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31【豊子のバリエーション】
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ディアナ王国に帰って三日目。
体調も万全!だからどこかに行きたいわ!
私は、お母さまに拝み倒し、侍女のミミと久しぶりにディアナ王国の王都にお買い物に出かけることにした。
だって、明日はハルキアに向けて出発するのですもの。
やっぱり生まれ育ったこの街も好きだわ。はじめはこっちでも冒険者をしてたしね。
以前は赤金色の髪だったのに、今は金髪になっちゃっている。この国では別に珍しいわけではないわね。逆に前の髪色の方が珍しいのよ。
それに私の髪色が今は変わったことが皆に知れ渡っているわけはないわ。まだ。
私はいつものように二つのおさげにしてから、くるりと巻き付けるようにアップスタイルにして、前髪をおくれ毛のように引っ張り出して何となく顔が隠れるように微調整。
そして平民の女の子の服を着る。平民の服は普段通学の時に着ているから沢山持っているわ。幾つかはこっちのお城にも置いてあるの。
まっ白なフレンチスリーブのトップスのウエストに濃い緑色のボディス。それのフロントを赤いリボンで締めるのよ。
そして、しっかりした裏地のあるふわふわのギャザースカートにアクセントのようなエプロンがついているの。中世ヨーロッパって感じの衣装で、同じ時代設定の石造りの街にぴったり。あら私としたら設定って・・・
でもカメラがあったら撮ってほしいぐらいよ。
ミミも色違いで同じような組み合わせの衣装で、ふふふ、私たちお姉ちゃんと妹みたいね。
もちろん、私は王女だし、もっと希少な聖女になってしまったので、沢山の兵士が平民の服装で民衆に紛れ込みながら、見守ってくれているの。
でも、普段の冒険活動ももっと少ないけれど護衛の人たちが見守ってくれていたのよネ。
ハルキア王国では、王太子になるフェルゼンもいてたから、当然だわね。
でも、そんなの気にしちゃいけないわ。
私はミミと姉妹のように手を繋いで、王宮の一番近くの街に繰り出す。
丁度週末なのか、人が多くてにぎやか。だってこの国で一番賑やかな所ですもの。
前世で言う、銀座?原宿?それとも・・・?でももっと田舎っぽいわよ。だって建物の高さが違うもの。高くても三階建てぐらいね。
噴水のある広場では大道芸が繰り広げられている。
あら、あの人、バイオリン上手。周りもタンバリンとか、にぎやかで素敵。
「楽しそうね私も踊りたくなってきちゃったわ」
「トヨコちゃん。だめよ」
「大丈夫よミミお姉ちゃん。皆さんが見守ってくださっているもの」
「おや、お嬢さんどうです?上手に踊れたら、投げ銭をそのままお渡ししますよ」
「投げ銭?なあに?」
「トヨちゃん。あそこに帽子があるでしょ?」
ミミの指さす先にくたびれたシルクハットが裏返しに置いてある。
「芸が良かったらあそこにお金をいれるの。でも子供がお金を入れちゃだめよ」
「そうね。目の前で親に言われて入れに行くならいいと思うけど」
なるほど、前世でも路上パフォーマンスとかで、ギターケースにチップを入れてもらってた人を見たことがあったっけ。
「投げ銭はいらないけど、踊りたいわ」
「じゃあ、踊ってもらう曲を一曲今から演奏するよ。そして同じ曲を二回目流すから即興で踊ってみなよ」
「わかったわ!」
私がバイオリン弾きのおじさんと話していると、ミミお姉ちゃんが他の男性に合図を送ると、一般人に扮した護衛が一斉にこちらを見る。
ごめんなさいねわがままを許して。
曲が始まったわ。イントロみたいなものが二小節ほど入って、他の太鼓も参加。
あら、この曲はタンバリンは入らないのね。ふうん。
曲調はだんだん盛り上がってきてそして終わる。
「どうだい?出来るかい?」
「ええ。やってみる。
そのタンバリンを貸してくれないかしら」
「あいよ」
きれいなお姉さんが渡してくれる。
踊る場所《ステージ》もあるのよ。
「お嬢さんお名前は?」
「豊子よ」
「トヨコ?変わった名前だな」
「ふふ、外国から来たの」
「じゃあ皆さん!トヨコちゃんの飛び入りパフォーマンスですよ」
ステージの真ん中でタンバリンを下げて立つ。顔を下に向けて曲が始まるのを待って。
さっきと同じイントロが入る。
私は前世で培ったバレエの踊りをここで披露する。
でも、普通の服なのよトヨコ、バレエみたいに足を上げすぎないようにしなくちゃね。いくら何でもはしたないわよ。
それにトゥシューズじゃないから、あまりクルクル回れないかもしれないわね。
でも、今日の靴はバレエシューズぐらいにはフィットしているの。
そういえば、今日着ている服って、バレエのジゼルの始めの方の服に似ているわ。
ジゼルは悲恋のお話で、後半は幽霊として躍るんだけど、初めのダンスはこういう町娘の格好よネ。
でも、手に持っているのはタンバリンだわ。タンバリンは外国の某有名アニメの映画にもなったエスメラルダってジプシーのヒロインが持ってるので、バレエでも曲は全然違うんだけど、タンバリンを使って踊るのがあるの。
私は発表会の演目にしたことは無かったけれど、あの懐かしい文化教室で振付を習ったことはあるわ。肩や腰、ひじや膝などでタンバリンを叩きながら踊るの。
ジゼル風の服でエスメラルダね。ふふふ。
それに今の曲はもっと軽快なの。なにに例えたらいいかしら。ネズミの国の遊園地で流れてそうね。
パンッ シャラシャラ トントン
これ、歌じゃないのにサビのように、盛り上がるところが繰り返すの。
二度目、そして三度目のサビはギャラリーから私のタンバリンに合わせた手拍子が増えていく。
楽しいわね。
クルクルターンも入れて、あら、裾が広がっちゃうわ。でも大丈夫、生足は出してないもの。
パンパンパンパン シャララララ パンッ
フィニッシュ!
そして、カーテシーじゃなくてバレエ風のお辞儀。すごく久しぶりね。ああ楽しかったわ。
“わああー”
“すごい!よかったよ!”
“おねえちゃんじょうず!”
あら、小さい子にも受けちゃったわ。
「トヨコちゃん良かったわ」
「すごいよトヨコちゃん。スカウトしたいよ!」
「トヨコちゃん本当は踊りのプロでしょ」
「いえいえ、私はまだ学生で」
「ほら、あの帽子を見てよ」
「皆お金を入れるのに並んでるよ」
「まあ、こまったわ」
お金はいらないのよね。踊りたかっただけ。
「トヨコちゃん、よかったわ」
「ミミお姉ちゃん」
「あんなにクルクルして目が回ってない?」
「大丈夫!ちゃんと目が回らないように回れるもの」
前世のレッスンで身に付いたんだけどね。
「目が回らないように回るの?」
「そ、あとで教えてあげるわね。お姉ちゃん」
「ええ、教えて。貴方にそんな特技があったなんて知らなかったわ」
「でしょ」
バイオリン弾きのおじさんが私にお金を渡そうとするのを丁寧にお断りして、冒険者でもない平民ごっこの週末は終了した。
聖女としてお披露目する前の最後の自由だったかもしれないわね。
楽しかったわ。
体調も万全!だからどこかに行きたいわ!
私は、お母さまに拝み倒し、侍女のミミと久しぶりにディアナ王国の王都にお買い物に出かけることにした。
だって、明日はハルキアに向けて出発するのですもの。
やっぱり生まれ育ったこの街も好きだわ。はじめはこっちでも冒険者をしてたしね。
以前は赤金色の髪だったのに、今は金髪になっちゃっている。この国では別に珍しいわけではないわね。逆に前の髪色の方が珍しいのよ。
それに私の髪色が今は変わったことが皆に知れ渡っているわけはないわ。まだ。
私はいつものように二つのおさげにしてから、くるりと巻き付けるようにアップスタイルにして、前髪をおくれ毛のように引っ張り出して何となく顔が隠れるように微調整。
そして平民の女の子の服を着る。平民の服は普段通学の時に着ているから沢山持っているわ。幾つかはこっちのお城にも置いてあるの。
まっ白なフレンチスリーブのトップスのウエストに濃い緑色のボディス。それのフロントを赤いリボンで締めるのよ。
そして、しっかりした裏地のあるふわふわのギャザースカートにアクセントのようなエプロンがついているの。中世ヨーロッパって感じの衣装で、同じ時代設定の石造りの街にぴったり。あら私としたら設定って・・・
でもカメラがあったら撮ってほしいぐらいよ。
ミミも色違いで同じような組み合わせの衣装で、ふふふ、私たちお姉ちゃんと妹みたいね。
もちろん、私は王女だし、もっと希少な聖女になってしまったので、沢山の兵士が平民の服装で民衆に紛れ込みながら、見守ってくれているの。
でも、普段の冒険活動ももっと少ないけれど護衛の人たちが見守ってくれていたのよネ。
ハルキア王国では、王太子になるフェルゼンもいてたから、当然だわね。
でも、そんなの気にしちゃいけないわ。
私はミミと姉妹のように手を繋いで、王宮の一番近くの街に繰り出す。
丁度週末なのか、人が多くてにぎやか。だってこの国で一番賑やかな所ですもの。
前世で言う、銀座?原宿?それとも・・・?でももっと田舎っぽいわよ。だって建物の高さが違うもの。高くても三階建てぐらいね。
噴水のある広場では大道芸が繰り広げられている。
あら、あの人、バイオリン上手。周りもタンバリンとか、にぎやかで素敵。
「楽しそうね私も踊りたくなってきちゃったわ」
「トヨコちゃん。だめよ」
「大丈夫よミミお姉ちゃん。皆さんが見守ってくださっているもの」
「おや、お嬢さんどうです?上手に踊れたら、投げ銭をそのままお渡ししますよ」
「投げ銭?なあに?」
「トヨちゃん。あそこに帽子があるでしょ?」
ミミの指さす先にくたびれたシルクハットが裏返しに置いてある。
「芸が良かったらあそこにお金をいれるの。でも子供がお金を入れちゃだめよ」
「そうね。目の前で親に言われて入れに行くならいいと思うけど」
