元夫婦のきずなはゲームの運命を超えるのか~ファミリーリインカーネーション~

前野羊子

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24【転生してもボッチ】

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 どうしてどうして?あたしはゲームの主人公じゃないの?
 ピンク色の髪は聖女で主人公だったはず。

 〈竜の庭のパーティ〉イベントでは、フェルゼン殿下や色々な攻略対象とイチャイチャできるはずだったのに。何処で間違えたのかしら。
 それに、あれがマリー?乙女ゲームの悪役令嬢?あれじゃアイドル育成ゲームに出て来そうな女の子じゃない。

 あたしは、佐倉理沙。
 不動産で成功した父が買ってくれたタワーマンションの最上階で暮らしていた。働かなくても父が十分なお小遣いを入れてくれていたし、部屋に遊びに来てくれる友達も私を大事にしてくれていたわ。
 
 大学は出たけど、あたしは父に贅沢をさせてもらっていたから、働くこともなく、毎日遊んでいた。

 それでも、あたしが三十路前後になると、大学からの付き合いだった女友達が、疎遠になっていき、いつの間にか結婚してたり(式に呼んでもらえなから男友達にその情報を聞いた)、最初は調子よく付きまとっていた数人の男友達も仕事を優先したりするようになって、付き合いが悪くなっていった。最後はヒモだった男さえ、ある日働き出して他の家庭的な女と結婚して出て行ってしまった。

 あたしはタワーマンションで、外出も億劫になり、通販で買い物をしながら、外へ出ることもなく引き籠ったまま、ネットや携帯のゲームをしたりして過ごしていた。それも、そのうち何をやる気もなくなっていて、気が付けば・・・生まれ変わっていた。

 生まれ変わったところは、家畜の匂いのひどい農家だった。上に兄姉が何人かいて、みな幼いときから力仕事をさせられていた。
 あたしは前世で小説や動画などもよく見ていたから、何となくよくある転生が出来たのかと少し喜んでいた。でも環境は最悪よ。

 田舎でも唯一文化的な場所が教会だった。転生者特典なのか、教会に置いてあった日本語と違うはずの文字は読めた。

 そして、気が付いた。あたしは遊んだことのあるゲームの世界の主人公に生まれ変わっていたことを。
 ピンク色の髪だったし、幼いけれど見覚えのある顔だったし、聖女として今度も、お金に不自由することなく、攻略対象に逆ハーレム状態にしてもらえるはずだわ。

 なんとか、魔力測定で、聖属性の数字が1出たので、聖女認定してもらい、男爵の養女になることが出来た。

 男爵や、そこに派遣されている皇帝から派遣された人に、勉強して教養を身につけるよう
言われていたけど、前世では大学まで行ったのよ?教養なんて改めて勉強する必要はないわね。もともと読めた本を音読して見せたり、小学生ぐらいの計算能力を披露したりして、勉強が出来ることを示すと何も言われなくなった。

 それに、聖女なんだし他の魔法の練習なんて不要だわ。聖女としての活動?聖女の力なんてめったに使うものじゃないのよ?だってまたあの家畜臭いところを回るんでしょう?いやよ。だから何もやらなかったわ。面倒くさいもの。養父母の男爵家の領地に近寄ることもなく、帝都のお茶会に毎週呼ばれて、貴族ごっこを楽しんでいた。

 ある日、ハルキア王国へ留学に行くように言われた。その学園に入学するのは、男爵令嬢になった私の義務だと言われた。

 それはもちろん行くわよ。攻略対象達にアタックするために生まれたんだもの。

 ゲームで一番推しだった、四年年上のフェルゼン殿下に一年でも早く会いたいし、一年でも長く一緒にいたいから、少し頑張って、一年飛び級して入学した。大卒の私からすればこの世界の中学入試は簡単だったし、男爵家は貧乏で、領地も田舎で、貴族とは言えない寂れた暮らしだったもの。私が養女になる前は不作が続いて借金もあったそうだし。

 学園に入学する前日、私は街角でぶつかるイベントがあったことを思い出して、用事もないのに冒険者ギルドの近くを走ってみたら、三番目ぐらいに推してた悪役令嬢の兄のナルシオ王子にぶつかる事が出来た。
 あれ?フェルゼン殿下にぶつかるのじゃなかったっけ。一年ずらしちゃったから変わったのかしら。まあいいわ。

 だけど、入学してみてびっくり、フェルゼン王子はどこを探してもいないのよ。それどころか生徒会長がナルシオ王子の方に変わっていた。そして、ナルシオの妹の悪役令嬢も見当たらなかった。まあ虐められるのは嫌だからいいけど、でも会ったら返り討ちにする自信はあるわ。

 そして、とうとう〈竜の庭のパーティー〉のイベントにのぞんだ。
 さすがに王宮のパーティーならフェルゼン王子は来るでしょう。
 そのイベントにはいろいろな出会いがあるはずだから。

 皇太子のグラル殿下は、普段から小姑のようにぐちぐちと注意をしてくる。
 「いいか!フェルゼン殿下や他の姫君たちにはくれぐれも失礼の無いように気を付けてくれよ!それから、いつもみたいに自分から上の貴族に話しかけないようにしなさい。
 君は学力はあったかもしれないが教養は足りていないからな」
 うるさいわね。エスコートしながらそんな会話なんて、グラルこそ教養がないのじゃない?と心では思ってても口には出さないわ。あたしは聖女ですもの。
 「はいはい、わかりました」

 竜の庭のパーティーでは、私の居場所はあまりなかった。唯一悪役令嬢のはずのマリー王女があたしに声を掛けて無邪気にドラゴンが持ってる丸い石を触るように誘う。
 タッチライトみたいで面白い。こういうの、大型ショッピングモールの雑貨店にあったな。この世界に来ても似たようなのを触った気がする。あれはたしか・・・教会?

 ふっと見ると、側に立っていた鎧を着た護衛がいなくなっていた。


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