あめざきだが、

一番可愛がられるのは大社だ。



モテも可愛がられもしないけど、

五段坂を眠らせたのは俺なんだ。



ほんのちょっと優越感を覚えて、

顔がにやけるのを止められなかった。


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