なるほど、前世でも路上パフォーマンスとかで、ギターケースにチップを入れてもらってた人を見たことがあったっけ。
「投げ銭はいらないけど、踊りたいわ」
「じゃあ、踊ってもらう曲を一曲今から演奏するよ。そして同じ曲を二回目流すから即興で踊ってみなよ」
「わかったわ!」
私がバイオリン弾きのおじさんと話していると、ミミお姉ちゃんが他の男性に合図を送ると、一般人に扮した護衛が一斉にこちらを見る。
ごめんなさいねわがままを許して。
曲が始まったわ。イントロみたいなものが二小節ほど入って、他の太鼓も参加。
あら、この曲はタンバリンは入らないのね。ふうん。
曲調はだんだん盛り上がってきてそして終わる。
「どうだい?出来るかい?」
「ええ。やってみる。
そのタンバリンを貸してくれないかしら」
「あいよ」
きれいなお姉さんが渡してくれる。
踊る場所《ステージ》もあるのよ。
「お嬢さんお名前は?」
「豊子よ」
「トヨコ?変わった名前だな」
「ふふ、外国から来たの」
「じゃあ皆さん!トヨコちゃんの飛び入りパフォーマンスですよ」
ステージの真ん中でタンバリンを下げて立つ。顔を下に向けて曲が始まるのを待って。
さっきと同じイントロが入る。
私は前世で培ったバレエの踊りをここで披露する。
でも、普通の服なのよトヨコ、バレエみたいに足を上げすぎないようにしなくちゃね。いくら何でもはしたないわよ。
それにトゥシューズじゃないから、あまりクルクル回れないかもしれないわね。
でも、今日の靴はバレエシューズぐらいにはフィットしているの。
そういえば、今日着ている服って、バレエのジゼルの始めの方の服に似ているわ。
ジゼルは悲恋のお話で、後半は幽霊として躍るんだけど、初めのダンスはこういう町娘の格好よネ。
でも、手に持っているのはタンバリンだわ。タンバリンは外国の某有名アニメの映画にもなったエスメラルダってジプシーのヒロインが持ってるので、バレエでも曲は全然違うんだけど、タンバリンを使って踊るのがあるの。
私は発表会の演目にしたことは無かったけれど、あの懐かしい文化教室で振付を習ったことはあるわ。肩や腰、ひじや膝などでタンバリンを叩きながら踊るの。
ジゼル風の服でエスメラルダね。ふふふ。
それに今の曲はもっと軽快なの。なにに例えたらいいかしら。ネズミの国の遊園地で流れてそうね。
パンッ シャラシャラ トントン
これ、歌じゃないのにサビのように、盛り上がるところが繰り返すの。
二度目、そして三度目のサビはギャラリーから私のタンバリンに合わせた手拍子が増えていく。
楽しいわね。
クルクルターンも入れて、あら、裾が広がっちゃうわ。でも大丈夫、生足は出してないもの。
パンパンパンパン シャララララ パンッ
フィニッシュ!
そして、カーテシーじゃなくてバレエ風のお辞儀。すごく久しぶりね。ああ楽しかったわ。
“わああー”
“すごい!よかったよ!”
“おねえちゃんじょうず!”
あら、小さい子にも受けちゃったわ。
「トヨコちゃん良かったわ」
「すごいよトヨコちゃん。スカウトしたいよ!」
「トヨコちゃん本当は踊りのプロでしょ」
「いえいえ、私はまだ学生で」
「ほら、あの帽子を見てよ」
「皆お金を入れるのに並んでるよ」
「まあ、こまったわ」
お金はいらないのよね。踊りたかっただけ。
「トヨコちゃん、よかったわ」
「ミミお姉ちゃん」
「あんなにクルクルして目が回ってない?」
「大丈夫!ちゃんと目が回らないように回れるもの」
前世のレッスンで身に付いたんだけどね。
「目が回らないように回るの?」
「そ、あとで教えてあげるわね。お姉ちゃん」
「ええ、教えて。貴方にそんな特技があったなんて知らなかったわ」
「でしょ」
バイオリン弾きのおじさんが私にお金を渡そうとするのを丁寧にお断りして、冒険者でもない平民ごっこの週末は終了した。
聖女としてお披露目する前の最後の自由だったかもしれないわね。
楽しかったわ。
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