15 / 27
意外な展開 5
しおりを挟む清水君の通うスポーツジムは満天堂のある駅から電車で二駅の赤山駅にある。
赤山駅には満天堂の独身寮もあり、彼はそこに住んでいる。
私は赤山駅に初めて降り立つと、辺りを見渡した。
新宿や渋谷のような巨大ターミナルではないけれど、東京駅まで急行で十五分という好立地。
存在感を示す八階建ての駅ビルに清水君が通うスポーツジムは入っている。
地上階は主にファッション関係の服や雑貨の店と大型書店。最上階にはレストラン街。
地下には食品専門のスーパーが居を構えている。
駅のコンコースの先には牛丼屋、ファミレス、大型電気量販店に家具専門店の看板も見える。
すべてここで買い物は済ませられる。そんな感じだ。
スポーツジムは六階にあった。
腕時計の針は二十一時少し回ったところを指している。
清水君が会社を出たのが十八時前後。それから量販店さんに行って商談して、夕食を食べたとしてジムに入るのは大体二十時過ぎ位だと予測しているので、まだジムにいるはずだと踏んでいた。
一時間で帰ることはないだろう。
最低でも二時間はいると思う。
まだ帰っていなければいいのだけれど。
祈りながら、スポーツジムの前で待ち構えてニ十分。これに関しては運頼みだ。
そろそろ足の疲れも限界に達しそうだった。
早朝から立ちっぱなしだったのも。
待てど暮らせど、肝心の清水君は中々姿を現わす気配がない。
もしや、帰ってしまった?
焦ってスポーツジムのガラス扉から中をのぞき込むと、受付のお姉さんと目が合ってしまった。苦笑いで何度も会釈を繰り返す。
完全不審者。
今日はダメか。
諦めて帰ろうとした時、彼が姿を現わしたのだった。
清水君だっ!
待ち焦がれた恋人とやっと会えた時みたいに心臓が跳ねる。
私はすぐさまスポーツジムのパンフレットをカバンから取り出し、入会を迷っている素振りをする。
顎に手をあて、パンフレットとジムの入り口と視線を何度も往復させる。
おや?っと私に気づいた清水君が近づいてきた。
シャンプーの香り。フレッシュなフローラルフルーティ。ここのジム、シャンプーのセンス良い。
「あれ?会社のエレベーターで靴のヒールを挟んだ……」
当然、憶えてくれている。
「えっ、あっ?!助けていただいた……」
頬を染め、驚いたように目を開く。
ワザとらしい演技も板についたものだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる