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本編●主人公、外の世界に出て色々衝撃を受けたりしながら遊ぶ
ぼくは『学園もの』というジャンルに夢を見ていた
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皆さんどうも、入学したアドルです。
ぼくは今、エイベル兄さんとアルフォンソと一緒です。
お昼なので、食堂で優雅な昼食を摂っています。
食堂と言いましたが、割と高級レストラン的な雰囲気もありまして……。
……あぁ、そうだよ。
せっかく学校に通い出したというのに、ぼくが卓を囲んでいるのは同じ学級の級友じゃないのが現実だ。誰もぼくに寄って来なかったんだ。
兄の『麗しい』な美貌を目当てに近寄って来た上級生も居たが、彼等をアルフォンソと兄が冷たく追い払ったんだよ。
そこそこ『凛々しい』と『厳つい』なタイプだったから、ぼくは同席する事もやぶさかではなかったんだがね。
兄達は随分と警戒して、ぼくを守ってくれている。
少々、その度合いが強過ぎるような気もするが……ある意味、二人がこうなるのも無理は無いのかも知れない。
仕方ない事だと諦めたぼくは、食事の間は大人しく、目の前にいる二人の容貌を楽しむ事にした。
その原因となるような事柄を少しだけ、振り返って話しておこうかな。
本当に馬鹿馬鹿しいぐらいに酷い話だから。
前以って予告しておくから。怒らないでよね?
* * * * * *
学校の正面入り口に停めた馬車から降りると、ぼく達を出迎える為に一人の教師が待ち構えていた。
教師から少し離れた位置、玄関のそばにはアルフォンソも。
ホッとした兄が、教師とアルフォンソに笑顔を向ける。
「おはよう、エイベルくん。それから……アドル様。」
「様付けするのは止めて貰えるかな? ぼくも兄さんと同じように、くん付けでお願いしたいんだが。」
オルビー先生と練習しておいて良かった。
ぼくは瞬時に判断して、飽くまでも『格好良い』を崩さずに、素早く呼び方を修正させた。
「あぁそれと、話し方なんだが……。兄と同じように。ぼくは学校では、一生徒として過ごしたいんだ。だから貴方も、一人の教師として普通に接して欲しい。……いいよね?」
「……そ、そうか。よし……分かった。なるべく、そうしよう。」
物分かりの良い相手で助かった。
様付けはされなくても、先生の言葉遣いがやたら丁寧だったり、度を越した贔屓をされたりしては、学生生活がやり難いだろうから。
とは言え、ぼくの都合によっては、幾らでも特別扱いして貰うが。
「それじゃあ、まずは校長室に案内しよう。その後、職員室に行ってから、キミが所属する学級に行くよ?」
「あぁ、ぉ……頼む。」
一瞬だが「お願いします」と言いそうになった。
慌てて言い換えて、歩き出した先生の後を追うぼく。すぐ後ろから兄とアルフォンソが付いて来る。
廊下を進むぼくは顔面を隠していない。ヴェールも、仮面も無しだ。
学校内では特別な事情が無い限り、誰も、顔面を隠す事を許されない。
特別な事情……ぼくの顔面偏差値が奇跡ランクである事は、それには含まれないようだ。
偏差値が高かろうが低かろうが、学校ではそれを晒して過ごさなきゃならないと言うのは、ある意味で公平だがある意味では残酷だ。
平等を謳って教育していても、絶対的な美醜感覚が神によって設定されている為、偏差値の低い者に対する嫌悪感を抱く人が一定以上は存在するんだから。
自分より劣っている、醜いと感じられる相手に対して、見下したり馬鹿にしたり攻撃したり。
感情を持った人間の集団である以上、そういった事があるのは、残念だが仕方ない事だ。
……とか何とか考えながら、廊下を進みだしたぼくは。
すぐに、そんな事を呑気に考えてはいられなくなる。
たまたま廊下にいた生徒達が。教室の、廊下側にある窓を挟んで喋っていた生徒達が。
教師と共に歩いているぼくの姿に、明らかにざわめき出す。
悲鳴を上げ掛けた口を慌てて押さえる者。ぽかーんと口を開けて呆ける者。隣にいる友人の腕を叩いて興奮を露わにする者。思わず口笛を吹いた生徒が他の生徒に咎められる。
ぼくに気が付かなかった生徒も、他の生徒から突っつかれて、ぼくを見ると同じような反応になった。
凄い光景で、光栄な事でもあるんだが。ここまでされると逆に嘘くさい。
あからさまな好意の嵐に、ぼくは疑いを感じてしまう。
引き篭もりだった頃の弊害だろう。
自分でも少し可笑しく思ってしまい、つい苦笑いを浮かべた。
「う゛あ゛ぁっ、溜まんネェな、おい。」
「あぁ、もう…駄目だ……っ。」
感極まった声が幾つか聞こえる。
ぼくがそちらを向こうとしたのをアルフォンソに遮られた。
「アドル、見てはいけない。目が腐る。」
「……あぁ、分かった。」
だが、ぼくは見てしまった。
廊下にいる生徒が何人か、ぼくを見ながら逸物を擦っている姿を。
なっ……何をやっているんだ!
