24 / 35
24【転生してもボッチ】
しおりを挟む
どうしてどうして?あたしはゲームの主人公じゃないの?
ピンク色の髪は聖女で主人公だったはず。
〈竜の庭のパーティ〉イベントでは、フェルゼン殿下や色々な攻略対象とイチャイチャできるはずだったのに。何処で間違えたのかしら。
それに、あれがマリー?乙女ゲームの悪役令嬢?あれじゃアイドル育成ゲームに出て来そうな女の子じゃない。
あたしは、佐倉理沙。
不動産で成功した父が買ってくれたタワーマンションの最上階で暮らしていた。働かなくても父が十分なお小遣いを入れてくれていたし、部屋に遊びに来てくれる友達も私を大事にしてくれていたわ。
大学は出たけど、あたしは父に贅沢をさせてもらっていたから、働くこともなく、毎日遊んでいた。
それでも、あたしが三十路前後になると、大学からの付き合いだった女友達が、疎遠になっていき、いつの間にか結婚してたり(式に呼んでもらえなから男友達にその情報を聞いた)、最初は調子よく付きまとっていた数人の男友達も仕事を優先したりするようになって、付き合いが悪くなっていった。最後はヒモだった男さえ、ある日働き出して他の家庭的な女と結婚して出て行ってしまった。
あたしはタワーマンションで、外出も億劫になり、通販で買い物をしながら、外へ出ることもなく引き籠ったまま、ネットや携帯のゲームをしたりして過ごしていた。それも、そのうち何をやる気もなくなっていて、気が付けば・・・生まれ変わっていた。
生まれ変わったところは、家畜の匂いのひどい農家だった。上に兄姉が何人かいて、みな幼いときから力仕事をさせられていた。
あたしは前世で小説や動画などもよく見ていたから、何となくよくある転生が出来たのかと少し喜んでいた。でも環境は最悪よ。
田舎でも唯一文化的な場所が教会だった。転生者特典なのか、教会に置いてあった日本語と違うはずの文字は読めた。
そして、気が付いた。あたしは遊んだことのあるゲームの世界の主人公に生まれ変わっていたことを。
ピンク色の髪だったし、幼いけれど見覚えのある顔だったし、聖女として今度も、お金に不自由することなく、攻略対象に逆ハーレム状態にしてもらえるはずだわ。
なんとか、魔力測定で、聖属性の数字が1出たので、聖女認定してもらい、男爵の養女になることが出来た。
男爵や、そこに派遣されている皇帝から派遣された人に、勉強して教養を身につけるよう
言われていたけど、前世では大学まで行ったのよ?教養なんて改めて勉強する必要はないわね。もともと読めた本を音読して見せたり、小学生ぐらいの計算能力を披露したりして、勉強が出来ることを示すと何も言われなくなった。
それに、聖女なんだし他の魔法の練習なんて不要だわ。聖女としての活動?聖女の力なんてめったに使うものじゃないのよ?だってまたあの家畜臭いところを回るんでしょう?いやよ。だから何もやらなかったわ。面倒くさいもの。養父母の男爵家の領地に近寄ることもなく、帝都のお茶会に毎週呼ばれて、貴族ごっこを楽しんでいた。
ある日、ハルキア王国へ留学に行くように言われた。その学園に入学するのは、男爵令嬢になった私の義務だと言われた。
それはもちろん行くわよ。攻略対象達にアタックするために生まれたんだもの。
ゲームで一番推しだった、四年年上のフェルゼン殿下に一年でも早く会いたいし、一年でも長く一緒にいたいから、少し頑張って、一年飛び級して入学した。大卒の私からすればこの世界の中学入試は簡単だったし、男爵家は貧乏で、領地も田舎で、貴族とは言えない寂れた暮らしだったもの。私が養女になる前は不作が続いて借金もあったそうだし。
学園に入学する前日、私は街角でぶつかるイベントがあったことを思い出して、用事もないのに冒険者ギルドの近くを走ってみたら、三番目ぐらいに推してた悪役令嬢の兄のナルシオ王子にぶつかる事が出来た。
あれ?フェルゼン殿下にぶつかるのじゃなかったっけ。一年ずらしちゃったから変わったのかしら。まあいいわ。
だけど、入学してみてびっくり、フェルゼン王子はどこを探してもいないのよ。それどころか生徒会長がナルシオ王子の方に変わっていた。そして、ナルシオの妹の悪役令嬢も見当たらなかった。まあ虐められるのは嫌だからいいけど、でも会ったら返り討ちにする自信はあるわ。
そして、とうとう〈竜の庭のパーティー〉のイベントにのぞんだ。
さすがに王宮のパーティーならフェルゼン王子は来るでしょう。
そのイベントにはいろいろな出会いがあるはずだから。
皇太子のグラル殿下は、普段から小姑のようにぐちぐちと注意をしてくる。
「いいか!フェルゼン殿下や他の姫君たちにはくれぐれも失礼の無いように気を付けてくれよ!それから、いつもみたいに自分から上の貴族に話しかけないようにしなさい。
君は学力はあったかもしれないが教養は足りていないからな」
うるさいわね。エスコートしながらそんな会話なんて、グラルこそ教養がないのじゃない?と心では思ってても口には出さないわ。あたしは聖女ですもの。
「はいはい、わかりました」
竜の庭のパーティーでは、私の居場所はあまりなかった。唯一悪役令嬢のはずのマリー王女があたしに声を掛けて無邪気にドラゴンが持ってる丸い石を触るように誘う。
タッチライトみたいで面白い。こういうの、大型ショッピングモールの雑貨店にあったな。この世界に来ても似たようなのを触った気がする。あれはたしか・・・教会?
