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意外な展開 1
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頓宮はるみが本当の私ではあるけれど――。
トイレの鏡に映る自分の顔をマジマジと見つめる。
さっきまでしていた化粧は落とし、あえて厚塗りの化粧を施す。そこには地味なアラサー女子の顔。
おばちゃん……だな間違いなく。
結上げられた黒髪、アホ毛を出しているのはわざと。流行遅れの銀縁眼鏡。当然、唇も赤くはない。ベージュ系のちょっと落ち着いた色。
誰が見ても三十オーバーのおばちゃんを演出している。
「あなたは頓宮はるみよね?」
鏡に問いかけたところで答えが返ってくるはずもない。
おばちゃん、おばちゃんと言われ続ける生活。
気にしていないと言えば嘘になる。
仕事の為とは言え、このままおばちゃん街道まっしぐらになりそうな自分が怖い。
趣味、志向、立ち振る舞い。
何となく最近、時代劇とか好んで観るようになってきたし。
ポテチよりおせんべいの方が美味しいし。
社員さんたちに何気なくかけられる『おばちゃん』に洗脳されてるのかしら、私。
「なんか納得いかないなぁ」
「朝食のまかないのこと、まだ根に持ってるの?」
はっ!?
息が止まると思った。
飯島さんだ。トイレに入っていたなんて。
「どんな事情があるにせよ、まかないジャンケンにいなかったトンちゃんが悪いのよ。これは決まりなんだから」
私は話を合わせることにした。
「そうですよねぇ。私だって文句を言うつもりはないんですけど、やっぱりコンビニのおにぎり代痛いですよ」
「そりゃそうよ。時給の十分の一がおにぎり代だもんね。あんなに働いて稼いだお金の一部が冗談みたいに一瞬で消えちゃう。百円でも節約するのが主婦なんだから。あら?トンちゃんまだ独身だったわねー」
最後は絶対嫌味だな。
ここで働くパートさんは、ほとんどこの近所のマンションに住んでいる。なので早朝とお昼の両方シフトに入る場合、一旦家に帰る人もいる。
そして旦那さんのお弁当を作って送り出したり、掃除洗濯をして再び出勤して来る。飯島さんやひるちゃんもそうだ。主婦ってえらいと思う。
でも、今日の飯島さんは憎たらしい。
朝の洗い物しなかったこと、まだ根に持ってるの飯島さんじゃないの?
「今日のお昼B定食は酢豚だから、トンちゃんは盛り付けに入らない方が良いわね~」
ケラケラ笑いながら、飯島さんは先にトイレを出て行ったのだった。
シフトの予定では会計のはずだったのに、パートのひとりが急にお休みして私は麺類の盛り付けになってしまった。酢豚の盛り付けよりはマシだけれど。
どうせおじさん達が、下らないギャグをかましてくるに違いないのだから。
「おばちゃん、シナチク入れないで。俺嫌いなんだ」
「はいはい、シナチク無しね」
受け答えまで中年風になって来る自分が怖い。
「えーと、お次のかたはキツネうどんね」
うどんをサッとお湯に通して、油揚げとネギをパパッと乗せる。
親指がお汁に入らないようにどんぶりを掴むと、「お待ちどうさま」トレーにのせる。
「はい、お次のかたは……」
!!
山下さんだ。一緒にいるのは唯ちゃんの同期の確か……。
「草子なら大丈夫だって。綺麗なんだからもう一度チャレンジしてみなよ」
「う、うん。そうだよね、私人生で一度も振られたことないし」
二人の会話に耳を立てる。
「清水さん、唯と別れるって言ってたし」
思い出したっ。清水君の営業補佐をしてる、池入ひなの!
やっぱり繋がってたんだ。でも以外だった。タイプの違う二人なのに。
後で分かったことなのだけれど、この二人は大学は違うものの、サークルが一緒だったのだ。
まさか、ひなのが主犯?
「ちょっと、おばちゃんっ。天ぷらうどん二つ早くしてよっ」
二人に睨まれた。
「は、はい。ごめんなさいね。海老天が無くて取りに行ってもらってたから。あー来た来た」
私はその場を離れ誰もいない冷蔵庫の影に隠れて、海老天を受け取るフリをする。そして三秒待って出て来る。手元は当然隠して。
「唯は別れたくないって、ゴネてるらしいよ。ウケない?」
「あの子には絶対負けたくないの。どうして私じゃなくてあの子を選んだのか全然分かんない」
「お待たせ、お待たせ。海老天来ましたよ~」
我ながら演技が上手いと感心しながら、天ぷらうどんをそれぞれのトレーに乗せると、二人が席に着くまで視線で追う。
山下さんと、池入さん……か。
それにしても、清水君は本当に唯ちゃんと別れる気なのだろうか?
