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プロスペロ王国編(ミカエル視点)
カスミソウの花言葉は?
しおりを挟む明日は久々にシャランとゆっくり出来る事になった。最近では、約束していた食事も共に出来ないほどに、お互いに忙しかったのだ。
「シャラン、会いたい……。」
夕食を摂りながら、思わず呟く。本当に、帝国……いや、プロスペロ王国に来るまで、こんなに自分が弱気になるなんて思いもよらなかった。
シャランはあの時、ちゃんと返事をすると言っていた。しかし、その後はお互いに想像以上に忙しくなり、そのままなのだ。
もしかしたら、忘れられているのか?
───ズキリと心臓が軋む。
その程度なのだろうか? シャランにとって私の存在など。すっかり食欲が失せ、残りを下げてもらった。
「ミカエル様らしくないですよ。いつもの貴方なら、攫ってでも手に入れるでしょうに。」
「私も信じられないくらい、臆病になっていると自覚している。今まで私に愛を乞うてきた者を、手酷く振ってきた事への報いか?」
私は、相手にこんな思いをさせてきたのか。そうは思っても、謝罪したいなどという気持ちは湧いてこない辺りが、『人間嫌い』と言われる所以なのだろうな。
何も手につかず、ぼんやりと外を眺める。シャランは今、守られるだけの人物ではなくなってきている。
現に、忙しく新しいことに向かい動きまわっていた。生き生きと前へ進むシャランも愛おしいのは確かだが、このままでは離れ離れになってしまうのではないだろうか。
────それは嫌だ!
私の心が叫んだ。
その時、手紙と小花の小さな花束を持って、エイデンがやって来た。
「良かったな。お待ちかねの手紙、しかも花束付きだぞ。」
「───! そうか!」
先程とは違い、跳ね上がる心臓に我ながら苦笑してしまった。受け取った手紙と可愛らしい花束。
まずは、手紙を読む。シャランの現在の状況と私を労う言葉、明日の事を楽しみにしている事が判り、私も先程の憂いが吹き飛んだ。
大事に手紙をしまうと、可愛らしい小花の花束を手に取った。
「カスミソウ……か? 調べて見るか。」
調べた私は、その花言葉に頭を悩ませていると、エイデンが覗き込む。
「無垢の愛・感謝・幸福・清らかな心・無邪気・親切か。全部良い意味だな。」
「今回のことに関して『感謝』かとも思うのだが、本当にそれだけなのだろうか。言葉で既に伝えられたし今更な気がする。
シャランは、どうしてカスミソウを私にくれたのだろう。」
そこにおずおずと、侍従が声を上げた。
「あの、差し出がましいのですが、よろしいでしょうか?」
「どうした?」
「あまり知られてはおりませんが、私の出身地ではカスミソウを『会いたい』と言う意味で贈る習慣があります。他の花と組み合わせる事が多いのですが……。
ミカエル殿下は、シャラン殿下に花に例えられた事はありますか?」
「───いや。ただ『太陽みたいだ』とは言われたな。」
「もしかしたら、ヒマワリかもしれませんね。ヒマワリの花言葉にも良い意味がたくさんありますが、『貴方だけを見つめる』というものがあります。」
「そうか! でかした。後で褒美をとらせる。」
侍従は一礼をして、所定の位置に戻った。
「へえ。良かったですね、ミカエル様。」
「流石に、ヒマワリは自意識過剰の気もするのだが、『会いたい』なら、嬉しいな。」
「明日、聞いてみたらどうですか? 花に例えるなら何なのか。」
「それは確かに気になるな。シャランに聞いてみよう。」
シャランも、もしかしたら会いたいと思ってくれていると思うだけで、こんなにも心が浮き立つ。
「少し、仕事を進めておくか。
なにか摘むものを用意してくれるか?
先程余り食べられなかったから、小腹が空いた。」
それを聞いた侍従は、心なしかホッとした様子で部屋を出た。
「シャラン殿下に感謝だな。みんな、ミカエル様の事心配していたんだぞ。」
エイデンも、安心した様に頷いている。
「そうだったのか。気付かなかったな。」
「皆、プロだし誰かさんは人の心に鈍感だからな。」
「否定はしない。エイデンも、もう下がって良いぞ。」
「では、明日の朝参ります。あまり遅くまで頑張りすぎませんように。」
「わかってる。シャランとの約束に支障をきたすわけがないだろう。」
エイデンはニヤッと笑うと、侍従が戻ったのと入れ替わりに部屋を下がった。
私は書類を手に取り執務に取りかかったのだった。
机には、カスミソウが飾られていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
花言葉
カスミソウ「会いたい」「感謝」
ヒマワリ「あなただけを見つめる」
※カスミソウの花言葉「会いたい」は偶然見つけました。
他のところでは見かけなかったので、実際には無さそうです。
気になる人は、「カスミソウ」「花言葉」「会いたい」で検索してみてください。
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・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
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