ふっと見ると、側に立っていた鎧を着た護衛がいなくなっていた。
ピンク色の髪は聖女で主人公だったはず。
〈竜の庭のパーティ〉イベントでは、フェルゼン殿下や色々な攻略対象とイチャイチャできるはずだったのに。何処で間違えたのかしら。
それに、あれがマリー?乙女ゲームの悪役令嬢?あれじゃアイドル育成ゲームに出て来そうな女の子じゃない。
あたしは、佐倉理沙。
不動産で成功した父が買ってくれたタワーマンションの最上階で暮らしていた。働かなくても父が十分なお小遣いを入れてくれていたし、部屋に遊びに来てくれる友達も私を大事にしてくれていたわ。
大学は出たけど、あたしは父に贅沢をさせてもらっていたから、働くこともなく、毎日遊んでいた。
それでも、あたしが三十路前後になると、大学からの付き合いだった女友達が、疎遠になっていき、いつの間にか結婚してたり(式に呼んでもらえなから男友達にその情報を聞いた)、最初は調子よく付きまとっていた数人の男友達も仕事を優先したりするようになって、付き合いが悪くなっていった。最後はヒモだった男さえ、ある日働き出して他の家庭的な女と結婚して出て行ってしまった。
あたしはタワーマンションで、外出も億劫になり、通販で買い物をしながら、外へ出ることもなく引き籠ったまま、ネットや携帯のゲームをしたりして過ごしていた。それも、そのうち何をやる気もなくなっていて、気が付けば・・・生まれ変わっていた。
生まれ変わったところは、家畜の匂いのひどい農家だった。上に兄姉が何人かいて、みな幼いときから力仕事をさせられていた。
あたしは前世で小説や動画などもよく見ていたから、何となくよくある転生が出来たのかと少し喜んでいた。でも環境は最悪よ。
田舎でも唯一文化的な場所が教会だった。転生者特典なのか、教会に置いてあった日本語と違うはずの文字は読めた。
そして、気が付いた。あたしは遊んだことのあるゲームの世界の主人公に生まれ変わっていたことを。
ピンク色の髪だったし、幼いけれど見覚えのある顔だったし、聖女として今度も、お金に不自由することなく、攻略対象に逆ハーレム状態にしてもらえるはずだわ。
なんとか、魔力測定で、聖属性の数字が1出たので、聖女認定してもらい、男爵の養女になることが出来た。
男爵や、そこに派遣されている皇帝から派遣された人に、勉強して教養を身につけるよう
言われていたけど、前世では大学まで行ったのよ?教養なんて改めて勉強する必要はないわね。もともと読めた本を音読して見せたり、小学生ぐらいの計算能力を披露したりして、勉強が出来ることを示すと何も言われなくなった。
それに、聖女なんだし他の魔法の練習なんて不要だわ。聖女としての活動?聖女の力なんてめったに使うものじゃないのよ?だってまたあの家畜臭いところを回るんでしょう?いやよ。だから何もやらなかったわ。面倒くさいもの。養父母の男爵家の領地に近寄ることもなく、帝都のお茶会に毎週呼ばれて、貴族ごっこを楽しんでいた。
ある日、ハルキア王国へ留学に行くように言われた。その学園に入学するのは、男爵令嬢になった私の義務だと言われた。
それはもちろん行くわよ。攻略対象達にアタックするために生まれたんだもの。
ゲームで一番推しだった、四年年上のフェルゼン殿下に一年でも早く会いたいし、一年でも長く一緒にいたいから、少し頑張って、一年飛び級して入学した。大卒の私からすればこの世界の中学入試は簡単だったし、男爵家は貧乏で、領地も田舎で、貴族とは言えない寂れた暮らしだったもの。私が養女になる前は不作が続いて借金もあったそうだし。
学園に入学する前日、私は街角でぶつかるイベントがあったことを思い出して、用事もないのに冒険者ギルドの近くを走ってみたら、三番目ぐらいに推してた悪役令嬢の兄のナルシオ王子にぶつかる事が出来た。
あれ?フェルゼン殿下にぶつかるのじゃなかったっけ。一年ずらしちゃったから変わったのかしら。まあいいわ。
だけど、入学してみてびっくり、フェルゼン王子はどこを探してもいないのよ。それどころか生徒会長がナルシオ王子の方に変わっていた。そして、ナルシオの妹の悪役令嬢も見当たらなかった。まあ虐められるのは嫌だからいいけど、でも会ったら返り討ちにする自信はあるわ。
そして、とうとう〈竜の庭のパーティー〉のイベントにのぞんだ。
さすがに王宮のパーティーならフェルゼン王子は来るでしょう。
そのイベントにはいろいろな出会いがあるはずだから。
皇太子のグラル殿下は、普段から小姑のようにぐちぐちと注意をしてくる。
「いいか!フェルゼン殿下や他の姫君たちにはくれぐれも失礼の無いように気を付けてくれよ!それから、いつもみたいに自分から上の貴族に話しかけないようにしなさい。
君は学力はあったかもしれないが教養は足りていないからな」
うるさいわね。エスコートしながらそんな会話なんて、グラルこそ教養がないのじゃない?と心では思ってても口には出さないわ。あたしは聖女ですもの。
「はいはい、わかりました」
竜の庭のパーティーでは、私の居場所はあまりなかった。唯一悪役令嬢のはずのマリー王女があたしに声を掛けて無邪気にドラゴンが持ってる丸い石を触るように誘う。
タッチライトみたいで面白い。こういうの、大型ショッピングモールの雑貨店にあったな。この世界に来ても似たようなのを触った気がする。あれはたしか・・・教会?
ふっと見ると、側に立っていた鎧を着た護衛がいなくなっていた。
20
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる