人面犬ですけど何か?

眠ゐ犬

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第1話 ご主人と名付けですけど何か?

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 翌朝。
 朝と言っても、もう11時なので昼近いが。

 何ら特徴の無いマンションの部屋に入って玄関で爆睡していた女は目を覚ますと俺の待つリビングへと入って来た。
 そして俺の姿を確認して。

「いや、きっも!なにこれ!なになにきっも!
 人生の最キモ大賞更新したんだけど!きっも!」

 早速俺に数々の罵声を浴びせた。
 まあ、その気持ちはわからないでもない。

 自分で言うのも何だが、俺の見た目はかなり個性的だ。
 鼻から下は犬だが、目から上は人間だ。
 いわゆる人面犬の枠に入るか、キメラの部類に入るかで論争が巻き起こりそうな見た目をしている。

 だからどれだけキモいと言われようとも、自分の中でも噛み砕いて理解しきっているので、ダメージは無い。
 ダメージは、、、少ししかない。

「おはよう侍。昨日は随分酔っぱらってたが、飼い主になってくれたのを感謝する」

「喋った!?人の言葉喋る半分おっさんの犬とかウケるんだけど!あはははは!」

 いや、今は喋った事にウケてる場合じゃないんだが。

「半分おっさんとは失礼な。目から上だけだ。
 それにほら、犬耳も付いてるだろう」

「おっさんが耳着けてんのマジオモロ!」

 今日びオモロとか言う奴いるんだな。
 女は爆笑に次ぐ爆笑をした後で、すんなりと俺を受け入れた。
 素面でもぶっ飛んでる奴で助かったぜ。

「これから朝飯作るけど食う?」

「食う」

 数分後、焦げたトーストと焦げた目玉焼きらしき何かが出てきた。
 こいつメシマズ女だな。

「不味いけど食える」

「おほほ。もっと褒めても良いんだよ」

「褒めてはないぜ」

 飯を食い終わったら女はようやく風呂に入って下着姿で戻ってきた。
 さっきまでは随分と盛っていたのだろう。
 色気の無い体をしていて、何よりも。

「30点」

「ひっく!失礼過ぎだろ馬鹿犬!」

 化粧を落として顔面偏差値が急降下した。
 殆んどのっぺらぼうと言っても言い過ぎではないだろう。
 罵声は飛ばすが、然程気にした様子は見せない。
 多分常識とメンタルがぶっ壊れているタイプだ。
 狂人に近いタイプかもしれない。

「なあ、ご主人だと呼び辛いから名前教えてくれよ」

「ん?レイカ」

「漢字は?」

「綺麗の麗にはなって読む華」

「なるほどな。名前負けしてるな」

「うるせぇよ馬鹿犬!」

「悪口の語彙が小学生だな」

「うるせぇよ馬鹿犬!」

 この女、まさかと思うが小卒なのか?

「あんたの名前は?」

「無いから付けてくれよ」

「うーん、じゃあコロ助」

「コロ助は権利関係が危なそうだから止めてくれ」

「じゃあトロ助」

「ロ助は固定民かよ。まあ権利関係クリアならそれで良いか」

「トロ助よろしく。トロ助」

 そう言って麗華はフローリングにゴロンと転がった。
 どうやらどこにでも寝転がる人間らしい。
 それにしても。

「驚くほど性欲に響かない体してるよな」

「うるせぇよ馬鹿助!」

 やっぱり俺のご主人は語彙力が小学生だな。
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