偽りだらけの花は、王様の執着に気付かない。

葛葉

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第三章

第36話

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 ソラリスとジョシュアが再会できたのは、翌日のことだった。
 どうやら、エリザヴェータの指示のようだ。
「なるほど。確かに状況は良くないな」
 ジョシュアはソラリスからサファルティアの様子を聞き、ため息をついた。
「このままでは、殿下は望まぬ婚姻を強いられてしまいます……」
 とはいえ、サファルティアに自我があるかどうかも怪しい状態で、“望まない”と断言することは難しい。
 ジョシュアはソラリスを見る。
「……正直、私たちは今回のことに首を突っ込むべきではないと思っている」
 ソラリスは訝しげにジョシュアを見る。
「我々はガリアの人間だ。シャルスリアやロクドナと敵対することはないにしても、下手に突っ込みすぎるのも良くない。賢い君ならわかるだろうけど」
 ソラリスは俯く。
 もちろん、わかっているつもりだ。
 今は“ティルスディア”の身代わりをしているとはいえ、本来はガリア公国・コアルク家公爵の長女である。
 王太子との婚約も決まっている身でもあるのだから、下手に動いて正体がバレたり、身を危険に晒すことはできない。
「それでも、わたくしは、この婚姻を進めるべきではないと思います」
 ソラリスが王太子の婚約者候補に挙がったのは十歳のころ。それ以来、政治の駒として扱われ続けてきた。
 思うところがないと言えば嘘になるが、公爵家長女として、それは当たり前だと思ってきた。
 けれど、恋への憧れはあった。奔放な第一王子には振り向かれることもなく、同年代の令嬢たちが次々と婚約を決めるなか、焦りと憧憬、嫉妬に揺れる自分がいた。
 だから、今回シャルスリア側からの要請はソラリスにとっても転機になると思った。
 自分の為に彼らを利用しているという罪悪感も少なからずある。
 だからこそ、サファルティアを何とかして助けたいとも思うのだ。
「それに、殿下を助ければシャルスリアは我が国に恩が出来ます。公爵家としても決して悪い話ではないでしょう?」
 私情はあるが、国としても決して不利益にはならない。
 失敗したとしてもソラリスもジョシュアも替えがきく。
 打算と罪悪感とほんの少しの淡い気持ちのために、今が踏ん張りどころだ。
 ジョシュアはソラリスの迷いのない目を見て小さく笑う。
「わかった。君がそう言うなら私もしたがおう。今回はあくまでも“ティルスディア”殿下の後見人という立場だからね」
「ありがとうございます、公爵」
 
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