【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

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第四章 交錯

手紙

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 良太が違う部屋で過ごすと言った翌朝、良太が部屋へとやって来て、図書館へ行くための魔法石を渡してくれた。良太は昨日に引き続き不機嫌だったけど、図書館にまた行けてスハンに会えるということが嬉しくて気にならなかった。はやる気持ちを抑えて図書館へと向かう。

「スハン!」

 転移してすぐにスハンの後ろ姿を遠目に見つけて思わず呼んでしまう。大きな声を出してしまい、スハンにも聞こえたようで振り向いてくれる。図書館で大きな声を出して、やってしまった……という後悔もあったけど、朝早くに来たおかげで利用者はおらずその声を聞いた者はスハン以外いないようだと安心する。
 スハンも駆け足で寄ってきてくれる。彼も図書館だからと気にしているのか、周りに人がいないことを確認しつつ、それでも彼の中では早足で来てくれていることが分かる。

「スハン、心配かけてごめんね……」

 最後にスハンに会ったのは大輝さんと良太が出会ってしまった時だ。あの時、図書館で目立っていたので、俺と良太が消えた後の収拾をしてもらったことを考えると申し訳なさでもいっぱいだった。
 
 それまでにも良太がスハンに何か言ってスハンの顔色が曇ることがあったので、本当にスハンには迷惑をかけてばかりだった……。そんなことを考えて俯いてしまったら、そんな俺の様子に気づいてスハンが俺の手を取ってくれた。パッとスハンの顔を見ると大丈夫だよという風に微笑んでくれた。

「ありがとう……」

 お礼を言うとスハンも頷いて返事をしてくれた。スハンがおもむろにズボンのポケットから紙を出して俺に手渡す。その紙を開くと、日本語で文字が書かれていて大輝さんからの手紙だと分かる。
 どうして大輝さんからの手紙をスハンが持っているんだろう?と思いながらも手紙を読み進める。

●○●○●○●○●○●
ユグリルに頼んでこの手紙をスハンに届けてもらった。
弟とのことをあまり話したがらないと分かっていたのに悩みを聞くことができなくてすまなかった。
ただ優馬が良太に対して怯えていることは分かった。だから勝手に色々とさせてもらう。
状況が変わって戸惑うかもしれないが、優馬が図書館へ行けるようにラウリアに手配したから言葉の勉強とスハンの手伝いをして欲しい。
●○●○●○●○●○●

「…………!」

 どうして大輝さんがここまで気にかけてくれるのか分からなかった。以前、大輝さんに弟がいると言ってたけど、それだけでここまでしてくれるものなのだろうか?
 でも、今、図書館へ行けるようになったのは、大輝さんのおかげだと言うことは分かった。
 嬉しくて笑顔でスハンを見るとそれに応えるかのようにスハンも笑ってくれる。

 そしてちょっと自分も恥ずかしながらポケットから紙切れを渡す。あの部屋には手紙なんてものはなく、勉強用にと以前図書館で少しもらっていた紙しかなかったのだ。スハンは首を傾げながらもその紙切れを受け取ってくれて、中を見るとクスッと笑った後にこちらを見てこちらの世界で『ありがとう』と言ってくれた。
 
 スハンにありがとうと綴った紙を渡したのだ。でも、この世界の言葉は発音も書き方も難しくて、特に文字はミミズみたいなものが多く、自分でも上手く書けていないことは分かっていた。伝わるか分からなかったけど、スハンは分かってくれたようで嬉しかった。

 この日から日中は図書館で言葉の勉強とスハンの手伝いをすることになった。スハンも合間に言葉を教えてれる。と言っても大輝さんのように日本語が分かる訳ではないので、絵を描いて伝えてくれたり、俺が書いた文字の修正をしてくれる感じだ。

 夜は良太はこの前言っていたように別の部屋で過ごし、ご飯の時は良太が呼びに来て、この前食事した同じ部屋で一緒に食事を取るように生活が変わっていった。食事した部屋は最初の日以外、誰も入ってくることはなく、良太が結界を張っているようだった。

 夜も別に過ごしているので良太に抱かれることはなくなったものの、相変わらず部屋から去る時にはキスをしようとしたり、この前は食事する部屋で押し倒されそうになった。
 俺は「こんなところでは絶対に嫌だ」と抵抗して、グラスを割ったら渋々押し倒すことは諦めたようだった。大輝さんが同じお城にいるという空間で良太に抱かれるのが嫌だったから必死に抵抗した。

 結界を張られているしバレることはないのだろうけど、それでも嫌だった。夜、部屋で抱かれるんじゃないかといつも身構えるけど、良太はきっちり時間になると出て行くので、おそらく夜は何かしらの理由で来ないようにしているみたいだった。

 そして、大輝さんとは会えていないものの、良太にも大輝さんには会わないように念押しされていたから、これでいいのかもしれない……。もし俺と大輝さんが会ったら、良太が俺たちの関係を大輝さんだけでなく、スハンにも全てバラすと言ったのだ。
 全てというのは”実の兄弟で行為をしている”ということだろう……。俺がそのことを言われるのを嫌がっているのを楽しむかのように良太はいつも言うので、悔しくて唇を噛むしかなかった。

「妊娠する方法ももちろん調べてるんだよね?」

 ある日、食事中に良太が口を開いた。図書館へ行くことの許可がまた出た時、「図書館に行かせてあげるんだから妊娠する方法は引き続き調べてよね」と良太に念押しされたのだ。バラされたくなければという脅し文句付きで。

 その時は「分かった」と返事するしかなかったけど、図書館へ行き、大輝さんからの手紙で図書館へ行けるように便宜してくれたのは大輝さんだと言うのに、さも良太が許可してあげたという風な言い方に腹が立った。
 でも、大輝さんが計らってくれたことを知っているとは言えないので、良太には従うしかない。そこで、ふと疑問に思っていたことを口にした。

「その……男同士で子供は普通生まれないって思うんだけど、良太はどうして男同士でも子供が生まれると思うんだ?」

「確かに以前、王子も男同士で結婚しても子供は生まれないって言ってたよ。でもさ、王子はこう言ってたんだ”女性と結婚して子供を産んだとしても魔力が遺伝するかは微妙。だから遺伝するか分からない子供の魔力に期待するんじゃなくて、魔力が強い男同士で結婚して一族の絆を強くする方が多い”って。でも、そしたら魔力のある人間はもっと少なくてもいいはずなのに、魔力のある人間が多いと思うんだよね、この世界。だから、調べてみる価値はあるかなって」

「そう……なんだ……」

 俺のように魔力が全くない人間は珍しい。ほとんどの人間が魔力を少なからず持っているけど、良太の言う魔力の強い人間が本当に多いのかは俺には分からなかった。

「ふふっ……ゆうにぃとの子供楽しみだな……」

 抱かれなくなってから数日しか経っていないけど、このままこんな生活が送れるんじゃないかって期待した俺とは裏腹に良太のまだ俺を妊娠させたいという考えは変わっていないようだった。
 嫌だな……と思っていることがバレないように小さくため息をついた。
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