「コラっ、お前達。廊下でスルんじゃないっ。」
まるで「廊下を走るなよー」レベルで先生が言う。
そんなテンションで注意する事か!
問題はそこじゃないだろう!
教室内で擦っている生徒は一切のお咎め無しか!
「しゃーねぇ、トイレ行くか。」
「……だな。あ~、入れてぇな~。」
待てこらぁ。連れ立って歩き出す、お前らはタチかっ!
ぼくがこんなに『格好良い』なのに、ネコに見えるというのかっ。アレックと言い、どいつもこいつも……!
入学早々に、校内で堂々とオカズにされた衝撃を、ぼくはなかなか受け止め切れない……当たり前だろっ!
そんなの、引き篭もりアドルじゃなくても、都合の良い男な下半身の緩い世野悟だってショックだよ!
「ふぅ……。アドル。……ネコにも、気を付けるんだぞ?」
この学校には阿呆のタチが何人かいるようだ。
と認識したぼくに。
溜息交じりの兄が警告してくれた。
ぼくは今、エイベル兄さんとアルフォンソと一緒です。
お昼なので、食堂で優雅な昼食を摂っています。
食堂と言いましたが、割と高級レストラン的な雰囲気もありまして……。
……あぁ、そうだよ。
せっかく学校に通い出したというのに、ぼくが卓を囲んでいるのは同じ学級の級友じゃないのが現実だ。誰もぼくに寄って来なかったんだ。
兄の『麗しい』な美貌を目当てに近寄って来た上級生も居たが、彼等をアルフォンソと兄が冷たく追い払ったんだよ。
そこそこ『凛々しい』と『厳つい』なタイプだったから、ぼくは同席する事もやぶさかではなかったんだがね。
兄達は随分と警戒して、ぼくを守ってくれている。
少々、その度合いが強過ぎるような気もするが……ある意味、二人がこうなるのも無理は無いのかも知れない。
仕方ない事だと諦めたぼくは、食事の間は大人しく、目の前にいる二人の容貌を楽しむ事にした。
その原因となるような事柄を少しだけ、振り返って話しておこうかな。
本当に馬鹿馬鹿しいぐらいに酷い話だから。
前以って予告しておくから。怒らないでよね?
* * * * * *
学校の正面入り口に停めた馬車から降りると、ぼく達を出迎える為に一人の教師が待ち構えていた。
教師から少し離れた位置、玄関のそばにはアルフォンソも。
ホッとした兄が、教師とアルフォンソに笑顔を向ける。
「おはよう、エイベルくん。それから……アドル様。」
「様付けするのは止めて貰えるかな? ぼくも兄さんと同じように、くん付けでお願いしたいんだが。」
オルビー先生と練習しておいて良かった。
ぼくは瞬時に判断して、飽くまでも『格好良い』を崩さずに、素早く呼び方を修正させた。
「あぁそれと、話し方なんだが……。兄と同じように。ぼくは学校では、一生徒として過ごしたいんだ。だから貴方も、一人の教師として普通に接して欲しい。……いいよね?」
「……そ、そうか。よし……分かった。なるべく、そうしよう。」
物分かりの良い相手で助かった。
様付けはされなくても、先生の言葉遣いがやたら丁寧だったり、度を越した贔屓をされたりしては、学生生活がやり難いだろうから。
とは言え、ぼくの都合によっては、幾らでも特別扱いして貰うが。
「それじゃあ、まずは校長室に案内しよう。その後、職員室に行ってから、キミが所属する学級に行くよ?」
「あぁ、ぉ……頼む。」
一瞬だが「お願いします」と言いそうになった。
慌てて言い換えて、歩き出した先生の後を追うぼく。すぐ後ろから兄とアルフォンソが付いて来る。
廊下を進むぼくは顔面を隠していない。ヴェールも、仮面も無しだ。
学校内では特別な事情が無い限り、誰も、顔面を隠す事を許されない。
特別な事情……ぼくの顔面偏差値が奇跡ランクである事は、それには含まれないようだ。
偏差値が高かろうが低かろうが、学校ではそれを晒して過ごさなきゃならないと言うのは、ある意味で公平だがある意味では残酷だ。
平等を謳って教育していても、絶対的な美醜感覚が神によって設定されている為、偏差値の低い者に対する嫌悪感を抱く人が一定以上は存在するんだから。
自分より劣っている、醜いと感じられる相手に対して、見下したり馬鹿にしたり攻撃したり。
感情を持った人間の集団である以上、そういった事があるのは、残念だが仕方ない事だ。
……とか何とか考えながら、廊下を進みだしたぼくは。
すぐに、そんな事を呑気に考えてはいられなくなる。
たまたま廊下にいた生徒達が。教室の、廊下側にある窓を挟んで喋っていた生徒達が。
教師と共に歩いているぼくの姿に、明らかにざわめき出す。
悲鳴を上げ掛けた口を慌てて押さえる者。ぽかーんと口を開けて呆ける者。隣にいる友人の腕を叩いて興奮を露わにする者。思わず口笛を吹いた生徒が他の生徒に咎められる。
ぼくに気が付かなかった生徒も、他の生徒から突っつかれて、ぼくを見ると同じような反応になった。
凄い光景で、光栄な事でもあるんだが。ここまでされると逆に嘘くさい。
あからさまな好意の嵐に、ぼくは疑いを感じてしまう。
引き篭もりだった頃の弊害だろう。
自分でも少し可笑しく思ってしまい、つい苦笑いを浮かべた。
「う゛あ゛ぁっ、溜まんネェな、おい。」
「あぁ、もう…駄目だ……っ。」
感極まった声が幾つか聞こえる。
ぼくがそちらを向こうとしたのをアルフォンソに遮られた。
「アドル、見てはいけない。目が腐る。」
「……あぁ、分かった。」
だが、ぼくは見てしまった。
廊下にいる生徒が何人か、ぼくを見ながら逸物を擦っている姿を。
なっ……何をやっているんだ!
「コラっ、お前達。廊下でスルんじゃないっ。」
まるで「廊下を走るなよー」レベルで先生が言う。
そんなテンションで注意する事か!
問題はそこじゃないだろう!
教室内で擦っている生徒は一切のお咎め無しか!
「しゃーねぇ、トイレ行くか。」
「……だな。あ~、入れてぇな~。」
待てこらぁ。連れ立って歩き出す、お前らはタチかっ!
ぼくがこんなに『格好良い』なのに、ネコに見えるというのかっ。アレックと言い、どいつもこいつも……!
入学早々に、校内で堂々とオカズにされた衝撃を、ぼくはなかなか受け止め切れない……当たり前だろっ!
そんなの、引き篭もりアドルじゃなくても、都合の良い男な下半身の緩い世野悟だってショックだよ!
「ふぅ……。アドル。……ネコにも、気を付けるんだぞ?」
この学校には阿呆のタチが何人かいるようだ。
と認識したぼくに。
溜息交じりの兄が警告してくれた。
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