絶対に別れたくない彼女の気持ちを聞いたからには、二人の破局をなんとしても阻止したい。
犯人捜しの前に清水君の気持ちも聞いてみるか。
「はい、味噌ラーメンお待ちどうさまっ」
「おっ、トンちゃん今日も元気だねっ」
「元気だけが取り柄なんで」
私は次の行動計画を頭の中で練っていたのだった。
トイレの鏡に映る自分の顔をマジマジと見つめる。
さっきまでしていた化粧は落とし、あえて厚塗りの化粧を施す。そこには地味なアラサー女子の顔。
おばちゃん……だな間違いなく。
結上げられた黒髪、アホ毛を出しているのはわざと。流行遅れの銀縁眼鏡。当然、唇も赤くはない。ベージュ系のちょっと落ち着いた色。
誰が見ても三十オーバーのおばちゃんを演出している。
「あなたは頓宮はるみよね?」
鏡に問いかけたところで答えが返ってくるはずもない。
おばちゃん、おばちゃんと言われ続ける生活。
気にしていないと言えば嘘になる。
仕事の為とは言え、このままおばちゃん街道まっしぐらになりそうな自分が怖い。
趣味、志向、立ち振る舞い。
何となく最近、時代劇とか好んで観るようになってきたし。
ポテチよりおせんべいの方が美味しいし。
社員さんたちに何気なくかけられる『おばちゃん』に洗脳されてるのかしら、私。
「なんか納得いかないなぁ」
「朝食のまかないのこと、まだ根に持ってるの?」
はっ!?
息が止まると思った。
飯島さんだ。トイレに入っていたなんて。
「どんな事情があるにせよ、まかないジャンケンにいなかったトンちゃんが悪いのよ。これは決まりなんだから」
私は話を合わせることにした。
「そうですよねぇ。私だって文句を言うつもりはないんですけど、やっぱりコンビニのおにぎり代痛いですよ」
「そりゃそうよ。時給の十分の一がおにぎり代だもんね。あんなに働いて稼いだお金の一部が冗談みたいに一瞬で消えちゃう。百円でも節約するのが主婦なんだから。あら?トンちゃんまだ独身だったわねー」
最後は絶対嫌味だな。
ここで働くパートさんは、ほとんどこの近所のマンションに住んでいる。なので早朝とお昼の両方シフトに入る場合、一旦家に帰る人もいる。
そして旦那さんのお弁当を作って送り出したり、掃除洗濯をして再び出勤して来る。飯島さんやひるちゃんもそうだ。主婦ってえらいと思う。
でも、今日の飯島さんは憎たらしい。
朝の洗い物しなかったこと、まだ根に持ってるの飯島さんじゃないの?
「今日のお昼B定食は酢豚だから、トンちゃんは盛り付けに入らない方が良いわね~」
ケラケラ笑いながら、飯島さんは先にトイレを出て行ったのだった。
シフトの予定では会計のはずだったのに、パートのひとりが急にお休みして私は麺類の盛り付けになってしまった。酢豚の盛り付けよりはマシだけれど。
どうせおじさん達が、下らないギャグをかましてくるに違いないのだから。
「おばちゃん、シナチク入れないで。俺嫌いなんだ」
「はいはい、シナチク無しね」
受け答えまで中年風になって来る自分が怖い。
「えーと、お次のかたはキツネうどんね」
うどんをサッとお湯に通して、油揚げとネギをパパッと乗せる。
親指がお汁に入らないようにどんぶりを掴むと、「お待ちどうさま」トレーにのせる。
「はい、お次のかたは……」
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山下さんだ。一緒にいるのは唯ちゃんの同期の確か……。
「草子なら大丈夫だって。綺麗なんだからもう一度チャレンジしてみなよ」
「う、うん。そうだよね、私人生で一度も振られたことないし」
二人の会話に耳を立てる。
「清水さん、唯と別れるって言ってたし」
思い出したっ。清水君の営業補佐をしてる、池入ひなの!
やっぱり繋がってたんだ。でも以外だった。タイプの違う二人なのに。
後で分かったことなのだけれど、この二人は大学は違うものの、サークルが一緒だったのだ。
まさか、ひなのが主犯?
「ちょっと、おばちゃんっ。天ぷらうどん二つ早くしてよっ」
二人に睨まれた。
「は、はい。ごめんなさいね。海老天が無くて取りに行ってもらってたから。あー来た来た」
私はその場を離れ誰もいない冷蔵庫の影に隠れて、海老天を受け取るフリをする。そして三秒待って出て来る。手元は当然隠して。
「唯は別れたくないって、ゴネてるらしいよ。ウケない?」
「あの子には絶対負けたくないの。どうして私じゃなくてあの子を選んだのか全然分かんない」
「お待たせ、お待たせ。海老天来ましたよ~」
我ながら演技が上手いと感心しながら、天ぷらうどんをそれぞれのトレーに乗せると、二人が席に着くまで視線で追う。
山下さんと、池入さん……か。
それにしても、清水君は本当に唯ちゃんと別れる気なのだろうか?
絶対に別れたくない彼女の気持ちを聞いたからには、二人の破局をなんとしても阻止したい。
犯人捜しの前に清水君の気持ちも聞いてみるか。
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